15話 文化祭が見せる夢
平凡な毎日を送っていた。特別な何かはない。
夏の暑いひ。もうすぐ夏休みだというのに何故ボクはこんなことをしなければならないんだ。
そう。我が校はもうすぐ文化祭である。非常にめんどくさく、暑苦しいあれである。ボクは学生として、強制参加だ。これだけは理不尽極まりない。
しかも、ボクらのクラスはお化け屋敷をやるらしい。でも、残念なことにボクまで仕事が回ってこない。何でだ?
声をかけても皆いい顔はしてくれないな。自分でやることを見つけないと、何にもできないじゃないか。でも、何をすればいいんだ? やることが分からない。しょうがない。それだけでも誰かに尋ねないと。そうだ、雲井 月がいるじゃないか。月はボクにも普通に接してくれる。通称ツッキー。
ツッキーを探せば何か仕事をゲットできるかもな。
にしても、ボクが神崎家の子で先祖返りだから皆よってこないのかな? 先祖返り。先祖の妖怪の力をもって生まれた子。意外に不便だ。
お。いたいた。
「ツッキー。ボクにも仕事をくれ」
口調が。うっかりし過ぎた。
「お。いいね~。やる気まんまんだねえ。そいじゃ、これ、紫に塗っといて。隣で私もやるから」
渡されたのはマネキンの首。こ、これを紫に染めるのか。正直無理な気が。
でも、ツッキーはマネキンの首をあと五つも抱えている。ダメだ。ここはボクが頑張らねば。そう思い、紫のペンキをたっぷりと筆に含ませる。かなりどろりとしていた。それをマネキンの首に塗っていく。うわ。かなりグロイ。しかも、目の部分は塗らないとか。白目じゃん! めっちゃこっち睨んでくるんだけど。いやいや、こんなんは人間が作ったもんだから。…、でも、本物より怖いかも。無機質すぎて。
髪の毛もくしゃくしゃにしないといけないのか。これ見たら、怖がりな子本当に泣いちゃうかもしれないな。平気かなあ。
仕上げにどす黒い赤色を散らす。殺人をおかしたマネキンだ。でも、テーマはマネキンが夜な夜な動き人を喰うって設定だから丁度いいのか。
あと、もう一個ぐらいは作れるかな。
「ねえ、ツッキー。ここはどうするの? 」
「ツッキー」
「ツッキー」
うおお。ツッキーが囲まれてるぅ! どうやってマネキンの首取りにいくの?
「あ。空~。これの作り方説明しといて」
いきなりボクに振るのか!?
まあ、それも悪くはないか。
遠慮勝ちに皆が集まってきた。ボクは皆が分かりやすいように説明した。
こんな幸せな日々が続けばいいのに。
柄にもなくそんなことを思ってしまったのはきっとこの暑さのせい。ボクは今、真夏の夢を見ているんだから。




