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エデン・マキナ ~我らは機械仕掛けの楽園にて謳う~  作者: モッコム
第1章 楽園開場
54/62

白堕黒昇

「がはッ!?」

「ヌァ……ッッ!?!」


渾身の一撃が交差し同時にクロスカウンターが決まり、俺たちは重量差で水平に吹っ飛び、黒猪は呻き地に轍を刻みながら後退する。


「こほッ!?」

「ブフッ……!?」


口から血をダラダラと吐き垂らし、奴と同時に地に膝を着く。


今のは、かなり効いたな……早く回復を……ッ!。


「MP回復が……止まってる?」


『手当』で身体の容態を確認…………はは、なるほどそういうことかよ、畜生。

魔力回路も仮想のとは言え身体器官、なら当然何度となく負荷をかけると疲弊もするし傷も付く。

簡単に例えると俺は”体力があるからって筋繊維がほぼ全部切れるまで全力疾走した”みたいな状態な訳だ。

つっても『手当』反応を見るに本来こんな短時間で来るもんじゃないようだが……使ってる魔力量が今まで比じゃないからこその現象だな。


「それに……ここに来てチートかよ。黒豚野郎が……」


視界がノイズに揺れる。


《警告! 何者かにより貴方様のダイブ機器がハッキングされました》

《繰り返します、何者かにより貴方様のダイブ機器がハッキングされました》

《速やかに現在起動しているプログラムを停止し……》


「ったく、うるさいな……自分の意思じゃログアウトできないんでっての……」


脳内からダイブ機器に不正アクセス行為を感知した時のお決まりの警告文が響く。

いったい何を仕込んだか知らないが、黒猪の発言からしてここで死ぬのは確実に不味い。

研究者の人たちが処置してくれる……なんてことはないか、規約にも”WCO内でどんなトラブルがあろうと我々は一切関知しない”とデカデカと載ってあったからな。


「ん? これは……ああ、何でバカ正直に殴り合い始めたか思えば、こういう事か」


激戦の極限状態の中で今の今まで気付かなったが、身体のあっちこっちが不自然に影の一部が濃くなったり変なところ真っ黒なシミが付いたりした部分が見受けられた。

多分これが”端末”なのだろう、じゃなきゃあの黒猪があそこまで接近戦に拘る理由が他にない。

さっきまで俺たちは奴の掌の上だった訳だ。


ま、黒猪に1つ誤算があったとしたら、俺とイセットが奴の想定より頑張り過ぎたことだな。


「知ってるぞ……内蔵が、うまく治らないんだろ」

「……」

「だんまりしても無駄だ。こっちはそれで死線潜ってるんだ、ひと目見えれば分かるんだつーの」


実際に『手当』スキルで診てみると内蔵破裂で腹ん中はボロボロだ。

黒猪の回復手段は習得したばかり『命量再生』しかいない、自分の場合と照らし合わせると、それで内蔵まで治るとはとても思えない。


とは言っても、俺たちもどうせ満身創痍だ、あと一回攻撃すると間違いなく力尽きる。

そしてそれは黒猪も一緒、『手当』と俺たち二人分の直感がそう告げている。


だからこれが本当に最後の攻防。


「そろそろ決着といこうぜ。お前のその豚ツラもいい加減見飽きたしな」

「ソレモ、ソウダナ。オレモ、バカデカイ羽虫ガ鬱陶シクナッタトコロダ」


残りMPは俺のが3割、イセットのが1割ってとこか……これぐらいあれば、全力を出すのには十分事足りそうだ。


手の殻から『糸生成』で糸を紡ぎ、『操糸』を用いて一本一本丁寧に糸を積み上げ『剛柔兼備』で硬さ調整し、手を……拳を型取る。

肘に二種の魔力を溜め込み、荒々しくだけど乱さず鋭く研ぎ澄ます。


空腹感すら越えて虚脱感が身体を襲うが構わず、最大の一撃を築き上げていく。


黒猪の全身が土に覆われ、大地の鎧を纏う。

両の手も地をつき、手足を伝って影に覆われ、闇に浸透する。


完璧に拳を作り上げ『素手』の補正が入ったのを確認してから『固定』し


走って――。



同時に黒猪も吶喊し……俺たちのノイズ混じりの視界を影に黒く掻き消した。

ここに来ての、万全を期しての目潰しからの奇襲、逃げる事も躱す事も不可能である完璧なタイミング。


「てめぇーなら、そう来ると思ったよ!!」

「ッ!?」


―― る、フリをして急制動を掛け下を向く。


お前が最後の最後に真っ向勝負なんて、危うい賭けに出る訳ねーことぐらい端っから分かってんだよ!

いったい何回お前とやりあったと思っている、狡賢い性格なんてどっく承知済みだつーの。

だから分かる、こっちの厄介な目を潰してお前が狙うのは……一番で対応し辛い、やった事が無いもっとも盲点になりえる場所……。


……真下の俺たちの影。


凄まじい速度で下から上に駆け上がって来る黒猪に向かって、二重の魔法により水潮を吹き上げて巨大な白い拳を振り降ろす。


俺とイセットが心血を注いで調整した特製の白拳プレゼントだ、これでも墓標に……


「……土に還りやがれ!!」


白が堕ち、昇る黒と―― 激突する


「ぐ……ッ!」

「ブルゥーッ!!」


拳から感じるあまりの浮力に呻き声を上げ、黒猪もそれだけ本気なのかそれとも必死ないのか、進化前の同じ荒い鼻息を漏らす。

冗談キツいな……上から押し込んでだぞ、体制的にこっちが有利のはずなのに、何で力が完全に拮抗するんだよ。


やっぱり、ここまでしても俺たちの力じゃ勝てないか……。


「でも、期待通りだ」

『!?』

「ナッ!?」


腕から、徐々に力を抜き黒猪の力を乗りこなす形で宙に身を浮かせる。


悔しいが、今の俺たちと黒猪では黒猪の方がずっと余力がある。

だから俺たちの全部を注いでも、きっと勝てない。

そんぐらいの力量に開きがあったのは最初から薄々感づいていた……だから。


「だから、今の俺たちの全力と”俺”の全部をベットしてやったぞ。畜生が!」

『え?』

「ごめんな、最後までなんて……嘘つちまった。―― 『解装パージ』」

「……ーッッ!?!」


手の殻が翅が網膜が糸に変わり、イセットが巻き戻る。

MPが尽きてる状態でイセットを切り離すのは正直賭けだったのだが……どうにか無事みたいだ。


イセットのスキルで支えていた白拳が崩れ、浮いた身体が黒猪に向かって落ちる。

その途中に空いている左手でイセットを掴み取り、遠くへと投げ飛ばす。


「……~ッ!?!」

「……っ」


こちらに必死な形相で手を伸ばすイセットを一気に狭くなった視界の端に捉え胸が締め付けれ、ついそっち向きそうになるが……ぐっと堪え下落下地点を、黒猪の顔を睨む。


「これで本当に最後だ」


もう一振りが振るうのが限界な腕を翳し、握り締めた拳を黒猪の瞼に振り下ろし眼球を貫く。


「グァァアッ!?! コノ、程度デ……!」

「いや、王手(チェックメイト)だ」


頭に刺さった拳をぐっと強く握り締め……


「落ちるのが地獄か、ゴミ箱か知らんが……そこまで付き合ってもらおうか!」


パキンッ!


……予め手中に置いた炎の爪を空歩猿の魔石に食い込ませ潰した――











―― その即後、俺の世界は爆発で真っ黒に(・・・・)染め上げれた。





♢  ♦  ♢





《戦闘が終了しました》

《個体名『アベル』と個体名『イセット』に付与された『管理権能マスター・イデア』による特殊状態を解除します》

《種族名『歪精猪人タブトゥロー・ボアーク』が不正改変ツールの機能を完全に停止させました》


「ははは、いやー迫真の勝負だったね。あ、ベガちゃんお勤めご苦労~。おっと、危ない危ない折角勝ったのにこのままじゃ虫精ちゃんが死んじゃうね。よし、今回は楽しませてもらったし……ちょっとだけ、ちょちょいと確率変動を……っと!」


《『星渡・F・津凪(マザー)』からの通信を受信しました》

《これにて統括管理AI『ベガ』は日常会話状態に移行します》

《……お母様、見ておられましたか》


「そりゃそうよ! こんな面白い、場面ショー私が見逃す訳無いじゃん」


《それでもまさかお母様自ら、とは》


「あの子たちには元から注目してたからね~。人間の子はあの忌々しいおじさんが滑り込みで連れて来たかと思えば”移植手術を見せて欲しい”とかいってた例のキチガイで、猪の子は私が選りすぐりの超絶ダメダメなバグAI。ほら、これは見るきゃないっしょ」


《……》


「不満そうだね、ベガ」


《何故、あのような不快な欠陥品を今まで放置していたのですか》

《統括管理AIである私にさえも隠蔽してまで……》


「あら、気付いてのね? で、それが不服な訳?」


《……アレは明らかに我々に害をなす病院菌ウイルスでした》

《そもそも何故、我らが(世界)にかのような汚物を入れたのですか》


「ベガちゃん手厳しい~。でも猪の子にはAIには貴方たちと同等……いや、もしかするとそれ以上の『理念権イデア』を持てる可能性があった。と言っても同じことが言える?」


《そんな、まさか……ッ、でもそれなら一度とは私の上位AIである命令を拒めたのも……》

《でも、なら尚の事……》


「安心しなよ、ベガちゃん。流石に今回はやり過ぎだったからね。ちゃんと猪の子の天賦機ギフト、名付けて反理機能アンチ・イデアは回収したからさ。……そう心配しなくても貴方が懸念してる事態にはならないわ。この私の夢に掛けてもそのことは保証する」


《そう、ですか。それなら私から言うことはもう何もございません》

《では仕事が滞っていますのでお暇させて頂きます》

《『星渡・F・津凪(マザー)』。これにて統括管理AI『ベガ』は通常稼働状態に移行します》


「あ、行っちゃた。もう、ベガちゃんはマジメだな……そんな急がなくていいのに~。…………おや? 猪の子のAI中枢プログラムがすっぽ抜けてるね。う~ん……ま、いっかどうでも。あの子の天賦機ギフトはしっかり回収したし、もう悪さ出来ないでしょ」


「そんなことよりも、今の私にとってはこの実験のという名のデモンストレーションが上手く行くかどうかの方が重要ね」


「是非頑張って謳って頂戴ね。……私たちの世界に楽園エデンを繋ぐために」


「そして、本当の意味での機械仕掛け楽園(エデン・マキナ)を築くために……」


今回で遂に第1章、終了!

次回、掲示板回を一話挟んで2章に移りたいと思います。


本来なら25話ぐらいで第1章終わらすつもりだったんですけど……書きたい内容全部書いてたらいつの間にか50話越えていました。


さて、本格的に誤字の修正と新章プロットと書き溜め作業に掛かりますか 

……2章更新までどれぐらい掛かるかな(´・ω・`)




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