破滅の幕引きと鏡面の鱗
また誤字も多いんだろうなぁ……
高空落下からストレートが半端犬ゴブリンのボス個体の頭部に炸裂、その反動を利用してそのボスとの距離をあける。
いくら『風魔法』での滑空を経たとは言え、あの高度から拳撃にはこっちの手にも負荷がかかる、下手すれば折れていただろう。
が、そこは既に対策済みだ。
「亀の甲羅と革の手袋をイセットの糸で固定しただけだが……しっかり機能はしてるみたいだな」
言い忘れていたが現在俺の装備は一新されている。
この前までは古びた上着やズボンを着てるだけだったが、今はその上に手直しした革鎧を着込み拳にはさっき言った手の甲と拳骨に亀の甲羅で補強したグローブを着用している状態だ。
ただ、裁縫や皮革技術がある訳ではないので、多少……その、ホラー映画に出てそうな、継ぎ接ぎの不気味なぬいぐるみ人形っぽさがあるが……機能には問題ないのでそこには目を瞑って欲しい。
それよりも、さっきから倒れた半端犬ゴブリンボスが一向に起き上がらないな……。
「まさか、今ので落ちたか?」
もしやと思い近寄って確認……
「ガルァーッ!!」
「っと、やっぱ起きてるんじゃんか」
……しようとした瞬間、爪を振り上げてきた。
こやつ、気絶してるフリとは卑怯な真似をしやがって。
ん? お前が言うなって……こっちは数も地力も劣ってるんだからこれぐらいは当然なのだよ。
俺はしっかり生存競争というものを学習したまで、やましい事など何一つない!
「ま、そういう訳でそろそろ本格的に始めるとするか、ねッ!」
「グルゥ!」
吼える犬ゴブリンボスの懐に飛び込むように軽いパンチで牽制。
これを難なく躱す犬ゴブリンボス。
明らかに部下の半端犬ゴブリンより反応速度がいい……見た目も他と違い、犬とゴブリンの特徴が違和感なく均衡が取れている分、体幹もしっかりしているのかもしれない。
だが……
「グゥ……グラァッ!!」
「どうした、お星様でも見えてるのか!」
流石に高空から頭直撃は効いたのか、ふらつく。
その隙を逃す手はないと、俺も拳と魔法を、若しくは合せてジェットパンチをと交えて絶え間なく攻め続ける。
ここまでボスがピンチだと他の半端犬ゴブリンが寄ってきそうなものだが、それはない。
未だに起きている魔法の爆発により混乱してるのもそうだが、その中でイセットが大暴れしていてこっちにかまけてる余裕が無いのも主な理由だ。
尻目にイセットの方を覗き見ると半端犬ゴブリンの頭蓋が潰れたり、胴が両断されてたりと中々にして凄惨な光景が繰り広げられている。
高速回転で剛柔自在な砲弾、偶に大斬撃……糸の斬撃を覚えてから戦術のエグさに拍車が掛かってきたなぁ……。
「はぁッ!」
「グラァ……ッ!?」
拳が鳩尾に命中、犬ゴブリンボスが苦悶の呻きを漏らす。
相手は増していくダメージで未だ回復仕切れないのかふらつきが残っている。
今ところ俺が有利な状況、このまま押し切れれば勝利は目前……が、相手もそんな安々と殺られるつもりは毛頭ないらしい遂に”切り札”を使って来た。
「グラカァァAAAAAAーッ!!!」
「どわぁ!? な、何だ、これ……耳が、それと体が固まって……」
犬ゴブリンボスの全身の筋肉が膨張し、体毛は伸びて、体全体からは茶色いオーラが溢れる。
鼓膜が破れそうな咆哮を叫び、その音に身体が前触れもなく硬直する。
何だ、この不自然な硬直は……何かのスキル、か?
「ッ! まずッ!?」
「クルァAAAーッ!!」
いつもの『風魔法』での緊急回避、が間に合わず肩に爪が掠める。
「くぅッ! 掠っただけ……にしては結構切られたな」
目測ではここまでじゃなかったはず、見た目より爪が長い? あのオーラせいか……。
「クラァAAAAAAAーッ!?!!」
「考える、暇も なしかッ!」
爪、爪、牙、爪、……と、犬ゴブリンボスの猛攻が絶え間なく続く。
しかも魔法まで並行してるのか、地面が弾けて土の弾丸が飛んでくる始末。
でも、攻撃に精度がない……いや、理性がないのか? そう言えば今の吠え声にも狂気じみたものを感じる。
と、なると理性を無くす代わりに自身を強化するスキルってとこか。
そのお陰で今のとこ躱すのは何とかなっているが、結構ぎりぎりなのでそれもいつ決壊するか分からない。
それにあれをまともに食らうと俺では一発でお陀仏だ。
「早いとこ決着をつけるしかない……かッ!」
「クルァAAAーッ!?」
『光魔法』で閃光をやつの顔に叩きつけ、一瞬だけ目を潰す。
理性がないからか、こう搦め手は効き目抜群だな。
なら、もう一丁追加で……懐から糸の塊ようなものを投げ網の如く犬ゴブリンボスに投げつけ、絡ませると共に後方へ大きく飛び退く。
呆気なく網に捕まりはするが腕力だけでブチブチとイセット製の糸が引き千切られている……が、元から本命は捕縛ではない。
俺の体から伸びている一本の蜘蛛糸……そこに繋がっている糸網に付着した小石ぐらいの魔石へと思いっきり魔力を流し込む。
「爆ぜろ……!」
パァ――――――――ンッ!!!
「――――――ッッ!?!!?」
「くぅッ!?」
凄まじい爆音が耳朶を打ち、ここまで2,3メートルは離れたのに関わらずに俺のいるとこまで爆風が吹き抜けてくる。
無属性で衝撃波を放つだけなので熱かったりしないが……キーンと耳鳴りがしてちょっとぐらっときた……。
「それで敵は……。あ、泡吹いてる……」
魔石の位置、頭の近くだったからなぁ……脳にでも直撃したんだろう。
ひょろ長ゴブリンの魔石……だった小石ぐらいになっただけで、なんつー威力の違い。
しかもこれで無属性なのか……空歩猿のは一体どれだけの威力が出るんだ、これ。
「でも、まだ息はある……ふぅ……ッ、はぁ!!」
炎の爪で頭蓋をかち割り、今度こそ確実にトドメを刺す。
これで俺の役割は全うした……後はやる事と言えばイセットを手伝って群れの殲滅、だけど……。
(ゴロゴロ、ゴロゴロ、ゴロゴロゴロッ!!)
「「キャイ~ン!?」」「「「くぅー……」」」
「「キャワンッッ!?!」」
イセットジェノサイド再び……何たるデジャヴ感。
潰れて、切り払われ、血潮の飛沫を撒く殺戮球体、それから逃げまとい恐怖と絶望に吠える半端犬ゴブリン。
まさしく阿鼻叫喚の地獄絵図、それと新スキルと戦士になった影響か全体的にパワフルになった気がする。
あ、今も一匹体当たりを食らったのが空を風に吹かれたボロ雑巾のように舞っていった。
正直、俺いる? って疑問を抱くレベルの蹂躙っぷりである。
極めつけには逃げようしたのも不発で残った魔石を踏んで自爆、なんて光景もそこら中で繰り広げられている。
不発は……多分俺が流した魔力がぎり足りなかったのだろう。
で、その不安定なのを踏んで刺激、パァーンって訳だ。
魔石の新しい可能性を見付けたはいいが……マジでやる事ないぞ、これ?
「黙って見てるのもあれだし……怪我直して適当なの潰すか。」
(ゴロゴローッ!!)
「「「キャイーンッ!?!」」」
「……必要なさそうだけど」
……何となく釈然としないまま、俺もイセットが展開中の殲滅の輪に加わった。
♢ ♦ ♢
それから数時間後、『偽装』とイセットの糸で簡易的だけど隠れ家のような仮拠点を作りそこに籠もっていた。
無論、だた休んでた訳じゃない。
今も半端犬ゴブリンの死体を解体している真っ最中……なのだが、これがどうも上手くいかない。
「ここにもない……。ここも、ない……むむぅ……」
まあ、解体とは言ったものの技術もへったくれないから、ただ死体をグチャグチャにバラしてるだけになっているが。
そうまでしても目標の物に……魔石は中々にして見付からない。
米粒かってサイズだからな……そういや地面に落ちてるのを回収する時も苦労したなぁ。
特に茶色は偶に地面と同化するし、透明は単純に見えないしで、もう……ん?
「お、おお! やっと見つかったぁー! 色は……透明色、無属性の魔石だな」
(ゴロゴロ?)
良かったちゃんと出できて、もし出なかったら意味もなく死体を弄ぶだけのヤバい人になるとこだった。
……と、思った矢先に何かに塵みたいなものを出しながら体が消えていく半端犬ゴブリン目に入った。
「くそぅ……こいつら消える方だったぁ!!」
頑張ってバラしたのに全部無駄になったじゃんか! っていうかこれだと俺がただの危ない人になっちゃうじゃんか!!
……い、いや、大丈夫だ……知らなかったしセーフだ、セーフ……次から気を付ければいいんだ、うん。
「ひんぎゃあぁぁァァー!?」
「うわ!? な、何だこの叫び声」
(ゴ、ゴロゴロ!?)
そうやって自分を強引に納得させている所に、不意に森中へと木霊するかという音量の叫び声にビクッと身を竦ませ驚く俺とイセット。
さっきまでこの周辺には誰もいなかったはず……新手の敵? それとも何者かが争ってる?
それにこの叫び声は人のものような気が……もしかして、俺と同じく放浪してるプレイヤー?
……ここで考えてるだけじゃ埒が明かないか。
「それにプレイヤーなら、ぜひコンタクトを取りたい」
何せ俺はこのゲームWCOの情報が足りな過ぎる、もし被験者だとしても締め切り寸前で実験に飛び込んだ俺よりは情報を持ってるはず。
「ちょっと外を覗いてくる。イセットはここで待機」
(ゴロゴロ……)
「そんな心配しなくても無理はしないから平気だって。それに『隠密』と『偽装』隠れるのは一人の方が都合が良いの」
不安そうにゴロゴロ寄って来たイセットを宥め、外へ踏み出す。
『偽装』スキルをフル活用して景色に溶け込めそうな物陰や茂みを伝いながら叫び声がした方向に向かう。
その近くまで来たと思った頃、枝の1つに引っ掛かっている見覚えありの布切れ発見。
「俺の服と同じやつだ……。やっぱりここにプレイヤー……くっ、眩しッ!?」
「シュルゥー」
空気が抜けるような音と突如の目に刺さる光と共にやつは姿を表した。
一見それはデカいだけの蜥蜴のようにも映る、大きさ比較するとコモドドラゴンくらいはあるだろう。
そこは問題ない……が、その鱗は普通のそれとは逸脱していた。
「鱗が風景を映してる……鏡、なのか?」
今も周りの景色を映し出し太陽光を乱反射しているその鱗が毛羽立つようにワサワサと蠢くかと思えば――
―― ギョロリと、感情の読めない爬虫類特有の瞳がこちらを振り向いた。
次は掲示板回なる予定です。
鏡面蜥蜴に無残にも散らされたプレイヤーの正体についてもありますので、気になるなら次回をまて!




