表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天使はあくまで魔導聖書(グリモワール)  作者: 小鳥遊賢斗
第三章「対話」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

41/118

◆第三十三話『鍛錬の廃墟』

 かつての子供達に、お化けビルと呼ばれていた、郊外にある潰れたスーパーの廃墟。当時、二階裏口へと繋がっている階段を登りきると、中で半透明の人影らしきものが、昼間のうちから蠢いていると噂になった。


 怖がりだった僕は、当時夜に出掛ける用事があった時に、この廃墟を避ける道を通っていた記憶がある。今は科学思考なので幽霊なんてものは居ないと思っているが。


 いや、リリスのような天使的存在が居る時点で、幽霊非存在説が否定され兼ねないのだが、とにかく見た事が無いので、居たとしても見る事は僕には出来ないのだ。つまり、居ないことと同じだ、少なくとも、僕にとっては。


「ここは昔、私達の間でお化けビルって呼ばれててね──」


 詩織が噂の下りを説明する。


「なるほど、子供なりにただの廃墟を面白がってた訳ね」

「なぁ、リリスさん」


 突然将大に名前を呼ばれ、呆けるリリス。


「何かしら、将大。あなたが私を呼ぶなんて珍しいわね」

「実際に、居るのか?」

「……何が?」


 遠回しな彼の表現に、彼女は首を傾げた。


「幽霊だよ、幽霊」

「おい、ちょっと止めろよ……」

「なんだ、怖いのかぁ、アッキー?」


 ニヤリとした表情をこちらに向ける将大。


「僕は科学派だから怖くはないけど、詩織が……」

「え? 私、霊とかは平気だよ」

「あれ、暗いところが苦手なんじゃなかったっけ」

「真っ暗なところが苦手だけど、それとこれとは別。幽霊さんが居たらテレサみたいに友達になっちゃえばいいの」


 その場のほぼ全員の視線が、詩織に集まる。それも、ポカーンとした表情で。正直、変わった考えだと思った。


「まぁ、出来なくもないかもね」


 リリスが意外なことを口にする。


「霊自体は、この世に居るか居ないかで言えば居るわよ。未浄化霊ってものがね。でも彼等は怖がりだから、人前には姿を見せない。詩織ちゃんなら優しいから、意外となれるかもしれないわね。かく言う竜人(ノガルドティアン)も、裏世界であるAnneheg(アネヘーグ)から、こちらへ魔術で霊体だけ入り込んだ上で、時に取り残された空間に私達を誘うわけだし。霊自体の否定はしないわ」


 僕らが関心して彼女の話を聞いている中、ふと、僕はその場に文先輩の姿が無いことに気付いた。辺りを見回すと、少し離れた木陰で丸くなっている文先輩を見つけ、僕は目を丸くした。


「文先輩、何してるんですか……?」


 先輩は足をガクガクさせながら、腕で身体を抱えている。


「な、なんでもないのよ……?」

「あー……あややんはお化けが苦手だから……」


 レンの言葉に反応して、キッと彼を睨みつける文先輩。


「今回は茶化したりはしないよ〜。後が怖いからね〜。というかガチで可哀想だからね」


 流石の彼にも、最低限の分別というものがあるらしい。


「……この話やめるか」


 話を持ち掛けた張本人である将大が提案すると、僕らは満場一致で、うん、と頷いた。


「とにかく、しばらくはここで訓練することにするわ。新しい技術を習得する為にね」

「新しい技術?」

「おお、必殺技みたいなものか!?」


 僕が問い、将大がそれに便乗する。


「そこまで大きな一撃ではないけど、とても役立つものよ。その名も──」

「その名も?」


 将大が急かす中、彼女は勿体ぶって言葉を溜めると、一気に言い放った。


自動術式(オートパイロット)!」

「「オートパイロット?」」


 仲良くハモる僕ら。


「オートパイロットって、飛行機に付いてるあれか?」


 僕は彼女に問うた。


「自動で戦えるようになるのか?」

「そんな訳がなかろう」


 将大の天然のボケにレシムさんが失笑しながら突っ込む。


「一言で言えば、呪文を唱えなくても魔法が使えるようになるのよ」


 彼女の文言(もんごん)に、僕は思わず眉をひそめた。


「そんな便利なものがあるのか?」

「ええ、ただ、ある程度熟練を必要とするわ。その為の訓練をここで行うことにしたの。私達の次の目標は、最初の魔法の自動術式(オートパイロット)を習得することよ」

「おおおおお!」


 将大のテンションが急上昇している。


「一人で盛り上がりすぎだろ……」


 僕は呆れて溜息をついた。


「どんな訓練をするんだ!?」

「そうね、それぞれ訓練の仕方は違うだろうけど、基本的にはイメージと具現化の訓練ね。天界から道具を持ち込むのもいいかもしれないわ。それならミスティック・リアは真似出来ないからね」


 リリスには、ある程度彼らに対抗意識があるらしいのを僕は感じ取った。


「スポーツと同じで、訓練するしかないの。あなた達には、これから頑張って貰うわよ。明日の集合は午前十時ね」


 互いに頷きあう僕ら。仲間としての結束を感じた瞬間だった。


「さて、そろそろお(いとま)しましょうか。約一名、ここからすぐに離れたそうな人が居る事だし」

「いや、二人だ。詩織は暗いところ自体苦手だからな」

「真っ暗じゃないところなら平気だよ? 私」

「生憎郊外のここはその条件が揃うんだよなぁ……」

「……はっ、早く帰ろ……?」


 詩織に引っ張られるように僕はその場を去り、僕らはそこで現地解散した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ