3話 三大家
毎日投稿するっていってたのに申し訳ありません。
ボクは抱き付いてきた誰かに遠慮はしなかった。
相手のみぞおちに拳を叩きこむ。
「ぐえ! 」
そいつの口から勢いよく空気が飛び出す。ほとんど無抵抗になった腕をひっつかみ、背中へ素早くまわす。相手のがら空きになった右足へと蹴りをいれる。後は、勢いにのせて投げ飛ばした。いきなり襲い掛かってきたのに、弱すぎじゃないか。油断していたボクがいうべきじゃないけれど。
「痛たたた」
おや? 中々すごいじゃないか。いきなり一本背負いを決められても立ち上がってくるなんて。骨があることだけは認めてやろう。さあ、どっからでもかかって来い!
起き上がってきたそいつを見つめる。どこかで見たような顔つきをしている。警戒しながら、過去を思い出してみる。見たことのあるやつか、どうか。
そいつの髪は茶色がかっている、黒色。短く切られている。身長は結構あると思う。見た感じ、体つきはまあまといったところだな。肌はそこまで白くない。目の色は、灰色。
「あ」
思わず投げ飛ばしてしまったが、もしかしたらこいつ。
嫌な予感がする。やってしまった感が半端ない。
「お・ま・えなあ! 迎えに来た奴殴るか、普通!! 」
やはり、迎え役に抜擢されていたのか、白心 龍牙。だが、龍牙よ、ボクに普通を求めない方がいいぞ。ボクはちっともまともじゃないのだから。それにボクから言わせれば、いきなり抱き付いてくる龍牙が悪い。ボクは人に触れられるのが大嫌いなんだぞ。知らないだろうけど。
とは言え、このままにしておくのも何だか座りが悪い。面倒だ。
笑顔で謝りながら手をかす。
白心 龍牙はボクの手をつかみ立ち上がった。ボクより手が大きかった。
ああ、男なんだと思わされる。ただ、それだけのことなのに。
「龍牙だよな? 」
龍牙は顔を輝かせた。さっきまで、怒っていたと思うのだけれど。
「覚えていてくれたんだな!? お前がこの村を何も言わずに出て行ってもう九年になるんだ。忘れられたのかと思ってた」
そんなことで喜んでいたのか。意外な。でも、九年ぶりともなればそういう反応もおかしくないのかもな。となると、ボクがおかしいだけなのかもしれない。改めてボクの異常さを認識するはめになった。
にしても、九年前、この村でボクは一体何を体験したんだ?
色々渦巻く感情を押さえつける。そして、すべてを笑顔で隠す。
「ああ。当たり前だろう。そんなこと」
龍牙はそれでも十分うれしそうだった。
「そいじゃあ、村に行くぞ」
言われなくても行くに決まっている。でも、何だか古い背中の傷が痛んだ。もう、完治しているはずなのに。なんで、こんなにもここに来るのが嫌だったのか。ボクにしては、変な予感とやらに振り回され続けている。それだけのことが九年前にあったということだろう。人の動きには気を付けないとな。
龍牙を見る。息を吐き出し吸い込んだ。
「そうだな」
それだけ返事する。
真っ直ぐ足を進めた。もう後戻りはできない。
会話をしながら進む。単なる暇つぶしの会話だ。だが、おかげで退屈することはなかった。
急に視界が明るくなる。
森からでたのか。
村は桜が満開で綺麗だ。暖かな風が頬を撫でていく。少し照りつけるように降り注ぐ日差し。長袖だともう、暑く感じる。村は何一つ変わっていなかった。記憶にあるものがそこにそのままあった。
不思議な感じだ。それと共に古傷がまた少し痛んだ。




