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天使はあくまで魔導聖書(グリモワール)  作者: 小鳥遊賢斗
第五章「仲間」

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◆第七十四話『飛躍と牢獄Ⅰ』

 世界が赤変した瞬間、僕らは度肝を抜かれた。

 今までは赤変した瞬間には、様子見なのか近くからは敵は出現しなかったのだが、今回に限っては、目の前から敵が現れたからだ。


「やあやあ、君たちが幹部倒しと謳われている子達かい」


 ウェーブのかかっている髪は白髪で、長いひげを生やしており、肌の色が病的に白いことと猫目であることを除けば、余裕のあるおじい様といった感じの風貌だった。


「先にコードネームを言っておこう。私のコードネームは空中跳躍(スペースキッカー)曲歪軋(ディストーション)巨大化(ジャイアントグロース)がお世話になったね。いやぁ素晴らしい功績だ。しかしながら、これ以上は士気にかかわる。好きにさせておくにはいかなくてね。だから……」


 その老齢の竜人は、右足を膝を曲げて下げ、左の掌を開きながら突き出し、右の掌を開きながら後ろに構えて、カンフーのような決めポーズを取った。


「ここで、死んでもらうよ」


 どういう仕掛けか、その老人は地面を繰り返し蹴り出すと二十メートルもの距離を数秒で詰めてきた。


「アッキー! 下がれ!」


 将大は空中跳躍(スペースキッカー)の大パンチを腕を十字に組みガードする。


「うむ、自動術式(オートパイロット)を上手く使ったな」


 魔導書形態になり将大の首にかけられているレシムさんが満足げに発言する。

 将大の手を見ると、その腕は鈍色をしていた。


「まぁ流石に今ので拳は使えなくなったはずだぜ」


 僕は将大の言葉に空中跳躍(スペースキッカー)がにやりとしたのを見逃さなかった。

 一瞬だけ動きが止まったが、空中跳躍(スペースキッカー)は全く怯まずに次の攻撃へと移行した。

 空中跳躍(スペースキッカー)の左キックを、右手で受ける将大。


「オープンフィンガーグローブか」


 戦闘に直接参加していないので、観察する余裕があるらしい。

 僕は何らかの作戦が考えられないかと思い、空中散歩(スカイハイク)で空中へと避難した。


 敵の連撃は続く。回転しながら右裏キックを行い、将大が右手で受ける。

 あの将大が後手に回っている……幹部級、やはり一筋縄ではいかないか。


 次の瞬間、僕は自分の目を疑った。

 空中跳躍(スペースキッカー)は先程の右裏キックの後、空中の右足を何らかの方法で空中に固定しながら回転して将大の背後に回り込んだかと思いきや、突然右足が自由にして、回転の力を使い、強力な右回し蹴りを将大の頭に命中させた。


「将大……!」


 普通なら脳震盪を起こしてもおかしくない。

 しかし、将大はまだ持ちこたえていた。

 空中跳躍(スペースキッカー)は目を丸くする。


「極限まで追い込まれた結果、第六感が研ぎ澄まされたか」


 レシムさんが言うも、僕にはよく分からない。


「攻撃が頭に命中する直前に頭を硬化させたのよ」


 リリスが解説を挟む。確かに頭皮の色が不自然な鈍色になっている。


「今度はこっちの番だぜ」


 将大は空中跳躍(スペースキッカー)にいくつもの連撃を仕掛ける。


「おそらく名前からしても戦いを見ていても相手の能力は空中に足場を作る能力みたいね」


 連撃の受けに異能力は関係無いにも関わらず、将大の攻撃は空中跳躍(スペースキッカー)に全て受けられてしまっている。


 実力が違い過ぎる……。

 やはり、何かしら作戦を考えないと。


 とはいえ、やはり戦闘から目が離せない。

 やがて空中跳躍(スペースキッカー)はしびれを切らしたのか、将大の蹴りを掌で受け止め、同時に顎に手を乗せ、後ろへと押し倒してみせた。将大は後ろに転倒し、後頭部を強打した。


 これ、まずいぞ……。空中に足場を作れるなら、空中でさえ安置じゃない……!


「すいません、遅れました」


 麻夜さんが突然道路に現れる。


「麻夜さん……! 来てくれたんですね……!」


 良かった、まだ間は持ちそうだ。


 自ら距離を詰めていく麻夜さん。

 その余裕ぶりが窺える。

 そして空中跳躍(スペースキッカー)は悠然とした態度で麻夜さんを待ち構えている……。


 じりじりと、にらみ合いが続く。

 やがて2mほど距離を詰めたかと思いきや、麻夜さんは地面を蹴る動作さえ見せず相手の懐に入り込んだ。

 不意を突かれた空中跳躍(スペースキッカー)は胸骨の真上に突きを食らわされる。


「今のは!?」

「前足の抜きで距離を詰めたのよ。要するに、倒れ込むように移動することで初動の分かりにくい動きをするの。『縮地』っていう技術よ」


 続いて麻夜さんは上段回し蹴りを頭にお見舞いするが、空中跳躍(スペースキッカー)は蹴る方向を同じ方向に動くことで威力を軽減してみせた。


「空手のイナシね」


 一旦後退する空中跳躍(スペースキッカー)と、悠々と距離を詰めていく麻夜さん。


「油断してしまった」


 空中跳躍(スペースキッカー)は以前にも増して警戒している。

 その目からは強い眼力を感じられる。


 再び縮地を使う麻夜さんだが、空中跳躍(スペースキッカー)はそれを見破り、パンチをする麻夜さんの腕を掴み取り、背負い投げを食らわせた。

 咄嗟に受身を取る麻夜さんだが、ダメージが厳しいように見えた。


「やっと頭が冴えてきたぜ……」


 そうこうしているうちに将大が復活した。

 もはや、時間稼ぎと考えた方が良さそうだ。


 僕は下での戦闘をぼんやりと眺めながら、利用できる建物が無いか考えを巡らせた。

 プール……体育館……図書館……近くの廃倉庫……。

 廃倉庫……袋小路……瞬間移動……。


 ……。

 …………。

 ………………。


 これだ……!


 ……僕は夢の中で叶に授けられたテレパシー能力を行使して、仲間たちに作戦を伝えた。

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