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粉雪   作者: 若葉 美咲
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40話 決意と後悔と


 キツネの巻物にボクが探していた答えがあった。神社の下に眠っている龍達を浄化する方法が。ボクの家系が幸せになる方法が。もちろん代価が必要だ。

 この巻物を読んだボク以外の先祖返りは3人いたらしいけど、皆、代価が怖くて実行しなかったそうだ。ボクは代価について何も思わない。むしろ当たり前の代価だと思う。だから、実行する。勇気とかがあるわけではない。ただ、やりたいそう思っただけ。代償が何であろうと関係ない。恐れない。ボクはやりたい。やらなければならない。そう感じただけ。

 妖狐ようこは覚悟して、戦いを挑んだ。自分の命をもって龍や鬼、大蛇を眠りにつかせた。子孫のことまで考えて策を練った。この巻物も策の一つ。ありがたいな。妖狐の意志を継ぐのはこのボクだ。


 咳き込んでしまう。毎回毎回少しずつ血が増えていく。あと、どのくらいでボクの体は完全に壊れるんだろう?

 ボクの病気の元々の原因は蹴られた時の肺の内出血らしい。内出血が完治する前にストレスによって細胞が壊れ始めた。そして、少しずつ溜まっていった血は肺の中で痛んでいった。簡単にいえば腐っていったんだろう。それがさらに肺をを傷つけたらしい。あんまり、いい気分じゃないな。

 薬をもらったけど気休めでしかないと言われた。今、ボクに必要なのは穏やかでストレスの少ない生活らしいけど到底無理な話だ。

 六華村にいること自体がボクにとってストレスなんだから。先祖返りだとか、神話とか関係ない。ここが嫌いだ。自然もすごく綺麗だし、空気だっておいしい。それでも、この村はボクに安らぎという物を与えてはくれなかった。ボクに向けられるのはこの村ではいつだって白い目。

 この村の人間が怖いんだよ。優しさの欠片もない冷たい奴らが、酷いんだよ。

 誰もボクを人間として必要としてくれなかった。どこまでも、神崎家の子供で先祖返りだというレッテルがついてまわった。ボク自身を本当の意味で理解しようとしているのは鉄尾とツッキーぐらいだろう。ボクがいくら、周りの人を理解しても、キミ達は誰一人として理解してくれなかった。ボクという人格を。それはボク自身のせいなのだろうか。それとも……。

 イジメはイジメられている方にも理由がある? ボクが人を信じれなくなったから今回の事件は起こったのだろうか? そんなことはない、と否定してみても、理由はそれしか思い浮かばなかった。他に何があるっていうんだ?

 そんな細々した、悩みすら、ボクにとってはかなりのストレスなのかもな。アホらしい。


 吐かれた血にキツネ達じゃ驚きを隠せていない。動揺している。ああ、綺麗な毛皮を汚しちゃったかもしれないな。

「ごめんね」

 言葉が通じるわけではないことをボクは知っているのに、言わずにはいられなかった。なんでかな? キツネが可愛く感じられたかもしれない。もしかしたら、別の感情かもしれない。でも、ボクはとにかく謝りたかった。

 キツネに対してでだけでははなかった。

 ボクという存在に謝りたかった。ボクが賢ければ、こんなことになってなかったかもしれない。ボクがもっと人付き合いが良ければ信じてもらえたかもしれない。ボクが、ボクをダメにしてしまった。

 その事実がボクの胸を焦がした。ごめんな。

 鉄尾が今、必死にボクを支えようと頑張ってくれている。でも、ボクは鉄尾が望まないであろう結末にしようとしている。鉄尾は間違いなく傷ついてしまう。ボクのせいで。鉄尾には笑っていてもらいたいのに、ボクが鉄尾から笑顔を連れ去ろうとしている。

 悔しいし、悲しい。でも、ボクができることは、もう_________。


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