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エデン・マキナ ~我らは機械仕掛けの楽園にて謳う~  作者: モッコム
第1章 楽園開場
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邪妖精の暗殺者

森のゴブリンが集い、積み上げて来たゴブリンの安住の地……今そこは阿鼻叫喚に陥っていた。

突如として採伐により林となっていた森の付近に強烈な光が溢れ出したかと思うと、光により生じた影から闇のように黒い体毛に覆われた巨大な猪が襲来してきたのだ。

木を組み上げただけの簡易な柵ではその巨体を止めること叶わず、無残にも破壊されゴブリンの安住の地が蹂躪されていく。

それを影から眺める者が一人……


「まぁ、俺なんだけど。それにしても……想像してたより酷いな」


ゴブリン共の住処では今まさしく蹂躙、としか表現しようがない光景が繰り広げられていた。

黒猪が突進し立ち塞がるゴブリンをはね飛ばし、踏みつけ、天に舞わせ、挽き肉にしていく。

無論ゴブリンもそれに抵抗しようとするが、彼我の戦力差は圧倒的だった。

棍棒、剣などの接近武器は間合いまで近付いた頃には躱わせず、槍、弓などの中、遠距離武器での死角からの攻撃も自分の影に浮き沈みしながらほぼ完璧に躱している。


てか、やっぱり自分の影にも潜れるのかよ……なんで俺の時にしなかったんだ? 今も建物の影だけだと巨体が潜れないので仕方なく使ったみたいな印象を受ける。

他の影に頼るより今みたいに自分のを使ったほうが便利なはずなのに……。


「駄目だ、分からない……。まぁ、作戦が上手くいったから別に構わないか。今更だし」


ある程度孤立している影に黒猪を誘い込み影をゴブリンの住処へ落として同士討ちさせる。


作戦と言ってもこれぐらいのものだったのだが、とにかく上手くいって良かった~。

かなり不安要素が多い作戦だったから、正直成功するかについては完全に賭けだったからな。


まず閃光で影がゴブリンの住処までちゃんと伸びるのか? 

伸び切らなかった場合黒猪は俺を方を向いたままなのか?

そもそもそれで本当に飛び出す地点が変わるのか?

などなど……。


ま、結果として全て杞憂だった訳だが。

どうやら事前の予想通り、影から飛び出そうとしてる瞬間に逆光で影の位置が反転すれば出る時の向きも反転するようだ。

そしてその向きが変わって矛先が向けれた……いや、させたのがゴブリンの住処の方角で今の惨状が起きている。


「これで両方力尽きてくれればこっちとしては万々歳なんだが……難しそうかなぁ」


何せ先程言ったように黒猪が強過ぎて、ゴブリンがいくら束になってもまるで歯が立たない。

建物に籠城しても無残にも破壊されるだけなので意味がない。

このままじゃ瞬く間に全滅して、また俺が狙われそうだ。


どうする、今のうちに逃げるか? いやでもそれだと残った空き巣を貰う計画がご破算になる。

え、卑怯、卑劣だって?

そんなのもう今更だし、逃げ回ってるだけで瀕死になるやつに選び好みしてる余裕なんてある訳ないだろうが!

俺はここに来て学んだのだ正々堂々とか平等とか、そんなもんは自分に余裕がある時だからこそ言えるのだって。

いや、俺は現実でも不公平だったか、ふふふ……


……って、いかんいかん何かの闇に落ちてる場合じゃない。

今でこそ必死に地べたを這いずって潜めた茂みに身を隠せているが、こんなちゃちな隠密いつ発見されることやら。

それに黒猪の方は多分だが俺の居場所を正確に把握してる可能性がある。

考察があっているなら黒猪はかなり高レベルの索敵スキルを有してるはずなのだから。

それに豚って鼻が良いって言うしな、いや猪の鼻が豚と一緒なのか知らないから断定は出来ないけど。


「つーか、影使いで、索敵上手くて、奇襲が主戦法ってお前はNINJAか……」


猪がNINJAというこのミスマッチ感よ……。

NINJAとか忍びってあれだろ、もっとシュッとした感じのやつがするものだろ?

何となくだけど、こう、納得いかないというかさぁ……。


シューン!


「ブルゥー!!」

「……!?」


猪とNINJAのギャップをどうにも受け入れずにいると風切り音と銀閃の煌めく。

黒猪はどうやってか急カーブして投擲された短剣の軌道から逃れる。

いや、マジでどうやったら猪が急カーブ出来るんだ……と思って視線を巡らすと黒猪の近くある建物の柱に不自然な形の黒い線が巻き付いていた。

それを逆に辿ると繋がっていたのは脚を伝って黒猪の胴体。


もしかして影を引っ張って進路を無理矢理曲がったのか?

おま、そんな使い方出来たのかよ……


「で、短剣を投げた方は……ゴブリンが3体、だが今までのゴブリンとちょっと違うのがいるな」


短剣が飛んできた方に向いてみるとそこには革鎧で身を包んだ、多分亀の甲羅と剣を持った2体のゴブリンと他のゴブリンとは一風変わったのが1体佇んでいた。

そいつは他の個体と比べると背が高いがひょろっとして線が細い体付き。

前の2体同様に革鎧を身に着けているが、前者のように全身をがっしり覆ってはおらず、要所だけを何か硬そうなもので補強させた部分鎧を着けていた。


「それに明らかに他のとは雰囲気ってか圧が違う……下手したら火爪熊、空歩猿と同格か?」


ならあのひょろ長ゴブリンがここのボスか?

それにしては出遅れ過ぎではないかと思ったが前線に出ているゴブリンの1体が死んだウサギの頭がはみ出ている背負い袋を担いでいるのが見えた。

ああ、狩りに出かけていたところに俺が黒猪をけしかけてたのか。

じゃあ、あっちは帰って来たら住処が壊滅寸前になっていた訳だ、寝耳に水どころではないだろうな。


「犯人の俺が言うことではないか……」


で、俺が色々と考察してる間にも戦況は動ていた。

黒猪も手強い相手だと判断したの突進で正面だけでなく真横をすり抜けて行ったり、その際に自分の影で回避にしたり、ゴブリン側を絡め取ろうとしたりして牽制している。

対してひょろ長ゴブリン側は前の2体がひょろ長ゴブリンを左右に挟んで亀の甲羅と思しき盾で突進を逸し、ひょろ長ゴブリンが投擲を繰り返して黒猪と真正面からぶつからないように調整していた。


「いったいどこにあんな数の短剣隠し持ってるんだろ。もう数十本は投げてるぞ?」


因みにこのWCOにはわりかしどこにもある仮想上の物体をデータとして仕舞える場所はない。

だから必要な物は全部自分で持ち運ばないと行けないのでかなり不便だ。


「どう見ても懐に仕舞える量じゃないけど。ああ言うのを暗器術とか言うんだっけ」


お互い軽微な被害を受けながらも、そんな膠着状態が続き……傾向ていた太陽がついに完全に彼方へと沈む。

これで一面が惑星の影に覆われた闇の世界、それはつまり黒猪にとって最高の舞台が整ったという意味でもある。

案の定夜なら灯りがない場所ならどこでも潜れるのか黒猪の姿が闇に沈む。


「ギギャ?」「グギャ?」

「ギキャー!!」

「「クギャァー!?」」


突如姿を消した相手に前衛の2体が気を緩めるが、即座にひょろ長ゴブリンが叱るように喝を入れる。

とは言っても夜に黒猪を見付けるのは無理ある気がする。

影の揺れもこんなに全方が真っ暗じゃ見えないだろうしな。

夜になった時点でゴブリン側は詰んだ……と思ったのだが、以外にもそうでもなかったようだ。


ゴブリン側から絶妙に死角になる位置に黒猪が出現し、踏み潰そうと飛び出す。

遠くから客観的に見れている俺でさえも夜の暗闇で黒猪が捉え辛い。



「ギッ!」

「ブヒィー!?」

「「グギァ!?」」

「なっ!?」


だというのにまるでそこに出るのが分かっていたかのように短剣を投げつけるひょろ長ゴブリン。

黒猪もまさかこんな早く反撃が来るとは思わなかったのか、まともに剣を受けてしまう。

短剣が刺さったことに慌てたかのようにその場で影に潜る黒猪と、それをじっと見つめているひょろ長ゴブリン。

そしてひょろ長ゴブリンは潜りきった後も何もない暗闇を見つめ続けて何かを目で追っている様子だった。

そして視線が最後に止まった先から黒猪が出てきたことに驚愕する。


「もしかして、見えてるのか?」


どういう原理か全く見当もつかないけど、ひょろ長ゴブリン方は影に潜った黒猪が見えるようだ。

多分可能性としては俺が知らないスキルや魔法があるか……これはあまりあって欲しくないが俺が知ってる索敵スキルだけで圧倒的にレベルが高い、だろか。


どっちにしても厄介だな……。


でも、これで勝敗の行方は分からなくなったな。

黒猪は十八番の影からの奇襲が通じないとなると一気に全力が下がる。

ひょろ長ゴブリンが足止めしてお供のゴブリンが攻撃し続けていれば勝てる見込みは十分にある。

それにひょろ長ゴブリンの方も、まだ何かを切り札あるかもしれない。

予想されるレベルとスキル保有数からしても、まだ切ってない手があるはずだ。


お互い距離を取り、警戒を高めて一瞬の睨み合いが発生する。

影に潜り、先に動いたのは黒猪方だった。

通じないとわかっているはずなのになぜ?


……そして幾らか待っていても黒猪は出てこずあたりに静寂が落ちる。


「え、これもしかして、逃げた!?」


あ、あの野郎ー、ちょっと負けの目が出た途端にとんずらかましやがった!

お前もう少し根性見せろや! 猪だろうが、猪突猛進って言葉が泣くぞ!?

くそー、ゴブリンの住処の防衛を崩すのに成功したけど厄介なのが2体とも残ったままか。


「いや、今悔しがってる場合じゃない。早くこの場を……」


シュー、ザッ!


「うお!?」


あれに見つかると不味いとそそくさと立ち去ろうしたが、そうは問屋がおろさないらしい。

ばっちりこっちガン見てるし、これはバレてるな……。

これはもう逃げられないと悟り、俺は静かに立ち上がり拳を握りしめた。


作者の力になるよう酷評でもいいので評価ポイントを押していたたければと!




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