戦場に舞い降りたは……
昨日上げたかったけど寝落ちてしましまた……。
『蛹化 残り時間6:46』
隠れ家の中から息を殺してお互い出方を窺う2体の魔物を観察しながら、思案する。
「――――……」
「ブルルゥ~……」
イセットを抱えたまま離脱……ってのは無理か。
両方、間違いなく俺を殺りに来るだろうしな。
それとも2体を惹きつけてここから遠ざける……のはどの道イセットの身が危険なのは変わらない。
それじゃ意味がない。
俺1人であの2体を倒す? 無理、体の内からも外からもボロ雑巾になる未来しか見えねー……。
……と、なると取れる作戦1つだけか。
「ふぅーッ、はぁー……。おい、黒豚俺を殺りに来たんだろ。そこでブルってないでかかってこい!」
「フゥンー……!!」
隠れ家を飛び出して黒猪に前回同様に一番の効いていた言葉で挑発する
前回みたいに無闇に突っ込んで来たりはしないが随分と鼻息が荒い……明らかに頭に来てるな、あれは。
そして意図的に事故な風を装って『光魔法』を解除、すると逃さないとばかりの飛来する透明な短剣。
1投目を避けると、偏差射撃如く飛んで来た2投目をわざと受ける。
「くはァッ!?」
おえぇー……やっぱり辛ぃ……五臓六腑がひっくり返って口から出て来そうと思えるぐらい気持ち悪い……。
が、この射線なら恐らく……
「ブヒィィィー!?!」
「おーし……あたりッ!」
『光魔法』で治療しなが快挙の叫びを上げる。
透明な短剣は物体をすり抜ける、つまり投擲の射線上に並べる配置で当たれば黒猪も巻き込めるという事。
そしてこの不快極まり無い攻撃を受ければ、あの黒猪の性格なら……
「ブモォォォォォーッ!!」
「――――ィッッ!?」
当然俺よりも危険度が上のひょろ長ゴブリン幽霊を先に始末しにいくよな。
何よりお前からしたら位置もバレッバレだろうしな。
俺が光をセンサー代わりに出来るように黒猪も影をセンサーに使えるはずだ。
消滅ないし弱体化を防ぐため、ひょろ長の幽霊は影がない場所には居られない。
日差しに晒された他のゴブリン幽霊を見るにどっかは確実に影を踏んでいる。
つまりひょろ長は黒猪の知覚範囲から逃れることは叶わない。
それに物理攻撃が効かない幽霊なら黒猪相手でも相当粘れるはず、と予想していたがここで想定外の事態が発生。
「ブルゥー!!」
「――――……ィィッ!?」
「土を、纏っている?」
黒猪の体からとこともなく現れた土塊を牙で身に纏っていく。
確信は持てないがあれは『土魔法』か?
なるほど、あっちもそれなりに備えがあってこそ来た訳だ……相変わらず猪のくせに慎重なやつめ。
土塊を纏い身体各部一回り膨れ上がって疾走するその姿はまるで重装甲の戦車である。
だと言うのに影渡りで移動してるから加速がまるで減らないおまけ付き。
あれに轢かれたら俺なんかはミンチ確定だ。
それに魔法製だから実体がないの幽霊にもちゃんと効いてる様子。
だから隠れようとも即座に発見され凶悪な突進が這い寄り霊体が崩れていくひょろ長幽霊、正直もう詰んだと思われる。
と、ただ眺めてる場合じゃない、このままだとひょろ長幽霊が倒されそうだが……それはまだ困る。
「ほーら、よっ!」
「ブヒィィィー!?」
ひょろ長幽霊とどめを刺しに影から出ようとした瞬間を見計らって『光魔法』の閃光で明後日方向に追い払う。
そこで俺への怨念はめげなかったひょろ長幽霊はまた短剣を投擲。
「お前ならそう来ると思った、ぐふぅッ!?」
「ブラァアアーッ!?!」
当然また射線を黒猪に誘導して俺諸共貫通するように調節する。
またひょろ長幽霊に憎悪の視線を向ける黒猪に、隠れるひょろ長幽霊。
この膠着状態を維持しながら約7時過ぎるまで耐える……ぶっちゃけ命がいくつあってもチップが足りない賭けだと思うが、今俺に出来るのはそれぐらいしかない。
♢ ♦ ♢
『蛹化 残り時間?:??』
「うぐっ……、くぅぅ……。分かってた事だが、キッツいなこれは……」
いったい、どれだけ時間が過ぎたのか意識が曖昧で分からないが太陽がかなり天高く登って来ているので数時間は経っただろう。
その数時間の間に俺の体はボロボロになっていた。
黒猪の突進をまとも受けてはいないがそれでも掠りはしたし、掠っただけで肉が抉られ血肉が弾け飛んだ。
ひょろ長幽霊のあの透明な短剣も黒猪に当てさせる都合上、断続的に受ける必要あったのも徐々に体を蝕んでいった
『光魔法』を掛けたに関わらず、もう何度も吐いて吐くものがないと血を吐き出し果には目や鼻からも血が吹き出した。
この段になってやっと幽霊がしてくる攻撃を所謂呪いとか呼ばれるもので呪われれば呪われる程に効果が増すのではと思い至ったが既に後の祭りだ。
HPバーなんてさっきから傷を直しても3割からゲージが止まったまま動かない。
そんだけ体の損傷が酷いという事だろう。
唯一幸いしたのは俺達……というか主に黒猪が派手に暴れる回ってくれてるお陰でこの近くに魔物を一匹も寄り付かない事だけだ。
戦いながらもイセットがいる隠れ家の『索敵』反応に意識の一部を割いていたが偶然来たそれらしいやつもそそくさと逃げていったので間違いない。
「はは、どうすっかな……正直もう足が言うこと聞かないや」
でもここで諦める訳にはいかない、諦めればイセットは最悪こいつらに殺される。
そんなことさせられる訳が、ない!
「はぁ……っ、はぁー……。黒豚、まだ俺は、生きてるぞ? こっち、むけや!」
「ブルルゥ……!!」
なけなしのMPを絞り出して『水魔法』の弾丸を目に浴びせる。
なんの痛痒を与えられないが、黒猪の視線が俺を射抜く。
それに負けるかと瞼を細め睨み返す、無視するなど許さないと意志を込めて強く、強く。
やつは突撃しながら影に潜る、今直ぐに目の前の”難敵”を打ちのめすがために。
俺はその様子に僅かながら笑みを零してた。
やつからしたら俺やイセットもただ自分の”糧”ぐらいにしか思っていなかったのだろう、少なくとも今まではそうだったという確信がある。
だが今のやつの目ははっきりとした”敵意”あった。
「ぐあぁぁぁぁーッッ!?!」
どうせ躱せないと近くの影から飛び出し突進して来た黒猪を待ち構えて、そのまま土塊で肥大化した牙を受ける。
そのまま俺を牙で貫き排除しようとしたが、俺はその衝撃を全身を使って横に逸し土塊の牙にしがみ付く。
「と、ったぁーッ!!」
「ブルルゥー!?」
「はなさ、ねーよっ……」
これはさすが予想外だったのか俺を振り払おうと頭を振るが、落ちてやるもんか、腕がへし折れても離さね!
それでも勢いがついた突進止まらず、そしてその先にいるのはひょろ長幽霊。
黒猪は俺を全力で素早く仕留め、ひょろ長幽霊に直行する腹積もりだったのだろう。
というか今もこうならばひょろ長幽霊とサンドしてやる気満々だな、こいつ。
「好都合、だな……まとめて、ふっとべーッ!!」
ドッカ――――――――――ンッッ!!
「ブヒィィィーッ!?!」
「――――――ッッ!?!」
「ぐぅぅーッ!?」
黒猪とひょろ長幽霊の間に、戦闘の隙間で密かに回収しといた罠用の爆発寸前の魔石を投げ込み起爆させる
俺は投げ込んで直ぐに黒猪を盾にして爆発から逃れるが、それでも爆風や熱まで防ぎ切れず黒猪の体から吹っ飛ばされた。
コロコロと地面を転がり樹木の幹打つかって漸く止まったが、もう本当に体へ力が入らない。
でもこれで消え掛かっていたひょろ長幽霊は消滅して、黒猪もかなりダメージを負った、はず……。
……だが、そんな甘い幻想は目の前の悠然と迫る黒い巨体により即座に打ち拉がれた。
「…………はは、嘘だろ。それをモロに食らって、殆ど無傷かよ……バケモンが」
黒猪の体はあの土塊の鎧が剥がれただけで外傷らしい外傷は1つとしてなかった。
黒猪が短いながら逞しい前脚を掲げ蹄を俺の頭部に狙い定める、それで踏み潰すつもりなのだろう。
だが、やつの目には見下す感じはなかった、寧ろここまでして圧倒的強者の自分に立ち向かったものに敬意すら払っている、不思議とそんな印象を受けた。
蹄が近づき視界をどんどん埋め尽くしていく……ああ、ここまでか……と、目を瞑ったその時。
微かに陽光を反射する線が絡み付いて黒猪の蹄がピタっと止まり、待ちかねていたインフォメーションがやけに大きく鳴り響いて脳内を揺さぶる。
《従魔・イセットの『蛹化』が終了しました》
《従魔・イセットが『魔幼虫』から『虫精』に進化しました》
「イ、セット……?」
―― 死に際の俺の元に舞い降りたのは天使ではなく、真っ白なドレスを纏う一羽の白い髪の妖精であった。
イセットの種族名めちゃ悩みました。
まだ進化階位が低いからあんまり派手なのを付けれないのも困りものでしたね……。
作者は知ってる言語のストックがあまり無いのでネーミング辞書ってのをよく参考にしてます。




