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粉雪   作者: 若葉 美咲
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23話 マリオネット

 ボクは足取りが来るときより軽くなっていた。明日の夜も鉄尾と会う約束をした。あの千年樹の下で。ボクを一人の人間として認めてくれる木の下で。鉄尾はボクを信じてくれた。ボクはその気持ちの答えたい。全力で。だからイジメられても、ボクはあきらめない。元からそのつもりだけど、さらに気を引き締められた。


 山を下っている途中、あいつらと会った。龍牙と鬼次と巳高。相変わらず仲がいいんだね。偽の友達ごっこは楽しいかい?

 相手にするのは非常にめんどくさい。まともに話したくない。ボクの話をまともに聞こうともしない人たちに話す価値すらない。無視して山を下ろう。それがベストだ。今のキミ達はボクの話は聞かないでしょうから。

 集まってこっちに来てるけど、知らないふりを決め込むことにした。

「おい。どこに行ってたんだよ? 心配したぞ」

 心配? 龍牙が? どの口が心配なんて言葉を紡ぐんだろうね? 表情にはうんざりだって書いてありますよ? 気づいてすらいないんでしょうね。自分の顔がどんな風に見えているのか。周りの意見に振り回されているキミは自分がどこにも存在していないじゃないか。

「心配しなくてもいいでしょう? 裏切り者だって思っているなら。本当は気づいているんじゃないですか? ねえ、白心はくしんさん」

 技とらしく名字で追いつめてみると龍牙は焦ってきた。それじゃ認めたようなものだよ?

 言葉を詰まらせてみたところで、何も言えないんですよ、龍牙は。自分の行動に意志なんてないんだから。ただ、命じられるままに龍牙は動いてるんだよね。からくり人形とかマリオネットとかのようだよ。

「あんまりふざけたことしてんじゃねえよ!! 俺様の目の前で!! 」

 いきなり鬼次に蹴られそうになった。

 ボクは空中で体をひねって無事、着地する。

 危ないなぁ。これだから、力におぼれる奴は。もしボクが死んじゃったらどう言訳するのかな? 聞いてみたいよ。

「何か言ってみろよ!! 」

 この状況で何を言って欲しいんだか。ボクに何かを求めないで欲しいな。キミ達だってボクの求めているもの何かくれた試しがないじゃないか。

 くだらない。

 このまま、山を下ろう。


 にしてもまだ、分かってないんですね。ボクはあなたの思い通りにはならないってこと。ボクはボクの意志で生きる。決してキミ達のマリオネットにはならない。絶対に、ね。

 どれだけ傷つこうとも。

 咲かない花でもいい。醜い花でもいい。ボクは自分で歩く道を決めるから。自分で決めた道ならこんなに嫌な気持ちにならずに済むだろうから。


 ボクはただ、人間として生きたい。先祖返りとか関係ない。巫女とか知らない。

 ボクはボクだ。決して誰にもボクを完全に壊すことなんて出来やしない。

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