表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
粉雪   作者: 若葉 美咲
22/48

21話 誘拐


 ボクがもし、ここで裏切り者ではないと叫んだとして目の前にいる鉄尾に届くのか? そんな都合のいいことはない。六華村では皆、信じてくれないじゃないか。ボクの人付き合いが悪かったせいだけど。

 でも、誰もが真実に目をつぶるんだ。自分の安全と幸福を確保するために。

 生暖かい風がボクのほほをなぞっていく。乱れた黒髪が風になびく。涙はどういう仕組みなのかわからないけど止まらない。何で、泣くんだろう? ボクが弱すぎるから? なんて情けないんだろう。

 逃げよう。これ以上人の前で泣くなんて恥ずかしい。ボクは常に笑顔を保つべきなのに。

 帰ろうと振り向いた瞬間、鉄尾に腕をつかまれた。鳥肌が立つ。ボクは人に触れられるのが大嫌いなんだよ。触れないでくれ。頼むから。触れられると寒気がするんだよ。

「離してください」

 満面の笑顔を作る。殺気を放ちながら。ボクに触れないで欲しい。悪寒が体を駆け巡るから。

 鉄尾は無表情でもう片方の腕を振り上げている。しまった!!

 手刀を落とされボクの意識は途切れた。



 目を開けると知らない天井が見えた。白い天井。古そうだ。

 頭が痛む。おまけに夏にしては寒い。気圧も低いようだから山頂の近くに作られた家なんだろう。酸素は若干薄い程度だからまだ自由に動ける。

 さて、ボクを捕まえたのはまず間違いなく鉄尾だろう。あの人の性格をボクは何も知らない。ボクわどうしようとしてるのかすら、予想がつかない。やっかいなやつだ。でも、ボクだってぬけぬけとやられたりしない。ボクにはボクなりのやり方があるからね。なめるなよ。

 にしても、普通は誘拐ゆうかいしてきたやつの隣に武器を置いてくのか? 裏一文字はすぐそばに置いてある。しかも、ちゃんと本物を。それとも、鉄尾もボクと同じように一般とはずれた考え方をするのかもな。怪しいやつなのに変わりはないか。

 とにかく、ここを出るのが一番やらなきゃならないことだろうな。全く、小さいからと侮ることなかれ、ってな。しっかり反省するといい。ボクはここから脱出して見せる。

 隠れる場所は一つしかない。段ボールが積んである後ろ。多分、そんなことは犯人も知っているはずだ。間合いに入ったとたん斬る。スピード勝負だ。


 段ボールの影に隠れる。呼吸を整える。それから息を殺し、気配をたった。裏一文字に手をかけて置く。いつでも抜けるように。

 気配を絶った途端、部屋に飛び込んで来た人影がある。さあ、おいで。切り刻んでやる。


 ボクは負けるつもりなんてないからね?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ