初めてのペット?
「おー! すごいレベル上がってる」
火爪熊との死闘を征して勝利した俺は補償とも言えるレベル上昇を確認するために思考操作でシステムメニューからステータス画面を開きそれを見て子供のようにはしゃいでいた。
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名前『アベル』 性別『男』 種族『人間族』
レベル『3』 属性『無』 特性『なし』
《スキル》
『走行LV3』『風魔法LV3』『水魔法LV3』『光魔法LV2』『素手LV4』
《称号》
『大物殺し』
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レベルが軒並み上っただけで無くいつの間にか称号までもらっていた。
『素手』が一番高いのはログを見るにどうもあの最後の攻防の際に上がっていて討伐した経験値が加算されたからようだ。
『光魔法』が低いのは発する光が周辺の敵を呼び寄せてしまうので最初以降は練習していないからだろう。
SPは4ポイントありログで見たとこによると1レベルアップ毎に2ポイント貰えるようだ。
これで念願の新スキルを、といきたいが残念ながらどのスキルも最低5ポイントは必要なのでこれは後回しにするしかない。
最後に称号の詳細だが、それで分かった事実に驚愕べき一文があった。
・『大物殺し』
獲得条件:自身よりレベル10以上の敵性個体を単独で討ち倒す。
称号効果:自身より高レベルの敵性個体に与ダメージ微量増加。
ってことはあの火爪熊は最低でもレベル11はあったという訳だ。
そりゃレベル1の俺が頭を貫通しただけじゃなかなか死なない訳だ……。
ステータスはこれで終わりとして本格的に探索開始!
……と行きたいがまずめちゃくちゃになった腕を治さないといけない。
砕けた骨が悪さしてるのか今も少しずつHPが減っているのでこれをどうにかしないとそう遠くない内にまた死にそうだ。
「確か『水魔法』と『光魔法』で回復魔法みたいのことが出来るって言ってたよな?」
あの研究者たちは他のは必要最低限のことしか教えなかったけど擬似感プログラムに大きく関わる魔法スキルに関してはかなり詳しく聞かされている。
水魔法の方は傷周りの血管内血液に魔力を送り、光魔法は細胞に浸透させるように照射するんだったか?
物は試しと僅かに自然回復したMPで『水魔法』を発動して実践してみる。
「うーん……かすり傷が治って痛みもちょっと引いたけど、完治には程遠いな」
次は少し待ってから『光魔法』で再チャレンジしてみた、が。
「だめだな……。『水魔法』より効果はあるみたいだけど骨折が治る気配が全くない」
多分今のレベルだと骨折は治せないとかだろうと当たりをつけられたが、HPが少し回復した以外に進展がない。
正直いうと最悪またリスポーンすれば全治するのでそれでもいいが、リスポーン場所がランダムであるためその場合火爪熊の死体が放置になる。
こんだけ文字通り骨を折って狩ったのだ、せめて素材の一つでも剥ぎ取りたい。
それにあそこまで死闘を演じたコイツの一部でも持ち帰りたいと、何となくだけどそう思った。
でも今の腕でそれが出来るかどうか……。
「くぅッ!一応左腕の方は動くか。でもやっぱすっごく痛い」
うー……よ、よしここは一発気合い入れてやってやろうじゃないか!ここに来たらもう諦めも後悔もしないと決めたんだ。
どんなに苦しくても我慢してやりきってやる、せめて爪一個でも!
流石に素手だと無駄と思い尖った石を拾い爪の付け根に穿り出さんと振り下ろし、激痛。
「くわああぅぅッ!? ぐぅ……まだ、まだ……っ!」
そうやって振り下ろし、回復して、振り下ろしを付け根の皮と肉が引き裂かれるまで何度も繰り返す。
痛みに耐えながら約10分間それを続けてやっと剥ぎ取った時には火爪熊の前脚はぐちゃぐちゃになっていた。
「ごめんな。ナイフの一本でもあればここまでしなくて良かったのに……」
何故か、それに胸が締め付けられるような罪悪感が湧いて気付いたら謝罪の言葉が口から漏れていた。
今更になって死体蹴りしているようだとでも思ったのか、それともあの死闘で変な情でも湧いたのか……とっちにしてもエゴで偽善なのだろう。
「でも少しばかりコイツを弔うくらいなら、いいよな?」
目を瞑り頭を俯かせ黙祷を捧げる。
他の人が見れば”殺したのはお前だろ”とか”そんなデータの塊に弔いとかいるのか?”とか言うのかもしれない。
確かにそうなのかもしれないし、この行動も俺の自己満足なのだろう。
ああ、そんなのは分かっている……けど。
「ここで何も感じないと俺は、いったい……」
……この時の俺はその後の言葉を紡ぎ切れず、手の中で熱を発する鼓動にも気付けなかった。
♢ ♦ ♢
現在俺は手に入れた火爪熊の爪を初期装備のベルト……というよりは腰紐と呼ぶべきとこに挿したまま漠然と森を歩いている。
心情的には墓でもつくってやりたかったがあの巨体を見上げて仕方なく断念してその場を去った。
それと腕のことだが……不本意ながら治っている。
探索を再開して数分経たないうちにまたあの黒い巨大猪が現れて轢き殺していったのだ。
毎度警戒はしてるのだが足音一つしないので接近される前に発見出来た事は一度もない。
「何であの巨体で音を立てずに走れるんだ……理不尽すぎる」
なお空歩猿の方は獲物を弄ぶ習性があるのか正面から来たと思ったら上空に逃げてちまちまと物を投げて攻撃し飽きたら高速落下しなが手刀で首を撥ねる。
空歩猿の方はどういう理屈か大体予想がついている。
手刀を放つ時に腕で風の渦みたいのが絡みついていたので多分あれは『風魔法』だ。
多分なのは俺が真似した時には草一枚も切れなかったである。
「これが本当の猿真似ってか? ……しかも失敗してるし」
そう考えるとまた憂鬱に……って、いかんいかん!こんなどこで落ち込んでどうするんだ。
深く考えれば考えるほど気落ちしていく気がする。
よし今度こそ狩りで経験値稼ぎだ!何故か知らないけど復活してこんなに経ってるのにまだあの二体は来ないし今が絶好の機会。
なんとしても俺でも安定して倒せる獲物をさがすぞー!
と、空元気を絞り出して森中を走り回ること30分過ぎた頃。
ついにそれらしいものを見付けた!
……けど。
「何あれ? 狼と……動く玉?」
獲物を探すと言ってもそんな経験もスキルもないので当て所なく彷徨っている最中に犬っぽい鳴き声がする方角にこっそり向かってみればそこには謎の全自動回転移動するソフトボールくらいの玉とそれを追うデカイ狼がいた。
「わ、訳わからん、マジでなんなんだあれ……」
今が奇襲のチャンスである気もするけど……直ぐに殺るべきか?
いや、あんなどう動く分からないのに初見で突っ込むのは危険だ。
暫く隙を窺うために観察を続けることにするか。
…………お、観察初めて早速状況が動いた。
狼がついに謎の玉を木が密集した場所に誘導して追い詰める。
そこで謎の玉はもう万事休すかと思ったらそのまま減速するでもなく木の幹に突進を敢行……して垂直で幹を登ってるぅ!?そしてどう回ればそうなるのか幹から弾けるように跳んで狼の背後にバスケットボールのように放物線を書きながら地面へ華麗なる着地!
何あの謎生物、挙動がシュール過ぎるんですけど……。
で、狼の方は……まぁ、当然の帰結というべきか謎の玉の挙動にびっくりして幹にヘッドバットすることに……ってこの光景なんかデジャヴ感が。
このまま謎の玉が逃げ切れるかな……と思ったのも束の間、なんとダメージは少し頭を振る程度だったらしく激昂した狼が素早く反転した。
「あの狼どんだけ石頭何だよな……って言ってる場合か!」
隠れてた茂みから飛び出して肘に魔力を集めて襲い掛かるは―― 狼。
完全に頭に血が上って視野狭窄になってる狼の方は隙だらけだ。
下手すれば腕が壊れるこっちとしては確実に仕留める方を選ぶしか選択肢はない。
肘の先から二の腕を押す形で水が噴射され、飛んでいって拳が打ち据える一点は急所である頭……ではなく脇腹だ。
さっき見たところ頭に打撃はあまり効果はないだろうと軌道を修正したのはどうやら正解だったようで狼の肉が沈み、骨が砕かれる確かな手応えを感じる。
「ギャイン!?」
情けない鳴き声を上げて吹っ飛ばされた狼だったがまだ死んではいない。
初撃を当てた時点で別の肘に魔法を準備してあるので、迷わず溜めといた『風魔法』を発動。
横倒しになっている狼の丸出しの腹に高速で進む拳を突き立てる。
拳を引き抜くとドクドクと大量に血が溢れ狼は断末魔も上げれずに絶命した。
《種族レベル3から4に上がりました》
「ふぅー。怪我がしないような出力の『風魔法』だと弱かったから少しでも威力を、って思ってやったんだけど……想像以上にエグいなこの爪」
『風魔法』と『水魔法』でのジェットパンチでは水の方が威力高めだったので風の方に足りない威力の補足くらいのつもりだったのだが、この結果は予想外である。
とある暗器よろしく握り拳の隙間から爪の尖端を覗かせたまま殴っただけ。
だったそれだけで狼の柔らかい腹部とはいえ拳ごと貫通し、焦げ付いた匂いを発しさせている。
火が出ているようには見えないし握ってる今も淡い熱を宿してはいるが熱くはない、どうなっているのだろう? 謎だ。
「で、お前はいつまでそこにいるつもりだよ……」
(ゴロゴロ?)
攻撃して来ないし考えることが多過ぎて去るまでほっとくかと思ったが流石にこうも足元をうろちょろされると気になってしょうがない。
スネに体を擦り付けようとするのがちょっと猫っぽい。
まぁ、見事な球形ボディーに猫感は皆無だが。
どうも助けられたと思われているようだ。
はて、この謎の玉をどうすれば良いのだろうか?最初はまとめて狩るつもりだったがこんなに懐かれたらそれもやり辛い。
《バグエッグが仲間になりたそうにあなたを見ています。仲間にしますか?》
なんか変なインフォ来た……。
まずインフォに突っ込みどころがあり過ぎるのが困る。
バグエッグってこれ卵なの?自力で回転運動する卵とか斬新にも程があるだろうに……ここの開発なに考えてこんなの作ったんだマジで。
それに見てるってどこで見てるんだ、どこもツルっとした曲線を描く殻しかないぞ。
……あかん、これ以上突っ込んだらキリがない。
疑問は一先ず頭の片隅に仕舞っておき、要するに俺はこの謎生物を仲間にするか決めないといけないらしい。
仲間にするのは別に構わない、というかそろそろ一人も心細くなっていたので歓迎ではある。
今でもゴロゴロと戯れついている様子を見るに仲間というよりペットに近い感じになりそうだけど。
「でも初めての仲間てかペットが虫の卵ってどうなんだろう?」
(ゴロ?)
虫とかを飼ってる人もいるのは知ってるが自分かとなる少し微妙な気分。
どこかで相手の気持ちを知るには視線の高さを合わせた方がいいとか聞いたことあるので、とにかく水を掬い上げるようにして持ち上げて見つめてみる。
謎の玉改め、謎の虫卵は特に抵抗もなく持ち上げられて首を傾げるようにちょっこんと横に傾く。
ちょっと可愛い。
「うーむ……よし! なぁ、俺と一緒に行くか?」
(ゴロゴロ!)
そういうと雰囲気とかで何を言ってるのか何となく分かったみたいで掌で飛び跳ねていた。
これはこれで可愛いし別にいっかと自分を納得させる。
それにさっきのあの華麗な回避術は実戦でも役に立ちそうな気がする。
《バグエッグが仲間になりました。名前を付けますか?》
とか考えてたらまたインフォだ。
しかし、名前……名前かぁ。
文面を見るに必須ではないっぽいが折角だし付けたほういいよな。
勝手に付けても誰に非難される訳でもないが一応この子にも聞いてみるか方がいいかな。
「なぁ、名前って欲しいか?」
(ゴロ? ゴロゴロ!)
言った途端に激しくゴロゴロしだしたけどこれは欲しがってるん、だよな? 感情表現の仕方がいまいち分かり辛いが何となく「欲しいー!」と訴えている気がするのでやっぱり付けた方がいいのだろう。
虫の卵って言われてもなんの虫か分からないと付けづらいな、名前がヘラクレスとかなのに蝶々とかになったらコレジャナイ感が半端なさそうだ。
一番無難なのは虫の英文だけどそのままなのも芸が無い。
えっと、虫が英語で確かインセクトだったから……インセク? これはない……それじゃインセト? いや、ここはもうちょっと捻ってイセット? これだイセットにしよう。
「お前の名前が今日からイセットだ!」
かなり安直だと自覚してるがこれ以上撚るのも無理だし間違いなく変なのになるので勘弁していただきたい。
でも謎の虫卵改めてイセットは気に入ったのか掌から跳ねて喜びの舞的な物を踊ってるので特に問題ないようだ。
それにしてもめちゃ跳ねるな、かなり昔の玩具だというスーパーボールみたいだ。
《魔物種に名付けを行いました、各種パラメーターを参照してリンククラスを判定します》
《判定が出ました、リンククラスを『仲魔』から『従魔』に変換します》
え、何だ今のインフォ。
仲魔? 従魔? それにリンククラスってこういう生物との関係にもシステム的な段階とかあるのか。
何気に魔物種てのも初めて聞いたし。
森にいる化物も全部この魔物種ってやつなのか?
ネットも使えない、聞く人もいないしで疑問だけが積もっていくぅ……。
「う~~…………。がぁー!! 自分で答え出せない事で悩んでも無駄だ無駄! 体動かして暫く忘れよ、そうしよう! イセット狩りにでも行くぞー!」
(ゴロゴロ~♪)
次々と増えていく疑問へ遂に処理能力がオーバーヒートしてもう自棄クソとばかりに歩き出すとずっと喜びの舞をしてたイセットも慌てて追随してくる。
これがこの世界で俺のパートナーとなる奇妙な卵との波乱万丈な冒険の始まりであった。
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