32話 ツッキー
ツッキーと話してから数日がたった。
今日、ボクはツッキーの家にいる。あんまりにもツッキーが心配してさそってくれたからだ。これ以上ツッキーに心配をかけさせるわけにはいかない。
まあ、その結果ツッキーのご両親にまで心配をかけさせてしまった。何やってるんだか、ボクは。自分のやっていることがとても意味の無い気がした。
ボクは楽しんでるから平気だと嘘をついた。嘘を貼り付けて重ねてすでにボクは真っ黒なんだろう。普段の笑顔からして嘘なんだから。地獄に落ちる? 落ちたってかまわない。ここも地獄なんだから。怖くない。逃げることすら諦めてるのかもしれない。
気休めの薬を出してもらった。飲んだら、ぐっすり眠れるそうだけど自分の家、つまり、神社でぐっすり寝たら死ぬかもしれないから使えない。悪いとは思う。でも、しょうがない。
笑顔でお礼を言って、秋の匂いがうっすらとする夜の道を帰る。寒くはないけど、もうすぐ秋だと思わされる。おいしい栗が食べたい。叶わない夢を描きながら神社へとコースをとる。ススキがだいぶ色づいてきた。9月だからだおう。月がやけに大きく見えた気がした。
神社には毎夜のように妖がやって来ている。弱いから結界に触れることすらできないようだけど、神社に入るまでが面倒だ。妖は裏一文字で斬り捨てた。死にたくないなら、どいてくれればいいのに。なんで、ボクの振るう刀、裏一文字に飛び込んでくるんだろう?
やけに悲しくてしょうがなかった。何でボクに突っ込んで来るんだろうか。
部屋に戻る。誰にも気づかれないように。
お祖母さんともお祖父さんとも唯花とも光鬼とも話したくない。というよりも、顔を合わせる度になんか言われたり顔を逸らされたりするのはこっちの気分が悪くなる。頭が子供なんだということをいちいち憐れむのも人数が多いとボクが疲れる。
部屋は荒らされていた。大方、ボクが持っている裏一文字と神崎家の証の石を探したんだろうね。ちなみに二つともボクが持ち歩いているから部屋を探しても意味なんかないんだけどね。散らかした部屋ぐらい片づけるのが礼儀だと思うんだけど。嫌がらせだとしたら、最高だよ。片づけるボクの身にもなって欲しい。
食事もとりたくない。何もかも面倒だと思う。
鉄尾とたまに会えることでボクは命をつないでいるんだ。間違いなくそうだろうな。
こんな時にも鉄尾のことを考えるなんてボクは相当疲れているなあ。これからどうすればいいんだろう、ボク……。




