8話 害する行動
さて、なんで皆様はボクな目で見るんだ? 非常に不愉快な気分になるよ。一体ボクの何がそんなに不思議なのか理解できない。ボクが妖力を持っていることは皆が承知しているはずだし。
「力…、すごく、上がったよな…」
ああ。そういうことか。龍牙の一言で全て理解した。
皆は九年前のボクを想像しているんだ。おとなしく、何にでも従い常の守られていたころのことをまだ引きずっているんだ。あー、可笑しい。すごく、笑えるよ。この九年ボクはキミ達の守りなしで生き抜いてきたんだよ。ボクを食べたがる妖怪を蹴散らして。失敗しても、誰も守ってくれない。自分の失敗は痛さで学んだんだよ。まあ、こういう道を選んだのはボクだから。
「えへへ。すごいでしょ? でも、光鬼をこんな目に合わすつもりはなかったんだよ。ごめん」
いつも通りの笑顔を顔に貼り付ける。そしたら、誰もボクの本心に気づかない。こうやって周りの人すら警戒して生きてきたからもう癖なんだけどね。
おや? 反応が薄いですね。
「どうしたの? 」
側にいる鬼次の顔を覗き込む。顔を背けられた。
怖いんだ。ボクのことが。…、こういう反応、もう飽きたんだけど。ボクを恐れて、勝手に離れていくんだ。ボクのことなんか知らない振りで。ボクの気持ちなんて考えずに。
……、それはそれで愉快だけどね。ハハハ。キミ達、顔に出すぎだよ。友達、なくしちゃうよ~。
力は強すぎても不便なんだな。知らなかったや。皆、顔すらまともに見てくれないじゃん。
池に目を向ける。そこにはいつものようにボクが天然のように柔らかな笑みを浮かべていた。気持ち悪いボク。フフフ、でもいいんだ。周りにばれなければ。そうでしょう? ボクが生きるために必要なことだよ。
にしても、そろそろお祖母さんのところに行かないとなんだけど。巳高は怯えすぎ。他も俯いちゃってるし。本当に役にたたないなあ。
にしてもキミ達が動いてくれないとボクは色々やらなきゃいけないことが終わらないんですよ。困るんだよね。どうにかしないと。これ以上お祖母さんをほっておくわけにはいかないんですよね。めんどくさ。
「そろそろ動かない? 」
ボクは困ったような笑顔を作る。
皆我に返ったみたいだ。よしよし。
って、え? 何でみんなボクに跪くの? 訳わかんないよ。ボクに対する新たないじめかな。
でもまあこれは、ボクに対する跪きじゃないんだよ。ボクの力、強いていえば、祖先の力を敬っているだけなんだよ。本当にボクを不愉快にさせるね、キミらは。
ほんの一瞬、顔から表情が消えそうになった。ここはやっぱり大っ嫌いだ。変更の余地なんて、少しも残っていないよ。
「わ、分かりましたから! とにかく、お祖母さんにあいさつにいきましょう。分かって下さい」
ボクの一言はだいぶ堪えたようだ。
そうだよね、キミらの現実の支配者はお祖母さんだもんね。可愛そうな子達。あはははは。
ここは本当に息が詰まる。
唯花に案内を続けてもらう。広い中庭の橋。随分、古い。
そこを渡る。廊下を少しだけ、進む。
奥の襖。
ここがお祖母さんの部屋だ。ここから二人きり。気分は最悪だった。