破滅は糸を手繰り寄せて
昨日なんとブクマ3人も増えたのでびっくりしました。
こんな誤字も多い拙い文章を読んて頂きありがとうございます!
夕方、俺とイセットはやっとこ色々な疲れ抜けてから、天職祭壇に再び訪れた。
日が沈むまでここに留まるの危ないのでイセットには早速祭壇に乗ってもらい就職して貰う事に。
《天職祭壇への接続を確認しました》
《条件を満たしているため、祭壇が起動します》
《戦士の星石が光を放ち出した……》
《魔法士の星石が光を放ち出した……》
《密偵の星石が光を放ち出した……》
《光っている星石の内1つを手に触れると就職が開始されます》
《戦士の星石に触れました》
《星石に宿った輝きが獅子座を織り成していく……》
《――天職光星を開始します》
夕日の茜色の陽光と星石の白色の輝きが混ざり合い、黄金色のが辺りの空間に満ち溢れる。
イセットの体にはその光が幾筋もの照らされて、体の奥深くの”ナニカ”が作り変えられいく。
ただ傍から眺めているだけなのに不思議とそれがしっかり伝わってくる。
「これは……イセットが俺の従魔だから? 悪い気はしない、というか寧ろ心地良いくらいだから構わないちゃ構わないけど……。何とも不思議な感覚だなぁ……」
そのまま暫くこの一体感と心地良い温もりを堪能しながら、目の前の光線のイルミネーションをぼーと眺めていると、唐突に光が掻き消え夜の帳が落ちると共に終りを告げる。
「あ、終わったか……っとと、惚けてる場合じゃない。早くログ確認しないと」
《……全行程が終了しました》
《あなたに遍く星々の加護があらんことを》
《称号『戦士』を獲得しました》
《スキル『増力LV1』を習得しました》
《スキル『防御LV1』を習得しました》
ログを見るに特に問題なく無事に終了したようだ。
貰ったスキルは『増力』が単純に筋力を上げる、『防御』が防御行動に動作補正……という効果の代物らしい。
これで俺たちの戦力は一層高まった、だがまだ油断は出来ない。
昼見たような厄介な能力を持つ敵も居れば、単に俺たちより遥かに強い敵もいる。
特にあの黒猪に勝てるビジョンがまるで湧かないのが最大の問題だ。
隠れ家の防衛も目立ち辛くちょっと頑丈なだけなので、まだまだ不安が残る。
「解決すべき問題が山積みだな……。ふぁ~、まずっ……眠くなって来た……」
(ゴロゴロ~……)
イセットも眠気が襲って来たのか、ゴロゴロに切れなくふらふらだ。
流石にそろそろ無理に保ってた体力も限界か……だが、まだ最後にひと仕事残っている。
なのでまだ眠る訳にはいかない。
パーンッ!!
軽快な音を鳴らして頬を叩き、一時的に眠気を吹き飛ばす。
「よし、イセット、これをやり終えたら、遂に眠れる。気張って行くぞ!」
(ゴ、ゴロゴロ……ッ!!)
ふけてゆく夜空に疲れとも気迫とも取れる気合の声が溶けていった……。
♢ ♦ ♢
「ガウ、ガルラァァー!?」
翌日早朝、俺とイセットは喧しい犬のような鳴き声で目が覚める。
「んぁ……うっさいなぁ…………。はッ! かかったのか!?」
まだぼんやりとした頭で状況を飲み込めず、二度寝しそうになったとこでこの鳴き声の原因を思い出して飛び起き外へ急行。
今も煩く鳴き声を上げる方へと向かってみると、そこにはまるで身動きがとれないように空中をジタバタしながら暴れる半端犬ゴブリンが一匹がいた。
「おーい、イセットもこっち来てみろよ! 一匹だけどバッチリ罠に引っ掛かってるんだよー!」
(ゴロ……。ゴロゴロー!)
俺が呼び掛けにまだ夢現ながらも寄って来たイセットも見事に罠にかかった半端犬ゴブリンを見て驚く。
それを満足そうに眺めた後、感慨深気に呟く。
「いやー、眠い状態で作った急ごしらえの罠だったから心配してたけど……やれば何とかなるもんだなぁ」
(ゴロゴロ~!)
実際にどんな調子だったか把握するため昨日罠を設置した付近を除きこむ。
一見何も無いように映る木々の間をよく目を凝らして見ると細い糸が張り巡らせてあるのが分かる。
その糸たちは何かに荒らされたかのように草むらや、木枝などに乱雑に散らばっていた。
「うーむ……。この様子だと、やっぱ殆どは機能してなかったか。一匹でも掛かったのは運が良かったか、あの一匹が特に間抜けだったのどちら、か」
設置した罠は別に難しいものでも珍しいのでもない。
ただ『偽装』で見つけ辛い位置にイセットの糸を上手い具合に張り巡らせて、敵を磔にするというだけの簡単な代物だ。
浮遊石戦の時のやつをもっと広範囲にした物と言えばわかり易かろう。
「ここのは結び目が解かれてる……。ここのは他の枝が干渉して作動すらしてない……」
とは言っても初心者が手探りで、しかも朦朧状態で作ったからか所々の反省点や修繕点が多数見受けられる。
本当これでよくたった一匹とはいえ捕まったな……。
今からでも反省を活かして作り直し……と行きたいがその前にまずは。
「ガルルゥ……ッ!」
「こいつを処理しないと、なっ!!」
「キャイ~ン!? ……ぐぅ」
糸を雁字搦めにされ、身動きが取れず唸っていた半端犬ゴブリンにアッパーをお見舞いしてやる。
情けない鳴き声を上げてぐったりと宙吊りのまま沈黙。
が、まだ息はあるようで浅く呼吸音が耳に入る。
「……気絶しただけだな。ちょっと入りが浅かったか? なら今度こそトドメを……いや、それよりも……ふふふ、良い事思いついた」
(ゴロゴロ?)
「や、イセット待った、まだ殺しちゃ駄目。……こいつには大事な繋ぎ糸になってもらう」
足跡を見るにこいつら、どうやらご団体で家にいらしてたようなのに残ったのはこの一匹のみ……それはここが少しでも危険と判断した時点で仲間を置いて即逃げ帰ったと言う事。
まぁ、良く言えば慎重、悪く言えば臆病だが組織としては間違っていないのだろう。
だが、薄情な連中だ、帰る時は仲間なら皆一緒にするべきだろうに……と俺は思う。
「なのでこいつは返してやろう。ま、ちょっと見辛い首輪付きでだけど、な」
あいつらせいで昨日は散々な目にあったからな……さぁて、たっぷり準備を整えてお礼参りといくとしようか……!
♢ ♦ ♢
陽もすっかり中天に登り強烈な日差しが照り付ける時間帯になった頃。
あるゴブリン集落では体に犬のような特徴を備えた変わった姿のゴブリン達が一箇所に集結し、異様な熱気と喧騒を醸し出していた。
「ガルル……」「ガウガウ」
「ワフゥー」「「ワンルゥ~!!」」
「ワオォォォンーッ!!」
が、それを吹き飛ばすような雄々しい咆哮にすべての犬ゴブリンが静まり返り、一方向へと視線を収束させる。
そこには高台があり、その上には今まさしく咆哮を上げた犬ゴブリンのボスが威風堂々した佇まいで鎮座していた。
ボスというだけあってその姿形も他の犬ゴブリンとは異なり不自然な”歪さ”は感じられない。
人に近いゴブリン肉体を軸として効率よく理想的に犬の肉体を組み込んだ、通常犬ゴブリンとは違う完成された一つの新種族そのものだった。
その種族の名は邪犬妖精、獣合邪妖精の王たる存在である。
「ガウガウ、グラァガラァ。ワフワァルァ!!」
『ワオォォォォォォォォォーンッ!!!』
森から100を超える野良犬の群れを退け、我々をその圧倒的な力で焼き殺す熊の王と、その残虐な気性と頭頂を征する風圧を振り撒く猿の王が突然として姿を消した。
残るは深き闇から襲い来る猪の王のみ、その首を討ち取り今こそ森の覇権を手にする時!
それを示し、引いては部下を鼓舞するため、そしてこれからの繁栄を識らしめるために王たる邪犬妖精は再び咆哮を嘶かせ……
「ワォ……」
パァァ――――――ン!
……ようとした瞬間それは起きた。
パァァーン! ドドーン!! ガァ――ン!?
「ワフゥ!?」「キャイン!?」
最初一回だけでなく立て続けに響く爆発音に集落全体が混乱し、轟く。
それを諌めるために邪犬妖精が呼びかけようした刹那、何かに細い物体が視界を過り……頭に天地が揺らぐような衝撃が襲う。
「キャウッ!?」
「遂にここまで来てやったぞ、犬っころ共がァァー!!」
―― それは繁栄ではなく破滅を識らしめる叫びであった。




