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エデン・マキナ ~我らは機械仕掛けの楽園にて謳う~  作者: モッコム
第1章 楽園開場
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『魔力体』

うーむ、今回キリ良くないせいでかなり短めです

――あれはヤバい、と行動に移ろうとしていた時には既に遅かった。

翅脈が妖しく深い緑色を灯し、その羽ばたきの振動がより壮大になものとなる。


ブウゥィ――――――――ンッッ!!


それが爆音ような翅音が増幅され、『固定』で持続発動していた竜巻まで掻き消える程の破壊的な音波となり、全身の細胞を震わせバラバラされかねないのではと思う振動を叩き込む。

周り同族の蜂蜻蛉もその影響で次々墜落するがお構いなしだ。


「ぐあぁぁァ……ッ!?」

「……~~~ッ!?」


くそ、内蔵どころか……脳まで揺さぶれるみたいで、身動きが取れない……!

だが、そんな俺よりも被害が酷かったのはイセットだった。


「……、ー」

「イセット……? おい、どうした! ……んな!?」


ふらふら浮力を失い、落下していくイセットの声掛けながらステータスを確認して驚愕に陥る。

この数十秒間にイセットHPが残り5割切っていたのだ。

何で、確かに俺もダメージはあるがまだ1割すら減っていない、いくらイセットの甲殻の内側が脆いと言ってもこれはあまりにも……ッ!


「『魔力体』か!」


多分『魔力体』にはMP最大量を増やしてHP最大量を減らすって効果がある。

普段は卓越した『防御』と『鎧術』それに『縦横無尽』により回避能力で問題にしなかったが広範囲の音波攻撃には無用の長物だ。

どっか落とし穴があるとは思ったけど、こんな形で分かることなるとは最悪だ。

このままじゃイセットは……。


それ分かってるのにあの翅音をどうにかしないと、何も出来ない。

どうすればいい、水や風でただ壁を作った程度じゃこれは防げない。

軽減は出来るかもだが根本的解決ならないんじゃ意味がない。


音、大きな……空気の振動を止める、には……待てよ、空気の振動? そうか、音も風の動きなら……!


1つ小さな活路を見出して、まず下準備のため『固定』を解除する。

それを俺達が抵抗出来なくなったと思ったのか、やっと女王蜂蜻蛉が根本が俺の手首程の太い針を向けて突進してきた。

イセットを庇いながら二の腕を犠牲に回避するもすぐ方向を曲げて再突撃が来る。


「ぐぁアッ……!? しゅ、集中……集中して、魔力を染み込ませて風に魔力を、委ねるように……」


音波の中で無理に動いた代償に全身の肉が骨が血が沸き立ち、暴発しそうになり血管が弾けて血塗れなる。

それでも『光魔法』で無理矢理治して、いつかの焼き直しようにイセットを抱えた状態で樹木を背にしてもう一度回避。

これで幹に刺されば時間稼ぎに……なってないな、胴体ごと幹を貫通して風穴を開けてやがる。

一発でもまともに当たるとアウトだな、あれは……。


「あと、少し我慢してくれ……」


この時点でイセットの残りHPが3割切った、もう猶予あまり残っていない。

悠長なことをしてる時間はない、一分一秒も惜しめ、もっと精査しろ、もっと研ぎ澄ませ、回路の一筋をも使い潰せ……!


「ぐおぉぉおおぉォォー!!」


再度の突撃も血潮を撒き散らしながら致命傷を避け、


……遂に完成した。


ウィ―――――――――……ン


「チィィ……ッ!?」

「はは、やっと……くそ喧しい雑音が消えたな」


はぁ……間に合った。

今や森中を所かまわず破壊こわさんばかりだった音は、規則正しい音色へと変わっている。

周囲の風(空気振動)を掌握し、聞き心地のよい風に変える。

言葉で言えばそれだけだが、一度やるにも繊細な作業なため凄まじい集中と大量のMPが必要だ。

集中力に関しては一度『固定』してしまえば初めが大変なだけだが、MPは『魔量再生』があるにもかかわらず長く持ちそうにない。


「イセットはここにしっかりと掴まっていろ。すぐ片を付ける」

「ギチギチィッ」


腰紐でイセットの胴体を固めて、きゅっとしがみつかせる。

しっかり掴まったを確認し、意識を完全に女王蜂蜻蛉にだけへと集約させる。

魔法なしで強敵と相対……こんなに早く来るとはな、相変わらずこのWCOは人に暇を与えるつもりないらしい。


「ギチィー!」

「ふぅ……」


女王蜂蜻蛉が猛スピードで一条の矢如く飛来し、俺は心を落ち着かせるためゆっくり息を吐く。

この交差での一撃で決める、長期戦イコール敗北の俺からしたらそれしか残された道はない。


「はッ!」


力むでもなく、ただ正確に拳を振るう。


「ギチィーッッ!」


だが、それよりも明らか針が先に心臓へと届く。

でもそれは分かっていたこと、だから……


「取っ、た……ぃや、取らせたぞッ!」

「ッ!?」


……敢えて、もっと早く腕を差し出す。

そして針が全部腕に鞘であるかのように納まった瞬間、横に引っ張り腕ごと千切れ飛ぶと言う未来を避ける。

すかさず逆の手を炎の爪を握って女王蜂蜻蛉の胴を穿つ。

昆虫生命力は強い、こんなじゃまだ足りない、もっと深くまで……!


「――ッッ!?」


油断したつもりはなかった、でもここまで来たら後は押し込めば勝てると、とかで隙が生じていたのだろう。

だからやつの翅から膨大な魔力の奔流が放たれ、自身を削りながらもその強靭な顎で迫って来るのをみすみすと許してしまった。

自分のことながら本当に詰めが甘いな、と自嘲するもう後の祭りだ。

だったら確実に刺し違えるように『固定』を解いて全魔力を……


「……ーッ!!」


……と、女王蜂蜻蛉と共倒れを覚悟していたその時、バッカリとやつ体が左右に開かれ後方へと抜ける。

何者かのよって縦に真っ2つに断ち切られた、そして今この場にそんな真似が出来るのは……。


「はは、また助けられちまったなぁ……」

「……~♪」


イセットは意識が朦朧としていながら、それでも踏ん張っていただろう、その顔からは疲労が見てとれる。

それでも俺に心配掛けまいためか無理してるのが丸分かりの笑顔と小さいからやけに可愛く見えるサムズアップを見せていた。

騒々しいインフォが鳴るが、今回もそれを確認する暇はない。さっきまで爆音でノックアウトしてた蜂蜻蛉がそろそろ起きそうなっているから早くここを離脱しなきゃいけない。


「ありがとうなイセットは……。さて、こいつらがお眠してる間、今度こそ帰宅するとしますか」

(ゴロゴロ!)


礼を言いながら魔法で回復させると、即復活し元気に空中をゴロゴロしながら先頭を行くイセット。

結局逃げる時それなのな、と苦笑いを浮かべながらそれを全速力で追っていった。

・『魔力体』


身体の殆どが肉体から魔素に近い状態で生命活動をする。

MP最大量に補正・特大 HP最大量に減少・特大

有機活動魔素器官での異物混入魔素分解・中 


『魔力体』とはあまりにも歪で不完全で非合理な進化の産物である。

だがどの時代にもこれを自ら求めるものは必ずいる。

それは己がすべてをかけ程、可能性に満ちているがために……。


ー 『科星』進化学の権威 フリィー・アクドゥ博士

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