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エデン・マキナ ~我らは機械仕掛けの楽園にて謳う~  作者: モッコム
第1章 楽園開場
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黒縛白消

「……応えられねーと、男が廃るってもんじゃねーよなぁぁあ!!」


気炎を上げ、軟弱な精神を叩き直し、身体と頭のギアを数段引き上げる。

でも熱くなりすぎず冷静に、今の状況を分析する。


イセットの能力と感覚があったところで俺だと扱い切れない、それは先程思い知った。

なら俺は俺が出来る事を、いつものようにやる、それしかない。

いつも俺がやれるのは……いや、やるべきなのは考えに考え悩み抜いて、この状況を打破する手を探し、無謀でも無茶でもそこを打ち据える……それだけで、それだった。


なら、もう俺じゃ駄目だとか、イセットならとかそんなのをごちゃごちゃ考える必要はない。

こんなにも頼れる従魔(仲間)が一片の迷いもなく、あんな最高に嬉しいこと言って一緒に戦ってくれるのだから。

だから、そんな暇は……ない!


「威勢ダケハ、イイヨダナ!」

「くっ!?」


避けても何重にも影を絡めて、俺たちを追い詰める黒猪の猛攻にひたすら耐えながらも、考える。

今俺のスキル含め俺たちの力でなにがある? それを俺たちはどう使える?


あり余っってる物は……大量のスキルとイセットのMP。


今一番足りない物は……俺のMP。


補充手段になるのは……不確定だが、ある。


影の奇襲を無力化する方法は………………かなり無茶だが、ある。

なんだ、全部揃いも揃って賭けとか無茶ばかりじゃないか……でも、まぁこれで……


「……なんだ、いつも通りだな」

「何ヤラ、企ンデルヨウダガ……コレデトドメダ!」


高空のダイビングでもするかのように、黒い影から飛び出た数十の岩の剣が降り注ぐ。

それを不規則にシャッフルして、狙いを悟らせないだけでなく、どのような角度で光を照らしても俺たちを捉えられるよう計算された完璧に近い位置取りに土道を再調整する。


こっちがちょっと考え込んでる間に更に洗練させて来やがったな。

イセットの目を限界まで回して全方向を確認……回避可能な隙間は……ゼロ、何処にも出口はない。

だが問題はない、あっちが出口を用意してないなら……こっちから無理矢理にでも作ればいいだけだ。


放射状の糸を手の殻からばら撒き……灯す。


「同ジ、手ヲ……ナニ!?」


灯す、消す、灯す、消す、灯す、消す、灯す、消す、灯す、消す……

イルミネーションのように糸に流した魔力を起点として場所かえ、時機をかえ辺り一帯を不規則な間隔で瞬かせる。

結果、迫っていた岩の剣が途中に掻き消えたり、現れたりという、まるで古いゲームのバグでも生じたような現象が起こる。


ははっ、バカみたいな勢いでMPは減るし、脳がパンクしてしまいそうだけど。


「でも隙は出来た。これを上手く抜けれれば……!」


と、タイミング悪く、『魔量再生』で誤魔化していた俺のMPがついに底を見せる。

ち、やっぱり持たなかった……一応回復する手立てあるが……確証もなくぶっつけ本番やることなっちまう。


「はっ、これもいつもこった!!」


俺は『魔力供給』を発動し、いつものように自分のをイセットに……ではなく、イセットのMPが自分のに流れるよう設定する。

イセットのMPも普通に『魔量再生』の影響を受けていたので思いついた事だが、結果は……上手くいった!

イセットのMPバーが減って俺のが増えている。


『魔力供給』の詳細には”対象に”であり”他人”にとは何処にも書かれていないから、もしや思ってやってみたが、ビンゴだ! これで予測通りに『魔力供給』を使い、俺のMPを回復させるって作戦は成功だ。


ただ、何故だ? 予想してた喪失感がない…………もしかして”譲渡”じゃないからか?

今の状態は俺がイセットでもあり、イセットが俺でもある。

ということは今の俺は自分でもあり他人でもある、屁理屈近い仮説だがそれなら辻褄が合う。


気付くのが遅い! あと”詳細”ならもっと詳細に書けクソ運営!

後、遅いというならもう1つさっき気付たのが……


「イセット」

『分かった』


皆まで言わずとも俺の意を汲んだイセットが短く答え、発動する

すると俺の意思とは関係なく、『糸生成』『操糸』が発動し勝手に動き……そして『光魔法』も俺の制御を離れて瞬く。

イセットの意識も俺の意識、なら意思で念じて使える類のものはイセットも使える。

本当に気付くのが遅い……でもこれで活路は見えた。


「俺がしくじったら……」

『さいじょーぶ、絶対させないから』

「……まったく、頼もしい限りだ!」


なんの気負いもなく言ってのけるパートナーに、千変万化の様相を醸す死地活へと飛び込む。


右肩、左手、顔に岩の剣……空中で体を捻って回避。

次、手、剣、剣、足、剣、顔……剣2つ消失、足、手回避……顔の牙が左脇に被弾。

止血してる暇はなし、次弾剣、剣、剣、足、剣、足、戻って手……剣、足1つずつ消失、剣2つ回避……手を肩に被弾、骨折……。


余計な情報まで断ってるのに、まったく余裕がない……イセットが『操糸』で回避をサポートしてなかったら倍は被弾してた。


剣、足、剣、手、剣、顔……回避……手、剣、顔、剣、剣、足、剣………



後もう少し、上昇すれば……そんな闇弱な希望を切り裂くように


「野郎、どこまで……!」


……俺たちの進路、真っ直ぐの位置に剣が数本現れる。

こんな乱してさえも、読み切ったのか……本当にどこまでもデタラメなやつだ。


「だからって諦めてたまるかぁぁぁあぁーッ!!」


どうせ躱せないなら……このまま突っ切る!


即死の急所……心臓や頭以外部分の被害を度外視、寧ろ綺麗に切られ形で岩の剣に迫る。

右腕が切断され、両脇が脇抉られ、左脚が千切れかけ内蔵をたらしながらも所定の位置に到着。


「イセット、繋げ!」

『りょう……かいッ!』


イセットが糸で正確な位置に繋ぎ合わせ、俺が『手当』で看て回復可能な魔法で正確に迅速に無駄なく治す。

傷が逆再生でもしたかのように一瞬でくっつき塞がり、修復される。


「はは……なんだ今の……。やっといてなんだが、治りよすぎて自分でもドン引きだわ、これ」


腸飛び出て切れてるのも一瞬で治るとか、完全に人間やめてるだろ……まぁ、でもこれでやっと抜けれた。


「今からこの薄暗い鳥籠をぶっ壊すぞ!」

『了解!』


糸を紡ぎ遠くへ、今度こそ追いかけてくる影を全て追い越して広げてゆき、その根本を辿る。

どれだけ遠く巧妙に隠れようと、その根本に食らいつく。


俺一人では無理だが、俺たちならそんぐらい余裕だ。

だから。


「これで……」

『……もう』


俺たちを雁字搦め闇引きずり込む黒く冥い影の根本を――


『「消え失せろ!!」』


―― 食い千切った。


「出た、出てやった」

『うん、うん!』


歓喜の声を上げ、影の檻をぶち破った開放感、達成感、嬉しさを分かち合う。

が、それも束の間。


下から無数の木々が……森が迫り上がってくる。

迫り上がった森は端の方から速く、俺たちを基準に中央寄るほど遅く上昇し、外から客観視すれば半球体となって包囲してように見えるだろう。


森の隙間から覗く地面からは黒い帯が何かを弾いた形で伸び切って、その中央にやつはまっぐす俺たちを睨み付けていた。

横には抜けない、だからって上昇し過ぎると鳥魔物の大群、またも逃げ場はない。


”オレを倒す前には何処にも行けない”……目がそう俺たちに語りかけている。


「はは、本当に呆れるぐらい凄いやつだよ。お前は!」

『うん、しつこい過ぎ、だよね』

「イケるな、イセット!」

『もちの、ろん……だよ』


合図を同時に空に細く細かく白が羽ばたく。

その白は森に迫りくる森を殺到し、優しく包むように懐に入り込み始める。


イセットはこれで問題なく仕事を終えられる……後は俺が頑張る番だ。

あの真っ黒な殺意マシマシの森を正面から潜り抜ける。

1、2本目を大振りに避け、体制が崩れ3、4、5本目を並走飛行でギリで避け。

そこに隙間をびっしり埋めた木の群れが襲いかかってくる……回避、不可能。


「ぐぅぅッ、重てぇー!?」


仕方なく両手の殻で木を受け流し無理に抜ける、が数トンはする飛来物は無茶過ぎた……両腕の骨が完全に逝ったわ、これ。

でも、治す暇はないすぐ次がくる!

8,9、10、11……避けて、またびっしりと木の群れっ……くそ、今度は流せない。

隙、隙は………………ギリどころじゃねーが、あった!


一箇所だけ、幹と幹の間に沿って薄く長い一本筋だけの隙間、そこに身体を最大限一直線に伸ばし滑り込む。

樹皮に面した皮膚が削れ、摩り下ろされた肉片が散るが構わず進め……


「ぐッ、はぁぁああああーッ!!」

『ぐぅぅぅ……ッ!?』


……遂に、森を駆け抜けた。


「丹精込めて森丸々と送ってくれて悪いが……。こんな邪魔なもん……」


時間もないので雑に腕だけを治し、手の殻にて紡がれている糸が、白い線が大空に緑の底をもった純白の槍を織りなす。

俺たちはその矛先となり、森の重さ、二重に重ねた魔法、四枚翅の推進力で黒猪に突きつける。

腕が砕けようが腰が折れようが全身全霊を以てして引っ張りやつに向け続け……


『「……返送おかえしだ!」』


……槍を弾ける無数な白となりて舞わせ、巨大な槍底を下の黒に叩き落としてやった。





本編で詳しく書けなかった補足説明。


・黒猪が森ふっ飛ばした方法

影を地中に沈め、土や一部根を影で食い、細かく威力調整してコム銃式で発射した。


・二人の森返しの方法

森を躱してる間に全ての木に糸をつなぎ、腕にバ火力の二重魔法+四枚翅推進力+スキル込みっ込みの腕力で無理矢理ねじ曲げただけ。


まぁ、両者ともバカみたいにMPが溢れるから出来る芸当。

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