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▽前座『将大の想い』〓挿絵有〓
人はきっと、生まれた時から平等なんかじゃない。
どれだけ優しくたって、報われない人だって居る。
どれだけ神様を信じても、救われない人だって居る。
どれだけ生きたいと願っても、生きられない人だって居る。
それでも、人は生きていく。
姉ちゃんは生まれつき、身体が弱かった。
だから姉ちゃんの世界は、自分よりずっと狭いと思い込んでいた。
だけど、それはきっと違った。
自分とは違う世界が、姉ちゃんの頭の中には広がっているんだ。
「もし悲しみに打ちひしがれたら、無いものではなく、在るものを数えなさい」
そう姉ちゃんは言った。
姉ちゃんは、神様の決めた運命に、抗っていた。
俺には神様の気持ちなんて分からないが、起こった全てのことを神様のせいにするなんてことは、間違っていると、はっきりと分かる。
それは、自分との戦いに、負けることだと思う。
神様が過酷な運命に落とし込んだのなら、その運命に精一杯抗えばいい。
だから、俺は戦う。
正義なんて曖昧なものじゃない。
自分自身の、信念のために。




