33話 血色
白い雪が空から降ってくる。傘を忘れたなあ。
ボクがイジメられ始めてから数か月が経過した。遅かったようで早かった。ボクは随分、嫌らしいやつになったと自分で思える。憎たらしくなるであろう笑顔は健在している。でも、一人で居る時は、笑顔を止めた。今までは一人の時でも続けていたんだけど、疲れがあったため止めた。俗にいう省エネってやつだ。
咳が続く。確実にボクの体力を奪っていく咳だ。
体の傷も増えた。白い雪と同じぐらい白かったはずの肌は赤く腫れ上がっている。みっともない。痛さとか寒さは最早感じない。むしろ、怪我のせいで熱を持っている。ただただ、こうなってしまった肌が悲しい。雪の冷たさも、そこまで感じれない。肌に落ちてきた雪が溶けて滴になった。
再び咳き込む。止まらない。屈みこんでしまう。雪の上に赤い滴が飛び散る。またか。
最初に血を吐いたのは皆に蹴られた時だった。それから頻繁に咳き込むようになって、喀血するようになった。体が壊れていくのが自分で痛いほど分かった。
___________鉄尾に知られたくない。
最初に思ったことがこれだった。何でだろうね? でも、そう決めたからにはツッキーの親がやっている医者はもちろん、村の中にある医者に行くことはしなかった。だけど、日に日に具合は悪くなっていった。
仕方なく、ボクは週に一度しか来ない電車に乗って都会に戻った。よく行っていた大きな病院に行った。知り合いの医者が見てくれた。結果は最悪だった。これ以上、精神的にストレスがかかればもってあと3か月だと言われた。精神的ストレスが無い所なんれあり得ない。そして、一週間ほど開けてしまった村に帰って来た瞬間村人全員に殴られた。ボクは病気のことを話すことをあきらめた。
知り合いの医者が言った通り都会に残れば良かったのかもしれない。でも、ボクは戻りたいと思ったんだ。もしかいたらまた、皆で笑えるかもなんて思ってしまった。
これが先月11月の話だ。今は12月になる。
皆で笑えるかもなんて都合のいいことを考えるなんてボクらしくない。
咳は続く。血は最初の頃より量が増えた。
赤が雪に滲んで広がる。死の色。はかない色。
綺麗だ。ボクがまだ、生きていることを証明してくれる赤がひどく心地よく感じられた。雪は上からどんどん降ってきてボクから体温を奪っていった。同時に、醜いこの世界を白い色で覆い尽くしてくれた。




