7話 突撃
神社の中はやたら和風だ。ヒノキだろうか。いい匂いが辺りに広がっている。
それに結界もしっかりはってある。この結界をはったのは妖狐の尾を預かったとされる赤尾家。つまり鬼次だろう。しかも、結界は複雑な仕組みにしてある。かなりここの守りに力を入れてあるのが手に取るかのように分かる。そういえば、森にも弱い結界がはってあったな。
なんて、余計なことを考えながら、唯花の後について行く。
神社の柱には神話が刻んである。絵として彫られている、と言った方がいいかな。一本一本丁寧に作られている。芸術作品だろ、これ。世界遺産に登録できる。間違いなく、だ。
久しぶりにこの柱を見た気がする。小さい頃はこれを見ながら、お祖母さんの話を繰り返し聞かされた。今でも、要約しないでも大半を諳んじることができる。かなりきついもんがあったけどもう慣れた。
ボクが柱を眺め堪能していると大きな足音が聞こえてきた。この足にはおぼえがありすぎて怖い。というか、ボクの安全を確保したい。
「ごめん、唯花ちゃん。ちょっとね」
そう言ってボクは唯花ちゃんに声をかけた。
そして、ボクは走り出す。ふすまを開け放つ。広い池が広がっている。まあ、丁度いいかな。気配はもう真後ろに来ていた。
あと少し、引きつければ十分。ギリギリまでひきつけなければ。
そして瞬間を見計らって避けた。後ろから突進して来るそいつを。そいつは迷わずボクに突進していたため止まりきれずに池に落ちた。
そいつの名前は緑間 光鬼だ。明るくて楽しい奴だけど何かと騙されやすい。赤い髪で赤い瞳でけっこうかわいいと思う。
んで、光鬼はおぼれている。キミは泳げないんだね。初めて知った。あの3人が来ているから、助けるのはそいつらに任せてもいいけど仕組んだのはボクだしな。でもわざわざ泳ぐの面倒だからな。というか、ここの池ってそんなに深かったんだ。新しい発見には犠牲がつきものだ。
だけど、死なれたら面倒だよね。それに唯花のお兄さんにもあたるわけだし。
助けるか。泳がずに。
ということがわずかな間で頭を駆け巡った。
そんな訳で濡れずに光鬼を助けますか。
池の上に手をかざす。そして、妖力を少し使って、光鬼を湖から引きあげた。
光鬼は床に手をついてのんだしまった水を吐き出している。ここでやるなよ。床が汚れるだろうが。誰が片づけると思ってんだ。まあ、ボクではないね。でも、ボクのせいだって言われたら耳が痛い。突っ込んで来た光鬼のほうが被害者っぽくなっちゃてるし。
てなわけで、光鬼のずぶ濡れな洋服や、水浸しになった床から、水分を飛ばす。妖力を使ってだけど。
「大丈夫? いきなり突っ込んで来るからこういう目にあうんだよ」
ボクなりの忠告を送っておく。
この村でキミのことは信用していないよ、という合図。分かる人はいないけどね。
さて、早くお祖母さんのところに行かないとそろそろ怒られる。後ろを見ると皆驚いて固まっていた。
え? なんで?
どうしちゃったのかな?




