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エデン・マキナ ~我らは機械仕掛けの楽園にて謳う~  作者: モッコム
第1章 楽園開場
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恐怖戦

ガサガサッ


安全に休める場所を求め、森を探索していた俺はそんな草木揺れる音を耳にした気がした。

もしやと思い音がした方に視線を向けるが何もない。


「うーん? ただの風かな?」


どうもさっきから気が立ってるな、俺。

まぁ、理由は分かっている、今も多分?俺の腕の中で眠ってるイセットの存在が原因であろう。

今振り返ると一人っていうのは心許ないし寂しくあっても気軽ではあったのかもしれない。

とか思ってたらイセットが息苦しそうに蠢く。

因みに今のイセットは『喰香』を抑えるために俺の初期装備の上着で包み込んでいる。

お陰かは知らなけど魔物の出現率は目に見えて下がっているので少しは効果があるのだろう。 


あ、次いでにいうと骨が砕けた腕は欠片をもとの位置に戻すのに四苦八苦したけど何とか治せた。

完璧に治せたかは専門家じゃないので分からないがHP全回復したから大丈夫だ……と思いたい。

関節に違和感ある気もするがきっと気のせいだろう……うん、そういうことにしよう。


「どうした、もぞもぞとして。……心配しなくても置いて行ったりしないから安心しろ」

(……ZZZ)


治まった……俺がイセットを放り出すとかありえないってにの本当、心配性だな。

俺の両親は俺みたいな将来に可能性があるどうかも不確かな人間なのにも関わらず、それこそ死んでも無責任に投げ出したりしなかった。

だから俺が自分で責任を持って面倒を見るって決めた以上、煩わしいという理由で放り出すのはあの人達に対する侮辱だ。

たから俺がイセットを見捨てるなんてことはしないし、出来ない。


ふふ、どの道今更この子と別れるとか無理そうだ。

全くもって嫌じゃないので構わないけど。


「にしても……はぁ、マジで何も見つからない」


探索を開始して結構時間が経つけど隠れて休むに適してる場所は見つからなかった。

あったのは水場になりそうな川辺ぐらいだけど、そこは逆に水場を求めて魔物がわんさか集まって来たので急いで喉を潤して、そそくさとその場から逃げた。


あれは『走行』スキルがなかったらまたどっかにリスポーンしていたな……取って良かった『走行』。


「このままだと一旦戻ることも視野に入れないとだな」


彼処には食料も沢山あるので一応目印は刻みながら進んでいる。

炎の爪で樹木の幹とかに印を付けていると焦げ目がある爪跡という特徴的な印が残るので何かと間違う可能性も低い。

俺がよほどの方向音痴でない限りはすんなり戻れると思う。

そうやって考え事しながら歩いていたのがいけなかったのか突出してる木の根に足を引っ掛けてしまった。


「おっとと……ッ!」


シュッ


そこにさっきまで俺の頭部のあった場所を何かが通り過ぎる風切り音。

後にすかさずガサガサと茂みを掻き分け、複数の人っぽいシルエットをもつ者達が飛びだした。


「ギギッ」「ギギャ!!」「ギャギギ!」

「くッ、不味い囲まれた!」


咄嗟に逃げ道を探ったけど全方位を取り囲まれている。

これじゃ逃げ場がない、前回同様に一点突破という手もあるにはあるが……


「イセットを抱えた状態でどこに当たるか不明の強行突破は無理……戦闘は避けたかったけど、仕方ない」


イセットを脇に挟み、空いた腕で拳を構え敵と相対する。

大きなワシ鼻に尖った耳と緑色の不健康そうなささくれた肌、腰蓑を巻いただけでの子供くらいの体躯の生物。

……これなら俺でも知っている、何たってあのファンタジー定番のモンスターであるというゴブリンだ。


シュバババーッ!


「ッ、いきなりだな!」


自分から突っ込む訳にもいかず相手の出方を伺っていたら唐突に3本の矢が飛んでくる。

何とか躱したり『風魔法』で風を起こして狙いをずらしたりして凌ぐがそれでもゴブリンはしつこく矢を降らせ続け、こちらをどんどん疲弊させていく。

だからって包囲網を逃れようとする素振りを見せると棍棒を持ったゴブリンが牽制して抜ける隙がない。

だが、けして深く踏み込んでは来ずに付かず離れずの距離で包囲網を維持している。


徹底的に遠距離攻撃で疲労させるか手傷を負わせてから一気に叩くつもりのようだな。

多分最初の狙撃が失敗した場合はいつもこの段取りで獲物を仕留めて来たのだろう、ゴブリン共の手慣れている感じが半端じゃない。


俺一人なら最悪リスポーンするだけなのでダメージ覚悟で一点突破するけど今はイセットがいる。

イセットもレベルが上って前よりはマシなったかもしれないが『硬化』を使わないと未だに紙装甲なのだ、俺と同じように復活するのか分からないイセットをそんな危険に晒す訳にもいかない。

起きていればイセットなら並大抵の攻撃は全部避けれるって安心感があったから無茶が出来たが今のイセットは熟睡中だ。


「ってか、イセット! 流石に起きてくれ! 寝こけてる場合じゃないから」

(…………ZZZ)

「ちょ、起きろって。おーい! うわっとッ!? 危なっ、刺さるとこだったぞ、今!」


くそ、全然起きない一度寝入ったらなかなか起きないタイプなのか?

……いや、そんだけ疲労が溜まってるということか。


この子は元から狼から逃げ回っていた時に出会っていたのだそれの、いやそれだけではないか。

もしかすると今までもすっと逃げ回り続ける生活でだった一度も安心して眠れなかったのかも知れない。

だから今はそれを精算するかのように眠っているのかもしれない。


「……ったく。なら俺がどうにかしないとだろ、がッ!」


飛来して迫る矢をはたき落としながら叫ぶ。

弓の性能そこまで良くないのか、矢の飛速はそんなに早くはない、俺でもギリ目で追える程度だ。

このくらいならまだまだ捌けるけど一人であるこっちは疲弊していく一方だし、それは避けたい。

ならまずは……


「お前からだ! これでも喰らっとけ」

「ギギャ!?」


俺の手から水が収束されて高速で発射し弓持ちゴブリン1体の頭を打ち据え、大きくのけ反らせ倒れる。

『水魔法』のレベルもかなり上がっているのでこういった使い方でもかなりの威力が出せるようになったのでもう遠距離攻撃手段ゼロという状況は脱している。

それでもまだ一撃で頭部を砕くとか無理なので気絶しただけぽいが……まぁ、今までを思えば上出来だろう。


「で、そろって隠れと。ま、そうするよな」


ここは森だ、周囲には木などの遮蔽物はそこら中にあるので身を隠す場所には事欠かない。

……正直この状態はあまり好ましくない。

下手に探すため動き回り知らないうちに接近されても気付けるどうか分からない、という精神的にも負担を背負うことになる。

何よりいつ何処で弓矢を打たれるか分からないのが致命的だ。

逃げるのが無理となったら俺に残された手はひとつ。


シュッ!


「歯ぁ食いしばって、矢が飛んで来た方に突っ込む!」


イセットが当たらないように庇いつつ、わざと急所じゃないとこに矢を受け止める。

撃ち落とすなんて暇はない、その間に隠れられば見つけても意味がない。

索敵能力が皆無だからこれぐらいしか弓持ちを特定する方法がない。

もっと賢いやり方が他にもあると思うが俺の頭ではこれが精一杯だ。


「くぅッ……痛ぇ。くそ、次は絶対に索敵系の取ってやる! はぁッ!」

(グギャッ!?)


次の矢を番えようとしたゴブリンに加減した『水魔法』のジェットパンチで顎を打ち上げてアッパーカットをかまして首の骨が折れる。

また別の方向で矢、またそっちの方突っ込むで、さっきの焼き直しだ。

やればやるほどこっちにダメージが蓄積されるが死ぬほどじゃないしあの猿の時に比べればこの程度の痛みなど大した問題にならない。


「これで弓持ちは……ラストッ!」

「グェッ!?」


体のそこら中に矢を生やしながらも何とか最後と思われる弓持ちのゴブリンの顔面を粉砕する。

その証拠に棍棒を手にしたゴブリン共がぞろぞろと木の裏や茂みから出てにじり寄ってくる。

これで有利になる……訳ではないがさっきよりはマシだ。

それに相手も全部出てきたってことないだろう、多分まだ数匹は奇襲するために潜んでいる。


何でここの開発はゲームひとつにここまで高レベルAI使うんだか、維持費でバカみたいにカネ食うだろうに……。


「はは、今からそれを利用しようとしてるやつがいう事でもないか」


先述通りにここのAIはかなりの高レベルの代物で喜怒哀楽がちゃんとあると見受けられた。

特にイセットなどがその最たる例である。

それならば当然”恐怖”って感情もあるのではないか?


一番最初に棍棒を振りかぶったゴブリンの攻撃を躱さず、そのまま肩にもらって構わずに前へ進む。

肩骨から嫌な音がし激痛が走るが構う場合ではない、イセットを抱いてる方は無事なのだからそれでいい。

そのまま首を絞めるように引っ捕える。

折れた肩骨が悲鳴を上げるが『光魔法』で回復しながら誤魔化す。


そのまま頭が潰れるまで地に叩きつけ続け、『水魔法』の高水圧で体を抉り取る、『風魔法』で肉を削ぎ落とす。

他のゴブリン共が顔を引き摺りながらも棍棒で殴ってくるが構うものか、なーに頭さえ守れば死にはしない筈だ。

他の部位は魔法の回復でどうとでもなるのだから。


それを何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も繰り返す。


……既に息をしていないゴブリンを嬲ってる間に他のゴブリン共の手は止まっていた。

その顔にはくっきりと”恐怖”が浮かんでいるのが見て取れる。

恐怖の顔ってのはよく知っている、だってあの災害の日の光景が、死にたくないという恐怖に彩られた顔が未だに俺の脳裏に纏わりついているのだから……


……仕込みはこれで十分、か。


「――さぁ、次はどいつだ」


精一杯声のトーンを下げて周囲のゴブリン共を睨みつける。


「あと、1匹必ず道連れにする。さぁ、次はどいつだ」


言葉が通じるとは思わない、だから視線に意思を込めて行動で知らしめ、示す。

地にボロ雑巾になっているゴブリンを持ち上げ近くにあった尖った木の枝に串刺しにしてから、呟く。

これで失敗すれば……本当に有言実行するまでだ、コイツらが恐怖に染まるまで……。


「さぁ、どいつだ」


瞬間、堪え切れなかったように逃げ出すのが1匹、それを追って2匹、釣られるように3匹が逃げ出すと隠れたのも含めて我先にと逃げ出す……皆一つの方向へと迷いなく。


暫くして本当に全て退いていったのか確認してから、大きなため息を漏らす。


「はぁぁー……。慣れない、ことをするもんじゃないな」


このままへたり込みたいが体中に矢が刺さっているので安堵の息を漏らす程度に留めておく。

流石にちょっとの衝撃でいつ破裂する分からない風船もって、接近主体の俺ではまともに戦えない。

イセットを庇う際のダメージで押し切られるのが目に見えていたのでこのような手に出た訳だ。


……正直あのゴブリンには悪いをことをした、今でも自分の行いに対する嫌悪感で吐きそうだ。

でも今そんなことで気力を使う暇はない。

それに線引きははっきりしないといけない。

敵を尊重して味方を……大事な者を失うなんてあってならない。

今はどうしようもなかった両親の時とは違って俺の手に届く距離にいるのだから……


「グギャ!?」

「あれは……」


逃げ遅れたのか他のよりも太っちょな体型のゴブリンが地に転がるのが見えた。

そこで今の状況を思い出し閃く……あのゴブリンを利用出来るかも、と。

照準器代わりに手を銃の形にして指先に『風魔法』魔力を込めて、太っちょゴブリンに焦点を合わせる。


「よーく、狙って……ッ!」

「グギャァー!!」


指先から小さな風の刃が飛来し太っちょゴブリンの右二の腕を切りつける。

追撃が来たことで更に恐怖が増した太っちょゴブリンは慌てて森の中に逃げ込む


……赤い血をポタポタと流しながら。

追記しておくと『喰香』に釣られてくる敵は魅了状態みたいなもので、ほぼ理性をなくしている。

野良犬の群れがバカ正直に突っ込んきたのはそんな理由。


作者の力になるよう酷評でもいいので評価ポイントを押していたたければと!




ボタンこの下だから忘れないでね? ↓


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