三者対峙
遅いが連日投稿です!
『蛹化 残り時間11:46』
「退屈だ……」
不動の体制で周辺警戒に当たって3時間程過ぎた頃、自然とそんな愚痴が漏れ出た。
不謹慎だと思うが何か喋るでもなくやるでもなく、ただじーっと座っているだけというのはなかなか精神的にくるものがある。
夜の森は風音や草むらが擦れる音と虫の鳴き声以外には何もなく実に平和ものである……まぁ、だから尚更参りそうなのだが。
「ぉ――――……」
「ん? 今何か変な声がしたような」
念のため『索敵』反応に集中して探ってみたが特に引っ掛かるものはない。
耳をすましてみても足音や茂みの音も一切しない……ただの聞き間違いか?
疲労による、ただの思い過ごし……と、済まそうとした直前『光魔法』に感あり、場所は……ッ!
「避けた――」
既に隠れ家の真ん前まで近付かれたのを察知し『固定』解除して前方から来る黒い塊から横飛びして衝撃や痛み感じなかったので回避成功……
「―― くはッ!?」
……したと思ったら心臓を掴まれたみたいな途轍もない不快感に襲われ、肺から空気を吐き出す。
「んだ、これ……」
気持ち悪い……口の中に酸っぱい匂いが登ってきて、少しでも気を緩めると今にも吐きそうだ。
そこでHPバー横に禍々しい髑髏が書かれた未知のアイコンを発見……これは毒を盛られた時と似たような状態ってことか……なら話は簡単と『光魔法』を発動して光で身を照らす。
「はぁ……一気に楽になった。けど、敵は……え、も、もしかして」
『光魔法』をかけた途端に不快感と吐き気が治り、これを仕掛けたはずの犯人を探すべく隠れ家外を見てみると、そこには後ろの背景が見える程に透けた人型の何か……。
「ゆ、幽霊だ! ど、どうすれば…………ってあれ?」
「――――……!?」
正直、怪談とかちょっと苦手なタイプだから一瞬パニックになるところだったが、直ぐに推定幽霊から異変を目撃し疑問符が浮ぶ。
俺は何もしていないのに幽霊が宙をもがき苦しみ浮かび回っているのだ。
それを見て一時冷静が戻った頭で原因を探ると、幽霊が俺の手を……それも『光魔法』を放っている手を恐れる目で見ていることが分かった。
「……えい!」
幽霊に『光魔法』を直接当てる。
「――――……ッ!?!」
するともがくのが激しくなる。
「ふむふむ、なるほど……さっきのお返しだああぁぁー!!」
「――――――――……ッッ!?!?!」
謎攻撃の恨みをたっぷり込めて全力で『光魔法』を放ち、悲鳴にならない悲鳴を上げ続ける幽霊を文字通り消滅させる。
ふぅ……何かびびって損した気分、これならもう幽霊に怯えることはなさそうだ。
「というか幽霊も出るのかこの森……いつも思うことだが、ここ魔境過ぎやしない?」
それに忘れがちだけど、ここ一応は一般公開してるVRMMORPGなんだよな……世の中ゲーマーって人種は過酷な環境に好き好んで飛び込むのだろうか、正直理解に苦しむ……いや、俺も自分の意志で来てるんだからあんま変わらない、か。
「それはもういいとして……また厄介事になったな」
幽霊は『索敵』スキルに引っ掛からない、今これはかなり大問題だ。
撃退するのは簡単だが、早期発見が難しいのは不意打ちを喰らいやすい。
そうなれば危険なのは俺よりもイセットだ、一定以上ダメージが不確定である以上近付ける危険が大き過ぎる。
「『光魔法』でのセンサーをもっと細かく出来るいいんだけど……材料がもうない。これはあまりやりたくなかった致し方ない、あれをやるか」
実を言うと『光魔法』をセンサー代わりに出来ると判明した時に、もう1つアイディアはあった。
が、見た目がこう、相当アレな事になりそうだったから、今の今まで記憶の奥底に沈めて置いてたが……そんなこと言ってる場合ではない。
『光魔法』での淡い光で隠れ家全面に満たす状態で『固定』、ただこれは全面を照らす都合上体全体でやるのが必須。
つまりは不動発光人間の出来上がりである、傍から見るとかなり異様な絵面になっている事だろうなぁ……。
でもこれで幽霊が背後の壁をすり抜けて来ても先に発見出来る。
だからちょっと恥ずかしくても我慢だ、我慢。
イセットはこれより辛いことも嫌な素振り1つもせず、やってくれたんだからこれくらい大したことない。
今の俺は照明、だから光っていても何も恥ずかしくない。
……それから4時間、朝日が出るまで俺はブツブツと自己暗示をかけながらもずっと照明器具になっていた。
♢ ♦ ♢
『蛹化 残り時間7:44』
「やっと……明けた。長かったぁ~」
4時間後、朝日が昇り夜が明けた頃、俺はすっかり憔悴し切っていた。
原因は徹夜に慣れてないのもあったが、あれからも幽霊の襲撃は続いたのが一番の原因だと思う。
倒しても倒してもひっきりなしにふよふよとひとん家に上がりこみやがってからに……MPを回復しようと少しスキルを切れば直ぐにくるものだったから本当に休む間もなかったから疲れも倍増だ。
ああ、それと何故幽霊共が俺達を執拗に狙うのかも判明した。
「まさか、ゴブリンが化けて出るとは……」
やけに数が多いと思ったら、どうも昨夜に襲って来た幽霊は全部この元・ゴブリン住居のやつらだったみたいだ。
そりゃ俺達を……というかイセットをつけ狙うわな、あんな派手に殺りまわっていたし……。
ただ、幽霊が多いお陰はと言っていいのか分からないが野生の魔物は隠れ家に殆ど寄り付かなかった。
気持ちは分かる、誰でも幽霊がうようよしてる地に、わざわざ踏み入りたいとは思わないだろうしな。
何にしろ日が昇ると同時に幽霊はどっかに消えたみたいだからこれで一息付ける。
「つってもまだ油断は出来ないが、な」
イセットの『蛹化』はまだ8時間近くも残っている。
この残り時間が過ぎるまではまったくもって安心は出来ない。
「このまま何事もなく終わればいいけど」
内心でそれはないだろうなぁ、と思いながら脆い期待を口にする。
そうやって1時間ぐらい過ぎて昨夜の疲労でうとうとし始めた頃、ついに襲撃が来た。
『索敵』に反応はないが、『光魔法』にはあったので飛んで来たのを今度こそ回避、この流れも昨夜の幽霊ラッシュですっかりなれたものだ。
が、ここで連続攻撃が来てまた回避……したところで狙い澄ました位置に透明な短剣が腕に当たり透過して、そこから不快感とは桁違いの悍ましい感覚が伝う。
「がはぁッ!? こ、れは……!」
『光魔法』で直ぐ治療を施し数日前の記憶を呼び覚ます。
覚えている、忘れる訳がない、あの忍び寄る刃を。
ああ、そうだなあの幽霊がここで死んだゴブリンの亡霊ならお前が出ない訳ねーよな。
「ひょろ長ァ……!」
「――――……ィ」
どうも俺はつくづくゴブリンってのに因縁があると思わざる得ない瞬間だった。
まさかこいつが幽霊になるとは、そうじゃなくても見つけ辛いってのに『索敵』に引っ掛からない能力まで身に付けた事になる。
ここでもう前よりも苦戦する未来がか確定したと言える
だが、どうやらまだ俺の不運は尽きていなかったらしい。
「ブヒィィィィィ――!?!」
「この鳴き声……まさか!」
隠れ家から顔を出して森の影が濃く落ちたとこに視線を向けると、そこには案の定黒い体毛の巨大猪が影から出て来る最中だった。
影には透明な短剣が刺さっているのを見るに、また奇襲しようとしてひょろ長ゴブリン幽霊に発覚したのだろう。
「えーと、俺もしかしてこいつら同時に相手しないとだめ、なのか」
「――――……」
「ブルルゥ~……」
―― 朝日が昇り盛りの森林で絶望的なデスマッチの幕が切って落とされる。
・魔霧塊
魔物を生成されう”魔素溜まり”周辺に死亡してAIがシステムに回収される前に組み込まれれば生まれる魔物。
生前スキルもある程度受け継がれるが全部ではない。
蘇生碑石を利用して人間種が意図的この現象を起こせば……?




