影を背負って
更新再開!
のろのろと書いて少しだけストックはあります……期間に対して短過ぎますが。
どうも自分を追い詰めいないとやる気出せない質みたいで、のんびり書いてるとサボっちゃうんです(・ω・`)
人間は一人もいない機械油と薬品臭しかない無機質な空間、そこで痩せ細った現実の俺は物々しい雰囲気の手術台に安置されている。
そのまま暫くすると骨格切断用の超音波式メスで頭蓋骨が切開され、その中に俺には用途不明な大小様々形をしたアームが入り込む。
これは……俺がWCOに来る前研究所から受けたあの手術の光景。
いや、手術というより改造近がった気がする。
アームに取り付けられた機器の先端から火花が散り、脳が神経が……次第に身体が書き換えれて行く。
それはゆっくり精密にそれでいて鮮やかに、まるで芸術かのように、俺の身体が脈動を打つ有機物から繊細に組まれた無機物へと変換される。
だからかはしれないが、金属と配線の集まりある手術用のアームから人の、それも小柄な少女の幻影が重なって見える気がした。
走馬灯ってやつだろうか、だとしたら俺は死んだのか。
さながら、マエストロのように機械仕掛けが軌跡を描き、奇跡を創り上げる。
幾ら手術でも何でも人体として致命的な損傷、だと言うのに俺は生きていた。
生きてしまっていた――
……この時に悟った。
それにしてもこの場面を、か……後悔でもしてるってのか自分で選んでおいて。
―― その瞬間から、人間を辞めたことを。
♢ ♦ ♢
深く沈んでいた意識の中、胸ぐらにあるかどうかの微弱な重みに目を覚ます。
「あれ、俺は……」
「……~~、……~ッ!」
「イセット……って事は、生きてる?」
起きた俺の顔を見て胸にその小さ過ぎる顔を埋めるイセットの感触で、まだ生きているのだと実感する。
でもどうやって、ランダムリスポーンしてないのか……俺は黒猪諸共、至近距離で大爆発を食らったはず。
「あー……どう、なってるんだ」
虚空に微かな声で疑問をぶつけるも答え帰ってこない。
なにか分かるかもと自分の身体を見る。
炎の爪と空歩猿の魔石を握り潰した左腕はあれらと一緒に二の腕半ばから消し飛んでいるし戦闘中の負傷で全身が痛むが、それだけだ。あの時の黒いシミは……今はない。
「痛てて……あー、どんどん痛くなってきた。考え纏まんない」
イセットの身動ぎの微振動だけで死ぬほど痛い……これはかなりの重傷だな。
えーとMPは……回復してないか。
よく見るとMPバー横に切れた線が描かれたアイコンがいる。
「もしかして、これが消えるまでMPは回復しないってことか。なら痛いのは、我慢するしかないってこと……ぐぅっ」
言う途中にまた激痛が身を襲うが考えるをやめるわけにもいかない、歯を食いしばって耐える。
まずは現状を確認しよう、起きたばかりで何がなんだか分からない状態だ。
身体はまったく動かせない、あっちこっち大小傷が無数あって見事に満身創痍。
さっきに言ったように左腕も消し飛んでいる……が、それだけで他の箇所に爆発を食らったと覚しき痕跡が一切ない。
途切れた部分が炭化してるし、爆発を食らったのは間違いないはず。
でも、なら何で俺は生きてるんだ? 腕が消し飛ぶ威力だぞ、余波で身体だって木っ端微塵になってなきゃおかしい。
黒猪の体内で暴発して爆発規模が減ったから? いや、もしそうでもこんな絶妙に左手だけ飛ぶものなのか?
「そもそも本当に黒猪は、死んだのか」
そうだ、過去ログとステータスを……。
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名前『アベル』 性別『男』 種族『人間族』
レベル『20』 属性『無』 特性『なし』
《スキル》
『走行LVMax』『風魔法LVMax』『水魔法LVMax』『光魔法LVMax』『素手LVMax』
『抗魔LVMax』『追跡LV9』『索敵LVMax』『隠密LV9』『偽装LV8』
『魔量再生LVMax』『固定LV8』『魔力供給LV5』
《称号》
『大物殺し』『密偵』『起死回生』『虫精ノ誓約者』
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名前『イセット』 性別『メス』 種族『虫精』
種族レベル『17』 属性『無』 特性『甲殻、旋回、魔力体』
《スキル》
『縦横無尽LV4』『剛柔兼備LV5』『風魔法LVMax』『糸生成LVMax』
『鎧術LV8』『増力LV8』『防御LV8』『操糸LV7』『忠心LV7』
『手当LV4』『魔術LV3』
《称号》
『名有化物』『誓い交わりし者』『戦士』『唯一化物』
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《種族レベル18から20に上がりました》
《『光魔法』レベル8がMaxに上がりました》
《『追跡』レベル8が9に上がりました》
《『索敵』レベル9がMaxに上がりました》
《『魔量再生』レベル8がMaxに上がりました》
《『固定』レベル6が8に上がりました》
《『魔力供給』レベル3が5に上がりました》
《従魔・イセットと同化を行いました、各種パラメーターを参照してリンククラスを判定します》
《判定が出ました、リンククラスを『従魔』から『誓約者』に変換します》
《右腕に虫精の紋章が刻まれる……》
《称号『虫精ノ誓約者』を獲得しました》
……何故かイセットの称号『付き従う者』がとても誤解を招きそうな匂いを漂わせるものに変化しているが、それはさて置き。
種族レベルが2も上がった、原因なんて黒猪の経験値以外は考えれない。
にしても今更2レベル一気にって、どんだけ強かったんだアイツ……スキルも幾つかMaxまでいってるし。
これでシステム上からは黒猪が死んだと思っていい、よな……どうも不安だが、今は確認のしようもないから素直に死んだ思って置こう。
それとかなり久しぶりのリンククラス判定、これにより俺は『虫精ノ誓約者』、イセットは『誓い交わりし者』というちょっと怪しい称号を手に入れた。
「で、虫精の紋章ってのは……お、これか、いたたッ!」
痛みを堪え眼前まで持ってきた右腕を手の甲を見るためグルっと回すと、タトゥーでも彫ったようにそれはあった。
手の甲には円に囲まれた真っ白な十字架があり、そこから生えたように手の甲から前腕にかけて2対4枚の若葉色の翅が翅脈を描きながら途中で交差する形で伸びている。
十字架せいだと思うけど、ぶっちゃけかなり厨ニくさい。
「よく見るとこれ、翅が外側に伸びた以外はあん時イセットが糸で書いた『魔術』の陣と模様一緒だ」
『魔術』を元にこうなったのか、それともこの紋章を元に『魔術』を編み出したのか。
普通に考えれば前者だと思うけど、知識足りなくて正確なところは不明だ……あの魔術講座もっと真面目に聞いときゃよかったな。
そうだ、呑気にの転がってる場合じゃないミーチェさんたちと合流しないと、あの様子じゃ心配掛けてるだろうし。
思い立ち周辺に視線を巡らせ……そこでふっと気づく。
「……あれ、そういやここって、どこだ?」
周りにはもうすっかり見慣れた木々の囲まれている、だがそれはおかしい。
俺たちと黒猪の戦い影響で周りの木々が全部引っこ抜かれて空き地なっていたはず、樹木などあろうはずもない。
「イセットが、運んだのか」
(ゴロゴロ~)
違うらしい……そうでもないのにこの会話法も久しぶりな気がするから不思議だ。
そんだけ今回の一戦が濃密だったってことだろうけど。
(ゴロ、ゴロゴロ……ゴロ!)
「えっと、ひゅーんと跳ねて下にひらひらと……ああ、もしかして俺が爆発に吹っ飛んでそれを追いついたイセットが着陸させた、のか?」
(ゴロゴロ!)
今度は正解のようだ。
MPは……使わなくてもそれぐらい『糸生成』だけでやれるか、イセットなら。
で、わざとスルーしていた最後の疑問なんだが。
「さっきから被せられているこの毛皮みたいなのは……イセットが作った訳じゃないよな、真っ黒だし」
(ゴロゴロ)
俺が目覚めた時から毛布でも掛けた感じで被せあったこの黒い毛皮は何なんのか?
この影が凝縮されたような真っ黒な色合い、連想されるのはやっぱりあの黒猪だ。
いや、間違いないこれはあの黒猪の一部だ……勘としか言いようがないが俺の中にそんな確信めいたものがある。
……これがもし消える魔物の魔石みたいに黒猪が残した物だとしたら、どう扱うかは既に決まっている。
「もう、考えても分かりそうなのもないか……なら、そろそろ動かないと。イセット簡単でいいから応急処置頼む」
(ゴロゴロ!)
痛いを通りに越してHPが徐々に減ってきたので唯一治療を頼めるイセットに声を掛ける。
それだけで直ぐに意図を察したイセットは『手当』で正確に傷の具合を把握し、糸で縫合するなり巻いて固定するなりして一応動ける状態まで持っていく。
「くぅ~~~~ッッ!?!?」
「……~!?」
「いいから、続けてくれ」
麻酔なしで骨合わせとか、縫合とかしてるから無茶苦茶痛いが、ここまで来てイセットだけ残して死ぬのも癪に障るので意地と根性だけでなんとか耐える。
「はぁ……はぁ……っ。ぐ、ぬぅ……ッ!」
痛みで乱れた呼吸を整え、ふらつきながらもなんとか立ち上がり手回し足振りで調子を確認する。
身体がバラけるんじゃないかって程痛いが、動けなくはない。
「ありがとうイセット。どうにか行けそうだ」
「……ー」
「……俺も休みたいけど、そういう訳にもいかないだろ」
ここで休んでミーチェさんたちを待つことも考えたけど、いつまでここが安全とは限らない。
イセットの巨大繭に籠もるってのもありだけどそれでも絶対安心と言う訳でもない。
それに方角は分かっているし、ならいっその事こちらから動いたほうが手取り速いと判断した。
「行くぞ、目的地は『架け橋』だ!」
(……ゴロゴロ!)
―― 俺たちは真っ黒な影を背に翻しながら、その場を立ち去った。
次更新は、多分10月11日です。




