4話
朝起きてから早、一時間。
大晦日だというのにこの神社には僕とナナちゃん以外誰もいない。
まあ、あれだけ放置されていた神社なのだからそりゃそうだろう。
その神社の修理作業に入ろうと持ってきた鞄の中から色々と工具を取り出す。
「おーい田河さーん。聞いてますかぁ?」
たくさんの釘と金槌か・・・・・・一応使ったことはあるけど全部手作業はやっぱりきついよな。
「おーい、おーい。やっほー?」
うわ、これなんだ? 面白いものさしみたいなやつだけど使い方がさっぱりわかん─
「あれ、本当に聞こえてないのかな? 耳元で大きな声で叫んでみたら─」
「・・・絶対それはするなよ? ちゃんと聞こえてるから。ただただ聞き流してただけだから。 で、なんだよ、かまってちゃん」
起きてから話してるとなんだかめんどくさそうだったから静かになるまでしばらくシカトするつもりだったのだが、結局僕の方が折れてしまった。
「かまってちゃんだなんて、失礼だね!」
「こちとら大晦日にこんなことしてるんだよ。少しくらい静かにしてくんない?」
「だ・か・ら、何回も言ってますけど本題がまだなんですってばぁ」
「あ?」
まあ、言われてみれば朝起きてから何回かそんなことが話に上がっていた気もする。
「えーと、君さ、ここの草刈りとかしてくれてるじゃん? そのお礼をしたいなぁ、って話なんだけど」
「お礼?」
「そう、お礼だよ。なんでも願い事をひとつ叶えてあげる!」
なんでも願い事が叶う・・・・・・どこのラノベですか?
「あ、そういうネタはもういいんで」
「ネタなんかじゃないってばぁ~」
こんな普通の女の子が神様なんてわけないじゃん・・・
「う、疑い深い君のために少し私の能力を見せてあげる!」
「なにをするんだ?」
「君の未来予知をしてあげる。私は神様だから君の未来もしらべることができるからね!」
「へぇ、そんじゃ一回やってもらおうかな」
「よし、きた!」
ナナちゃんはそう言うと僕の方を見つめて黙った。
─────
「明日君は死んじゃうんだってさ」
五分くらい待ってると、ナナちゃんがそう言った。
「は?」
「刺殺だね」
「いや、どういうこと?」
「ここ神社の簡単な修理がある程度終わってから一回家に帰ろうとしたときに通り魔に襲われるらしいよ」
「え・・・」
「残念だけど・・・、そうらしいよ?」
え、僕明日死ぬの? それも通り魔? ど、どういうこと?
・・・どうせ、気を引くために大袈裟なこといってるんだよな。じゃないとそんな急なことが起こるわけないし。
「・・・君、疑ってるね?」
「そ、そりゃ自分が死ぬなんて信じられないしあり得ないと思うだろ」
「─あと少ししたら隣にある拝殿が完全に壊れるよ」
「そ、そんな急に崩れるわけ─」
ガタガタガタガタ
そのとき、すぐそばにあった拝殿が大きな音をたてて崩れた。
「ほらね?」
「ま、まじかよ」
「これでも信じられないかな?」
「・・・」
信じられないことだけど、すぐ目の前で未来予知したの見たし、それが本当になったのも見たし・・・
え、じゃあ本当に僕死ぬの?
「でも、君は運がいい!」
「運がいい?」
「私ならその未来、変えられるんだよ?」