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エデン・マキナ ~我らは機械仕掛けの楽園にて謳う~  作者: モッコム
第1章 楽園開場
36/62

群虫演舞 ー前ー

執筆速度に余裕が出ても心情的に書きためが出来ずにまた更新です。

「……んぁ?」


目が覚めるとそこは真っ白と僅かな葉っぱで囲まれた空間だった。

暫くぼんやりとしていた意識がまとまり、意識を失う前の出来事を思い出す。


「そうか、何とか治せたのか……。それで直気絶ってのが我ながら情けないけど、はは……」


自嘲して改めて周りを見渡し、ここがどこなのか記憶を探る。

真っ白な床や壁は見覚えのあるもので、触って確かめてみるとこれらが隠れ家みたくイセットの糸で出来ているのが分かった。

一瞬隠れ家に戻ったのか思ったが、壁がまったく角がなく滑らかな曲線を描いている事から違う場所だと直ぐに気付く。


「えっと、これってもしかして糸で巨大な繭の中なのか?」


……確かにあんだけ量を出せるなら、こんな真似も出来なくはないか。


それにこれがあの子の作品なら当然……


(ゴロゴロ~!)

「うお! イセットそんなとこにいたのか!?」


大き目の葉っぱの後ろから、ひょっこり現れ俺が起きたのを見るや壁伝いに降りてぼふっと懐へ転がり込んで来る。

体が小さいからそんな潜めるんだな~とか、子供の頃見た童話に似たようのが居たなーとか、考えながら懐に飛び込んで顔を埋めているイセットの頭を指だけで優しく撫でて落ち着かせる。


「……心配させてごめんな。もう体も大丈夫だからな、イセットのお陰だ」

「……~♪」


やっと安心したのか顔を見上げて心地よさそうに表情を緩ませ、撫でられるがままになったので、もっとイセットの撫で気が済むまで撫でて置く。

それでも胸元に引っ付いて暫く離れそうになかったので徐に立ち上がり、巨大繭の出口だと思われる糸の仕切りをくぐって外へ。

太陽の位置からして、どうやら一晩は過ぎたなと思いつつ辺りを見渡す、が……。


「全然見覚えの無いとこだな……。あの場にいる方が不味いから、こうするべきってのは分かってるけど……」


色々と派手にやったし、まだ近くに黒猪も居ただろうからな。

ただ、いきなり全く土地勘のないとこにいきなり来られるのは、どうして不安になるものだ。


「どうすっかなぁ……」


第一目標は黒猪の打倒ないし無力化だ。

あれが居る限り、この森林で常にその脅威に怯えて過ごす事になるし、何より今回の件で完全に目を付けられてると、俺は確信しているからだ。

次点としては『架け橋』と他プレイヤーを探す。

これに関しては……まぁ、手掛かりと言えるものが、この前の悲鳴と布切れしかないから運が良ければってとこだな。

それとは別枠で今急務なのは……。


「この繭の改装と食料確保。後、道すがらでもイセットの事も調べとかないと」


ま、こんなとこか……結局、場所が変わってもやることはあんまり変わってないな、俺。


「ならまずは繭の方だけど……うーん、悪くないけど、やっぱ所々違和感があるな」


『偽装』スキルを発動し、改めてイセットが作った繭型の隠れ家を見て率直な感想がそれだった。

俺と一緒に前回隠れ家を作った経験があるからパッと見では分からないよう背景に紛れれているが、やっぱりあの頃から相当レベルアップした『偽装』スキルで見ると、その少しの齟齬が目立つ。

これでも普通のやつにはバレないかもだが、俺のように見るやつが見ると一発で何か隠してると分かる、これは非常に良くない。

だからまずそこら辺の修正のため、一部の偽装用の葉っぱを退かして周囲風景に同化するように再配置。

その他にも偶然入り口に入ったり、意図的に触ったりした時の罠をいくつかイセットとアイディアを出し合って設置して一旦繭の改装はそこで〆る。

因みにイセットは喋れないから罠は小型で実践する形だったけど、結構長くなるのでここでは割愛。


「よし、次は食料探しだな。……それに並行して、出来ればレベル上げもしときたいな」


と言ってもレベルに関しは、どうせ否応なしに上がるしか無くなりそうなので、あまり意識して行なわなくてもどうにかなる……というかきっとそうされる。

食料は……正直これが一番のどうすればいいのか分からなかったりする。


「毒があるかどうかでも、判別出来ればなぁ……」


この際味とかは目を瞑るが、毒でランダムリスポーンしてイセットと引き離されると困る。

『光魔法』で一応治せるとは言え、即効性だったらそんな暇もないだろう。

無論普通に食べられるのが当たるかもだが、それに賭けて自分の体で毒鑑定するのは最終手段にしたい。


「……って、イセットがいつの間に」


俺のボヤキを聞いてか、いくつかの果物を集めて来たイセットがその一つをなんの躊躇いもなく齧る。


「え、いや、ちょっと待てって!」

「……?」


何が入ってるか分からないのを迂闊に食べちゃ……ああ、ステータスにもう毒の表示がついて……あれ、一瞬で消えた!? 『光魔法』はまだ掛けてもないのに……。

訳が分からず呆然していると同じく他のも毒味を繰り返し、自分が毒になっていない果実を俺に渡す。


「……~♪」

「えーと……とにかく、ありがとう?」


動揺したのを落ち着かせる意味も含めて、リンゴに似た果実を齧り考える。

何故イセットは毒が効かない……いや、正確には何故直ぐに毒が消える?

怪しいのは特性の『魔力体』、これはあの異常なMP量に影響してるぐらいは思っていたのだが……どうも予想以上に秘密を抱える特性であったらしい。


「特性は他と違って詳細が見れないから、知るほど謎が深まるばかりだな……」


この感じだと『甲殻』と『旋回』もまだ知らない部分が多いのかもしれない。


「ま、どっちにしろ、これで毒の心配をしないで済むのは助かる」


イセットにこれからも毒味をさせるのは気が引けるところではあるが……強制じゃなく本人が進んでやってることだからなぁ……。

それにイセットなら本当に危険そうなのは避けれる気がするし、今後を見据えるなら『魔力体』の検証は必要だ。

あくまで勘だけど、これを把握しとかないと取り返しの付かないことになりそうな予感がするのだ。


「んぐっ……、はぁー。腹も膨れたしそろそろもっと遠くへ行ってみるか?」

(ゴロゴロ)


やっぱり妖精になってもゴロゴロで返事するのか……ないならないで寂しいかもだからいいけどさ。






♢  ♦  ♢





「この、すばしっこい! ぐぬぬ……」

「ギチギチッ!」


新しい拠点の巨大繭から離れて森を歩いて暫くすると、待ってましたとばかりに魔物に襲われた。

こいつはまた面倒な相手で姿は有り体に言うと蜂とトンボ掛け合わせた合成昆虫である。

昆虫と言っても体長50cmはある、蜂の警戒色柄をした長く太い腹とトンボの長い翅、人差し指程ある毒針を備えた、Jを左横倒しの巨大な姿ではあるが。

虫が苦手な人が見ればたちまち悲鳴を上げるであろう仮称・蜂蜻蛉だがはっきり言って動きが早くてウザい。


独特な動きをするホバー移動で大振りな攻撃は悠々と躱され、背後から襲ってもでっかい複眼で捉えられて失敗に終わる。

魔法で動きを補助するタイプなら先読み出来るんだが、純粋な肉体タイプらしく魔法一切使わない。

要は俺とかなり相性が悪い。

で、蜂の習性もあるなら当然の如くこいつも群れて来てた訳だが……


(ゴロゴロ!!)

「「「……チィー!?」」」


イセットを包囲して針で刺そうとしても流れるように躱され受け流され、逆に糸で両断されるか絡み取られる。

移動の精緻さも攻撃範囲も威力もましてや眼の性能までイセットがワンランク勝る様で、ぶっちゃけ相手になっていない。

キャタピラーに進化してた時もそうだったけど、本当進化って一気に強くなるな……。


「ギチギチッー!」

「ギチギチとうる、さい!」


中々に拳が当たらずイライラしているが、正直言うと今にでも蜂蜻蛉を倒すのは難しくない。

負け惜しみとかではなく、『風魔法』で『固定』と『魔量再生』頼りに局所的な竜巻とか作ればいつでもはたき落とせるからだ。

ただ、それでは空歩猿の時と比べてなのも変わってない。

こういう奴に”魔法なしでは何も出来ない”って固定概念が植え付けられるのは後々になって足を引っ張る。

それにイセットは魔法なしでも糸で捕まえて首を捻り落としてからな、こんなやつぐらいでいつまでも手こずっていたらイセットとは肩を並べない。


「ふぅ……」


息を吐き出し、思考を鎮静化する。

何も俺もただ拳を振り回してた訳ではない、蜂蜻蛉の動きをじっくり観察、分析していたのだ。

こういう白兵戦では虫の翅ってのはかなり厄介だ。

遥かに上空を飛んだり長距離を移動するのには向いてなさそうだが、とにかく小回り効く。

複眼も厄介で俺の動きを正確に捉え、死角に潜り込んでくる。

長い腹が蛇みたく伸びて刺して来るのは面倒ではあるが、急所さえ守れれば致命傷にはならない大きな問題はない。

読めるのは死角に潜り込むと必ず針の突き刺しをしてくること、その時に一度減速しないといけないとこだ。

なら、そこに罠を仕掛ける。


「はぁっ!」

「ギチギチッ」


耳障りな顎を打ち鳴らし蜂蜻蛉が大振りに見せた俺の拳をスゥーと避ける。

体制的にどうしても出来る上がる死角に一瞬で飛び込み、視界から消える蜂蜻蛉。

腹に衝撃とカァーくる熱を感じる……と思った即後に腹筋に全力で力み、そこのみに『固定』を発動。


「ギチィ!?」

「つ~かまえ、たぁー!」


動揺し止まった蜂蜻蛉の喧しい顎を炎の爪でかち上げ、千切落とす。

それでも地に落ちてビクビク痙攣していたのでトドメに念入りに踏み潰して置く。


「っはぁー、痛かった……。何とか勝てたけど、こんな危なっかしい事しないで勝てんようではなぁー」


(ゴロゴロ~!)

「「………チィィ!?!」」「ジィ……」


回復しながら愚痴を漏らし、余裕でもう7匹殺ってるイセットを眺める。

糸が正確に極端少ないはずの複眼の隙すら縫い、タンポポの種ようにひらりと波状攻撃を避け、それでも近寄って来たやつは甲殻を『鎧術』の要領で使い受け流す。

うーん……正直今のイセットに勝てるイメージがまるで湧かない。


「ま、だからって諦めるつもりはないけどな。……ん?」


……ブゥーン


さっきから散々聞かされたのと同じ虫の羽音……増援か? いや、確かにスズメバチとかは死んだ昆虫の死骸を巣に持ち帰ると聞いて事がある。

どっちかと言うと仲間の死骸が目的の可能性もあるな……とか思っていたら羽音どんどん近くに……。


ブゥーン 、ブゥーン、ブゥーン……

ブゥーン、ブゥーン……


視界を目一杯埋め尽くす蜂蜻蛉の虫、虫、虫、ムシ……。

奥の方はもう先が見通せない黒と黄色の共演がだけがすべてを飲み込んでいる。


「……よし、イセット今から作戦を話す、よく聞け」

「……ー」


この状況で取れる作戦それは……


「全力で撤退ぃーッ!!」

(ゴロゴローッ!!)


俺とイセットは恥も外聞もなく、その場を逃げ去った。

『魔力体』はまだまだ秘密が隠れているのです。

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