38話 手前
助けを求める子を救うために他の奴らがボクに石を投げてくる。バカなのかな。忘れたとは言わせないよ。ボクは妖狐から血を受け継いだ先祖返りなんだよ? キミ達はボクを恐れ、敬わなきゃいけないんでしょう? ボクは人間じゃないみたいに扱っておきながらそんな弱くて何の力もないキミ達の攻撃をボクが受けるわけないじゃん。分かってないのかなぁ。
結界をはる。これで、キミ達の攻撃は全部防げちゃうんだよ。笑いがこみあげてくる。
さて、ここからは反撃してもいいんだよな? と言うか、反撃しないと苛立ちが収まらないし。
ボクは冷ややかな目で村人を見つめた。たじろいでいるのが分かる。今更、そんなに怯えなくてもいいんだよ。何で足まで震わせてるの? さんざんイジメてきたでしょう?
妖力を爆発させた。皆軽々と吹き飛んでしまう。いいね。痛快だよ。皆、が同じ反応する。ボクは一人一人気を失わせていった。
雪の降る中、気絶させた村人やクラスメイトを縄で縛って学校に引きずって行った。重かった。
屋上から全員、ぶら下げる。疲れるなあ。ったく、面倒。
でも、ボクもやられたことだし。ちょっと覚悟してね? 大丈夫。ボクの時より低いし、雪っていうクッションもあるから。両手も自由にしておいたし、命に別状はない高さだから。こんなかに心臓の悪い人とかいないかも、ちゃんと下調べはしたんだよね、これでも。調べるのが苦手な私にしては上出来でしょう?
誰か死んだら目覚めが悪いからね。それにキミ達なんかのために人殺しにはなりたくないもん。
これでも、優しいほうなんだよ?
本当は熱湯をぶちまけたり、村全体を大火事にしたりしても、足りないと思ってるくらいなのに。
やっと、分かったんだ。やられっぱなしはやっぱり性に合わないってこと。ボクはやられたらやり返すタイプような人間でなくちゃ。
だから。復讐ぐらいしても、いいはずだよ。大丈夫。命に別状はないから。まあ、骨の一本や二本ぐらい持っていくかもだけど。でも、骨の一、二本で許してあげるんだから優しい方だと思うよ。感謝してね。
さて、気が付いたみたいだね?
あっちこっちから騒ぐ声が聞こえる。
「神崎君!! い、今すぐ、止めなさい!! そうじゃないと、先生、た、退学を言いつけるぞ!! 」
先生か。退学とかいうんですか? そんな脅し程度では別に止めようと思わない。退学なんて怖いもんじゃない。むしろせいせいするね。こんな学校来たくもない。
先生だからって言うことを聞かせられるなんて甘い考えはやめてもらおうか。イジメを止めるどころか混ざってボクを蹴ったり殴ったりしたじゃないか。先生までイジメに混ざるとかこの世も末期だよ。
ボクはこの計画に相当なリスクを背負っているからあんまり長々やってらんない。とても残念なことに。
さて、それじゃあ本番に入りますか。落ちる時の悲鳴をちゃんと聞かせてよ?




