奇々怪々! 楽星の森
「よっと、イセットそっち行ったぞ!」
(ゴロゴロ!)
自在に宙へ浮き飛び回る謎の生物?との戦闘は以外にも長引いた。
正直この宙に浮く石……便宜上で浮遊石と名付けたこの謎の生物だが……あまり強くはない。
硬度も俺の拳や『硬化』したイセットの体当たりで十分に壊せるレベルしかない。
それにも関わらず戦いが長引いている理由は……その機動力と身軽さにある。
「すばしっこいし小さいから捉え辛い……」
(ゴロゴロ……)
それだけでなく軽過ぎるからか宙に浮ている状態だと衝撃が逃げてしまうのも問題だ。
魔法で範囲攻撃だと同じ結果なるだけ、だからって威力重視で範囲を絞ると俺の腕だとあのスピードには当たらない。
(フワフワ~)
浮遊石もこちらが決定打を決める手段ないと悟ったのか悠々自適と飛び回りながら煽ってくる。
が、それを見て怒りが湧いたりはしない、何故なら……
(フワフ……ビタッ!?)
「チェックメイトだ」
(ゴロゴロ)
……やつは既に詰んでいるのだから。
突如に空中に磔にされた浮遊石は体を動かそうと必死に暴れまわるがそれは悪手でしかない、自分でさらに雁字搦めにしてるだけだ。
何をやったのか? とても簡単、イセットの『糸生成』の粘着糸を俺が『偽装』が教える背景に溶け込める位置を指示して、そこに張ってもらった……それだけだ。
俺とイセットだってただ手をこまねいていた訳ではない、と言うこと。
「これでお終い、っと!」
糸で固定されている浮遊石に片手を添えてもう一方を拳にして、打ち込む。
パカッ……という音を響かせて浮遊石が割れて『索敵』からの反応がブツンと切れる。
「死んだ。ってこといいような?」
(ゴロゴロ)
掌にある浮遊石の破片を除き見る。
暴れる気配はないが……何か上に引っ張れられてる感覚がするな。
試しに身構えてから破片を手放す。
するとそのまま重力に従い地に落ちる……事なく一定の高さまで浮いた。
「死んでも浮くのかよ……」
死んでも浮かばれない、ってのはなさそうな種族だな……なんて。
まぁ、冗談はいいとして、これだと保管困るな……勝手に浮いてどっかに飛んで行っちゃいそうだ。
でも捨てるのもな、見てて面白いし絶対に何かにつかえそう何だよなぁ。
(ゴロゴロ~)
「ん?」
と、未練がましく浮遊石の破片を睨んでいたらイセットがゴロゴロ突っついてこっち見てアピール。
今度は何だろと思ってイセットの方を向くと、いつの間に真っ白な袋みたいなもの持っていてそれを俺に渡してくる。
「これ、イセットが作ったのか?」
(ゴロゴロ!)
糸の配置を見るに編み込みではない、だがちゃんと袋の形をしてるし機能もしそうだ。
これも糸の隙間を開けてみると粘着糸が強糸に挟まっていた。
面状に広げた2つの強糸の束を粘着糸でお互いを貼っ付けて布っぽくして袋状にしたのか。
なんつう器用な真似を……うちの従魔は相変わらず優秀過ぎる。
「ありがとうイセット。あ、早速で悪いけどちょっと追加バーツが欲しいかな」
(ゴロゴロ?)
でも本当にただの袋のだけなのでこのままじゃ手が一つ塞がってしまう。
だからイセットに頼み込んで輪っか状ベルトを2つ付けてリュックサックみたく背負えるようにして戦闘に邪魔ならないようにしてもらう。
こうして見るとイセットがさながら裁縫師のようで……そこではっと気づく。
「あー! そう言えばイセットを天職祭壇につれてくの忘れてた!?」
改装の辺りから完全に思考が生活の充実に流れてからうっかりしていた。
幸い拠点を離れてそんな経ってないし今からでも戻って……。
(ゴロゴロ~!)
「え、ちょ、イセット。何で押すんだ!?」
……行こうとしたが何故かイセットに本来の道に押し戻される。
「えーと、もしかして自分のことは後でいいってこと?」
(ゴロゴロ~)
あってるらしい、肯定のゴロゴロだ。
どうやらイセットに気を遣わせたみたいだな……。
正直一時でも早く戦力を増強したい気持ちはあるが……ま、ここでイセットと押し問答で時間を浪費になるより、さっさと取るもの取って帰ってきた方がマシか。
「よーし、それならイセットここからは急ぎ足で行くぞ!」
(ゴロゴロンー!)
♢ ♦ ♢
元・空歩猿の縄張りにへと行くべく目印に従い森を練り歩くこと体感数時間した頃。
目的地に着いた俺たちはクタクタになっていた。
「ふはぁー、やっと着いた。そんなに遠くでもないのにえらい時間かかったな……」
(ゴロゴロー……)
俺たちが何故こんなに疲れたのか?
それは昨日とは一変したこの森の状況にある。
まず浮遊石を倒してから進んで暫くして、また厄介な魔物達と遭遇、そのまま戦闘になった。
最初は外見は甲羅が自然侵食された亀で、甲羅に植えている蔓をワイヤーアクションみたく使ったり鞭のように振り回しながら襲ってくる戦法を駆使してきた。
それに鞭の猛攻掻い潜り、アクロバティックな蔓移動に追い付いても甲羅に籠もり耐えながら蔓で距離をあけるのは相当厄介だった。
だが、この状況はイセットの新技により一転した。
ここでちょっと今回分かった『糸生成』と『硬化』の仕様を語るとしよう。
『糸生成』での糸はイセットの場合口から出てきてこれをびっしりはい揃っている鋭く小さな牙で千切る訳だが……ここで糸を千切らず口から伸びたままにしとくと体の一部と判断されるようだ。
そして『硬化』は自身の体を硬く変化させるスキル。
その2つを組み合わせまるで極細の鋼鉄ワイヤーでもあるかのように亀の蔓を全部の刈り取ったのだ。
最後には『風魔法』を纏わせて切れ味を増させるなどの芸当までしてみせた。
攻撃手段をなくした亀は甲羅で籠城作戦に切り変えたが、これに関しては俺が炎の爪を押し当てたまま、魔法の多段ヒットで無理矢理押し込んで仕留める事が出来たから特に問題なかった。
次やりあったのが『魔術』を扱う巨大蜘蛛。
巨大蜘蛛が糸で設置した魔術陣の罠を踏んだのがきっかけで開戦した形だ。
因みに『魔術』は魔法系であるが通常の魔法とは別物らしい。
理由は擬似感システムが使われていなくて、”魔紋”というもののキーコードでしかないからとか研究者たちに言われたが、難しい単語が飛び混じっていたので右から左へ状態で……要はあんまし覚えてない。
設置型魔術陣で十字砲火された時はもっと真面目に聞いとけ、と過去の自分をぶん殴りたくなったものだ。
魔術陣は魔力さえ流せば自動で魔法を発射してくれるらしく、常に4~5以上の魔弾が同時に襲い掛かって来た。
あの時は生きた心地がしなかったなぁ……実際に『抗魔』が無かったら即死だっただろう。
で、どうしかって言うと……こっちでもイセットはここでも大活躍だった、この一言に尽きる。
魔術陣てのはかなり精密な回路みたいなものらしく、魔力を溜めたイセットの糸が一画書くだけでも乱れるようだ。
それを『風魔法』を纏って攻撃して気付き、イセットが片っ端から陣を書き換えていって何とか持ち直す。
その後は……まぁ、完全に泥試合と化したけどボロボロになりながら何とか勝ったって感じだな。
自爆覚悟で自分の体に魔術陣を書き始めた時は肝が冷えたが、それも『抗魔』が仕事してくれたお蔭で瀕死で済んだわ、こんちくしょうー。
最後に一番面倒かったやつで、もぞもぞ動く虫の卵塊の魔物とも戦った。
……いや、あれを虫卵塊と戦ったと称して良いのか分からないなけど。
こいつは通常時は卵塊状で這いずり回り、敵が現ると分裂する性質があるようで感知範囲に入った途端に分裂して散り散りになって隠れた。
それだけなら無視して進めば良かったのだが、奴らは前のイセットと同系統の種族ってのがここでは問題なる。
そう、こいつらはしっかり特性『喰香』を保持しているのだ、それも分裂した個体全部が……。
後は言うまでも無く森中から集った魔物との大混戦に突入、慌てて分裂した卵塊共を探す羽目になった。
元凶である卵塊を潰すのにもう少し手こずってたらヤバかった、『索敵』スキルには感謝だな。
あーそれと一体潰したら潰したで別の個体から再生もするから一箇所に集めて一気に仕留めるのも地味に面倒かったのも記憶に残っている。
と、このようにこれまで見たことも無いような奇っ怪な生物が続々と出没するようになった訳だ。
というか昨日まで普通に見かけてた動物や魔物とかは逆に姿を消した。
明らかに異常事態だが原因不明のままだ。
総評。
森の生態系おかしくなった。
それと亀はともかく、もう虫卵塊も蜘蛛も二度と相手したくねー……。
「よいっ、しょ! これだけあれば当分は持つだろ。イセットそろそろ帰るぞ! あんまり長居したらまた変なのが寄ってきそうだし出来るだけ急がないと」
(ゴロゴロ~)
糸を使い過ぎて空腹になったのか、のんびり木の葉っぱを齧っていたイセットを呼び戻す。
よし、食料も十分に得たしこれでもう帰って隠れ家に潜んで休むだけ……
「「グルゥー!」」
……ってのはまだ無理そうだ。
「あーもう! 今度はどこのどいつだー!!」
(ゴロゴロ!!)
疲れでかなりストレスが溜まっている状態だったようで俺とイセットは何かが振り切れたようにいきり立つ。
『索敵』に告げる反応を辿り新手に視界に収め、つい首を捻る。
だって、そこにいたのは……
「えと。ゴブリン、か? 手足ふさふさしてるけど」
(ゴロ、ゴロ?)
……妙に犬顔な、緑肌を持ち、手足だけが毛皮に包まれた奇っ怪なゴブリンであったのだから。
本当何がどうなってるんだ、この森は……。
・浮遊石
読んで字のごとく浮き回る石の魔獣。
大型に進化した個体は手懐けると空中要塞が建てれるから結構人気だったりする。
・植侵亀
植物魔物に侵食された状態で進化した亀で、本体は亀本体ではなく甲羅に根下ろした植物魔物の根。
こっちは大型進化すると独自の生態系を甲羅上に構築することもしばしば。
・魔紋蜘蛛
WCO一ウザいと名高い『魔術』を巧みに扱う蜘蛛型魔獣。
本能のままに蜘蛛の巣(魔術陣罠付き)をばら撒き、それに踏み入った者を執拗に狙う。
魔術陣での面制圧がキツイ、糸はいい素材だけど燃やす以外の対応が手間、苦労して討伐しても体内に糸はないから割に合わない。
などの理由で皆にこよなく嫌がれている
・魔虫卵塊
バグエッグから特殊な進化してを経てなる卵塊の魔物。
特性『喰香』とスキル『無臭液』を駆使して外敵を狩る。
『喰香』で大量の動物、魔物を惹きつけてから敵に擦り付けて、『無臭液』で自身の匂いを消して隠れた後敵が弱るとトドメだけとって去る。
というのが常套手段のかなり狡猾な魔物。




