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粉雪   作者: 若葉 美咲
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18話 力

 キミたち、今更驚いているの? ボクの力をあなどっていたからでしょう?

 どんな気分なんだろうね。裏切り者だと思っているボクに助けられるっていうのは。最高だよ、その間抜け面。消えればいいと思ってる人に助けられたら、恥ずかしいと思うよ。

 裏一文字は誰にでも使えるもんじゃないもんね? そんくらいおバカな龍牙も知ってるもんね。でも、そこまでボクを驚いた目で見なくていいよ。気持ち悪いから。


 皆何か言いたそうだね。まあ、何にも言わなくていいよ。どうせ、そんな勇気すら持ち合わせていないのでしょうから。ボクの声はキミ達の耳に届いたことなんかないじゃないか。

 ボクが先祖返りだから特別なの? ボクが人間じゃない力を持ってるから信じてくれないの? ボクが妖の血も混ざってるから裏切るもんだと思ってる? ボクとの約束は守らなくてもいいの?

 可笑しいよ! ボクだって人間なんだよ! ボクは、普通で居たいのに、どうしてどうして、ボクなの!?

 ボクがたくさんたくさん言った言の葉は半分以上キミたちには届かなかったでしょう? 始めから聞く気などないくせに。なんで、側にいる、守るなんていうの? どの辺が守れているの?


 話したって意味がないんだよ。届かない言葉なら。伝わらない表情なら。昔からそうだったからボクはあきらめた。キミ達にボクの意志を伝えること。だから、ボクはキミ達には笑顔しか向けないよ?

「なに、笑ってやがる!? いい気になるな、裏切り者のくせに!! 」

 怒った顔をしたら、いい顔が崩れますよ、鬼次先輩。

 無様だね。反撃すらできないから、脅しや暴力に走るんだよ。つまり脅しや暴力に走るひとは自分が弱いこと認めてることになるんだ。簡単なことさ。でも、気が付こうとしないだけ。臆病おくびょうだから。自分とまともに向き合うことさえ、怖がっている。

 鬼次先輩はボクのみぞおちにこぶしを入れようとしてきた。そんなのボクは軽々と回避する。当たり前だ。一対一なら、この村の誰にも負けないという自信がある。ボクは強い。村を離れていた九年間何もしていないと思っていたのかな?

 付き合ってられない。ボクはきびすをかえした。

「もう、寝るね。皆もお休み」

 明るく告げる。顔は見えていないだろうから無表情で。


 キミ達はボクが無表情なことに気づこうともしない。不満を口にしながら離れて行く。ボクが放った言葉の真意すら知ろうとしない。都合よく逃げ続けるんだよ。

 無性に腹が立った。ボクは道具としてか見られていない。たまらなく悔しかった。知らないくせに。知ろうともしない。真実を知ることを拒むんだ。自分の心を守るために。周りの心などお構いなしなんだ。自分の安全のためなら、ボクが壊れようと使い物になればいいと思っているんだ。六華村にはそんな風潮がある。

 嫌いだ。誰かが悲しまなければ成り立たない世界なんて壊れてしまえ。


 不満と寂しさで心が荒れている。そんな時に最も会いたくない人物が歩いて来た。お祖母さん。ふざけている。この状況でこの人の相手をしたくない。何よりボクが裏切ったと言われてから一度も話しかけようとしなかったのに今更何の用があるって言うんだ。

 そのまま通り過ぎるのが賢明か。

「待ちなさい。あなた裏一文字が使えるんですってね? 」

 なるほどね。この後に及んでまだ、ボクを道具として使おうっていうのか。あきれて物も言えない。ボクはキミの思い通りにだけはならない、お祖母さん。

 ボクが裏一文字が使えるからって態度を急変させて。自分の信念という物が欠片も見つけられない。ボクはそのまま歩き続けた。

「今日はもう疲れていますから、また後日」

 これで満足だろうか?

 でもボクは話すなんて一言も言ってないからね?

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