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エデン・マキナ ~我らは機械仕掛けの楽園にて謳う~  作者: モッコム
第1章 楽園開場
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剣盾乱武

突如の黒猪の登場に場は困迷を極めていた。


その現状を何とか整理しようと、ミーチェさんが黒猪に追われていたプレイヤーたちに事情を聞き出す。


「どうなっているんですか! 何故あの魔獣がここに……。誰か状況を!」

「それは……」

「あの顔文字野郎……、 ((´∀`*))(ゲラワラ)の奴がまたやらかしやがった。あいつだけこっそり俺たちが把握外のスキルを習得してたみたいで、それで拘束を解て逃走したんだ。それだけならまだ奴を捕まえると収拾もついたんだが……」

「こっそり森を突破しようして失敗したのですね」

「ああ、それにも飽き足らず自分の命惜しさに『架け橋』まであのバケモン引き連れて来やがったんだよ」

「あんのクズが!」「畜生め、恩を仇で返しやがって……」

「幸いと『架け橋』無事ですが、中の人たちがパニックなって……。何人か危なかったからプレイヤーだけで魔獣をここまで惹きつけた来たんです」

「お蔭で((´∀`*))の野郎は逃しちまったがな……」


そんな会話が交わされる中で俺は悩んでいた。

どうする、逃げるか? 正直言って黒猪と戦うには俺とイセットだけじゃまだ戦力が足らない。

でもここにいる人たちと上手く協力すれば倒せる可能性もある。

というか、本気で討伐を目指すなら、それが1番に高確率で賢明な判断だと思う。

だが、俺たちの力が足らないのは事実、間違いなく誰かは死ぬ、そしてそれにはイセットが含まれているやもしれない。


が、そんな長々と葛藤を許してくれるほど黒猪は……世界は俺に優しくなかった。


「ブルルゥー!!」

「ッ!? テメー、何処行くつもりだ!!」


反転した黒猪が決して見越してはならない場所を目指して猛進するのを見て咄嗟に割り込み、阻む。

こいつ、今真っ直ぐにイセット方に突進しようとした。

そうだ、こいつにとってこの状況に1番に排除したいと思う対象は誰だ。

自分に最も脅威になり得る存在……自分の最大武器たる突進を止めれるイセットしかなじゃないか!


「くそ、が……。止めれェー!」


全身で踏ん張り、魔法まで多重起動してるのに全く押し返せない! 俺が押し留めるには勢いが付き過ぎてるんだ。

だからって、退く訳には……こうなれば全身を磨り潰してでもっ!


「おいおい、何か知らんが。あまり無茶をするもんじゃないぞ?」

「ブルォォー!?」

「ぐぅッ!? だ、誰!」


突如、身体に掛かっていた重圧感が無くなりよろける。

何事かと前を見ると、俺の体がすっぽり隠れる大盾を掲げた男性プレイヤーがそう言って俺と黒猪の間に割り込んで、あっという間に黒猪を制圧していたのが分かった。


凄い、あの巨大な黒猪の身体を完全に押さえ付けている……。


「緊急の通信魔術聞いて駆けつけてみれば、これまたかなり大変なことなってるな」

「こっちも忘れてちゃ困るぜ!」

「皆さん、援軍が来ました! 反撃のするなら今です! 前衛は包囲して。後衛は後方支援と並行して『光魔法』持ってるなら影で逃げ出さないよう、周りの影の排除を!」

「「了解」」「「「うおおおぉぉおー!!」」」

「……シッ!」


それに続いて、さっきの軽戦士が剣片手に吶喊したのをきっかけに、ミーチェさんが指揮して包囲網が構築されていく。

命令通りにテキパキと陣形が組まれ、前衛、後衛の二重で包囲し、その内側に影が差さないよう『光魔法』で光の輪を形成する。

だけでなくドラゴニュートであるシルフィがポールアックスを持って、その後を続く形で飛翔して上空から奇襲を仕掛る。


「アベルさん無事ですが!」

「ええ、何とか……」

「いきなり一人で突っ込むからびっくりしたんですよ!」

「いや、あれは身体が勝手に動いたというか。はは……」

「はぁ……、とにかく無事よかったです。でも、そんな力が有り余ってるなら手伝ってくださいね。今は一人でも戦力が欲しいですから」

「それは勿論、最初からそういう話しだったんですし」

「だったら次からは一人でも突っ込まないこと、いいですか!」

「分かり、ました……」

「ふふ……。それでは、僕は隊の指揮がありますので」


いたずらっぽく笑って去るミーチェさんの背を呆然と眺め、思う。

そっか、今は俺とイセットだけじゃないもんな……ははは、頭では分かってたつもりだったんだけど、今漸くそれが自覚出来た気がする。

多分、見ず知らずの人に襲われたってのが自分で思ってたより、ずっとショックだったんだな。

だから、心のどこかで危険な時には頼れないと、そう勝手に思い込んでいたのだろ。


(ゴロゴロ~)

「イセット……そうだな、お前も一緒に戦ってくれるもんな。よーし、じゃあ一緒に行くか!」

(ゴロゴロー!)





♢  ♦  ♢





「ち、切り辛い!」「影面倒くせー!」

「ぐっ、おっと……大人しくしてろ、よ!」

「ブルゥゥ……!」


約十数人の多勢対一、その戦いは驚く事に拮抗……いや、下手するこちら僅かながら押されていた。

前にも見た自分の影への打ち沈みでの回避術は勿論のこと、いつの間にか相手の攻撃を操って身に纏わせた影に沈める防御術まで身につけていたのが痛い。

影を攻撃して体制が崩れるなどすると『土魔法』や牙での突刺し、噛み付きなどでカウンター狙ってくるので、死者はないが既にかなりの負傷者が出ている。


そしてその歪んだ網目状の影は随所が波打つかの如く流動しており、避けてというのも難しい。

やつの操る影を回り込める速攻でないと有効打が決められないのだ、正直インチキって言いたくなる防御性能だ。


「くそ、こいつ……! 平然と、10人以上……捌きよってからに」

「てか、前にあった時より強くねーか?」

「魔法隊、もっと光量あげろや!」

「もうやってる! 光で散らそうにも、『土魔法』で逆利用して日陰を作ってるから。こっちが対応仕切れないんだ……!」

「デカブツの癖して、無駄に繊細な……」


不味い、士気がどんどん落ちていってる。

そうじゃなくても不利だってのに、気持ちまで負けては勝てるもんも勝てない。

でも現在俺がやってるのは影を避けて拳を打ち込むぐらい、イセットも黒猪に隙が見えないのか無駄なMPの使用は極力抑えてほぼ素の状態の糸だけで戦っている。

シルフィさんなんて既に前線離脱している、名前でイメージする通りに強力な種族ではあるドラゴニュートは色んな要因で燃費が極端に悪く、このような長期戦には向いていないのだ。


「おい、お前ら! なーにを腑抜けたこと抜かしてんだ、ここで俺たちがやらないと……」

「一体この先で何人死ぬと思っている! 今までの苦労も全部水の泡だぞ!」


そう思った矢先、さっき俺を助けた大盾使いと先頭立って来た軽戦士が仲間を鼓舞し、戦場に息を吹き返す。

大盾が完璧に抑え込んで十八番の突進を封じ、軽戦士が神速の短剣二刀流で影を先回り斬り裂く……その二名の発破をかけられ奮起し、萎えかけていた攻勢は苛烈さ取り戻す。

いつの間にか、あの二人が今戦の要になっていた……きっとこの二人がいなかったらとっくの昔に戦線は崩壊してたことだろう。

そう思わせ納得出来る程の迫力が、あの二人にはあった。


「凄いでしょう、うちの最高戦力たちは。こうなると残り 一人( 一体)がここにいないのは惜しい限りですよ、本当」

「ああ、大盾の人もそうだけ、っど! 軽戦士の人も剣戟が、ふっ! まるで読めない」

「『架け橋』からあれが来た時はどうなる事かと思いましたが……これなら」


「うし、そろそろあれ行くぞ! 地面にめり込むつもりで抑え込めェーッ!!」

「言われずともッ!!」


攻勢に参加しながら、自慢げなミーチェさんとそんな会話をしてると、話題の人物たちがついに決め手に打って出ようとしていた。


「潰れてろ。『過重拘鎖かじゅうこうさい』」

「スライス肉にしてやるよ。『斬獄群匕ざんごくむひ』」


揃ってスキル名らしきものを呟いた瞬間……まるでいきなり超重量級の重さにでもなったように黒猪と大盾使いが同時に地面へと亀裂を刻みながら、文字通りめり込んだ。

その様子を一瞥した軽戦士は飛翔するかのように跳躍し、そのまま黒猪へと真っ直ぐ落下して……そこから剣戟の嵐を巻き起こす。

剣戟の嵐が黒い水面に血の波を引き起こし、這い回るその姿は正しく剣戟の化身という表現がしっくりくる程の鬼気迫るモノだった。


「キャハハハーッ! 血祭りだぁ、こんの豚ヤロウがー!!」

「相変わらず、血を浴びると口が更に悪くなるな、お前は……おっとっ! もう抜け出せん。この盾が貴様の墓標と知れ!」

「ブォォォオ~~ッ!?!」


早すぎる……早業すぎて腕から先は最早見えるのが煌めく刃の残像と撒き散らされた血飛沫しかないレベルだ。

そして、体格が自身の数倍はある黒猪の必死の抵抗にも微動だにしない、させない大盾使いも大概ぶっ飛んでいる。

だが、それでもまだ黒猪は息絶えてはいない……そして諦めてもいない。


「なら、俺も黙って見てはなれない、なぁッ!」

(ゴロゴロ、ゴロ!!)


だからと言って、俺も感心してばかりいた訳ではない。

あの二人がスキルを発動させた辺りから、こっちもイセットと共に最後の一撃を準備していた。

黒猪から少し距離を取っていた俺は心でゴーサインを出し、『風魔法』『水魔法』『追跡』で一気に加速。

黒い巨体が一瞬で目の前に迫り、そこへと炎の爪を握り締めた拳を加速の勢いを十全に乗るように振るい、『光魔法』の閃光を瞬かせ振り抜き……肘の魔力を解き放つ!


「はぁぁぁぁあァーッッ!!」

「ブホォォォォオ~~~ッ!?!?!」


二重の魔法で砕ける腕の痛みを誤魔化すため、雄叫び上げながら全力で黒猪の脇腹に炎の爪を食い込ませていく。

分厚い毛皮を貫通して内蔵を焼く音が聞こえる、それでもまで死んではいない。

が、これぐらいは想定済みだ……それにどうせ本命は俺ではない。


「やってやれ、イセット!」


巨大な、『操糸』で糸を束ね合わせ『剛柔兼備』で調節し『風魔法』を纏わせた真っ白い刃……そして切っ先には加重の魔術陣。

それを身に付けてまま『縦横無尽』の最高速度で今までずっと回り続け、遠心力を乗せに乗せた状態で黒猪の首目かけて疾走り――


(ゴロ、ゴロンーッ!)

「――――ッ!?!」


―― やつの首を完全に切断した。



『過重拘鎖』:『加重』『重圧』『固定』『与重』をMxaまで育てると統合し習得出来る複合上位スキル。

使用者と対象の両者に体重を大幅に増大及び動きを停止させて、体重に比例した重圧感を付与する。


『斬獄群匕』:『短剣術』『両利』『連動』『斬線』をMxaまで育てると統合し習得出来る複合上位スキル。

短剣種の武器を2つ持ってる時のみ相手の切るべき斬線が全てが一瞬で分かり、どのような姿勢であっても斬線を連続で斬り刻む。

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