1話 六華村
電車に乗っているのはボク一人になってしまった。
ボクは神崎 空。訳あって、人一人行かないような田舎へ向かっている。
寂しいとかそんな感情はない。ただ、感じるのはかったるさ。六華村で信用できるのは、三人だけ。その三人だって九年会っていないのだから、どうなっているのか分からない。
ボクはあんな所本当に行きたくない。
電車は、トンネルに入ったらしく音が急に耳につくようになった。やたら、うるさい。そのうるささがボクのに現実を叩き込んでいく。
非常に不快な気分になった。なぜボクがこんな目に合わなければならないのか? そんな疑問が口から飛び出そうだった。ギリギリのところで飲み込む。そして、本日何度目か分からないため息をこぼした。もうすぐ、ため息さえ許されなくなるのだからこのぐらいはゆるされるだろう。
ため息さえ許されない。言葉の通りだ。
お祖母さんもお祖父さんもすごく厳しい人だ。六華村で唯一の神社を経営しているから、厳しくもなるのだろう。
確か、あの神社には神話があったはずだ。村人もお祖父さんお祖母さんも真実だと言っていた。おかげで、ボクも真実だと思うようになってしまった。そう、吹き込まれたのだから、しょうがない。それに何よりボク自身がそれを証明している。
神話の内容を思い描く。
昔。まだ、聖獣が地上に存在していたころ。六華村は荒れていた。
村人は飢えに苦しみ死に怯えていた。三匹の聖獣がいたからだ。
龍は村人に水を与えず、自分の山に水を一人占めにしていたのだ。
鬼は、村人が作った食料を大量に盗んでいった。
巨大な蛇は、もう一本の川にひそみ水を汲みに来た人を喰らっていた。
人々は大変困り、天の神々に願いをかけた。
不憫に思った太陽神は一匹の妖狐に使命を与えた。その村を救えと。
妖狐は悩んだ。冬のある日その村を見に行った。そして、その有様に息をのんだと言う。
妖狐は太陽神にもらった鉄を溶かし、鏡を作った。鏡を雪に六日沈めた。そうすることで妖力を高めたのだ。
鏡を使い、未来を変えた。鏡にうつった苦しむ人々の未来をすり替えたのだ。
妖狐はそれから、戦いにいった。
倒した聖獣を永遠に服従させた。
そして、忠誠を誓った三匹に自分の体を預けました。それが、誓いの証だと言って。
三匹はさらに、妖狐の子孫を守ると誓いをたてまいた。
妖狐の血と雪が混ざったところから、妖狐のこどもが生まれました。
それが、神崎家の子孫だ。
神話にボクの家の名前が出てくるのがとても不思議な感じがする。
そんなことを思っていたら、電車がゆっくりになった。
どうやら、駅が近いらしい。やっとか。
ボクは立ち上がった。やたら、長かった電車の旅がここで終わると思うと、開放感しかなかった。
あちらこちらが痛む。
それでも、やっと電車の揺れから解放されると思うと降りる支度にそこまで時間を使わなかった。




