13話 新学期始まります
今日は入学式だ。学校の中は保護者もいた。ボクの保護者は来ない。別に悲しくはない。むしろ、自由でせいせいするね。
入学試験は一位で通った。もちろん、特進クラス。いつか、この村から、逃げてやる。都会の大学に進学するんだ。そして…。
ボクは先生やクラスの人に挨拶した。
皆ボクが神崎家の人間だからよそよそしい。早速ボクの悪口を言っている。家の力で一番だったとか、王女様きどりとか。仕方無いだろう。ここにしか高校がないんだから。それにボクの成績はボク自身の実力なんだけど。信じてくれないかな? 無理だよな。すごく気持ち悪い。
皆、上辺だけはニコニコ挨拶しておきながら、少し離れるとそういうことを言い合うんだ。
まあ、ボクよりましなのは確かかな。ボクは笑顔を振りまくんだ。偽りの。内心全員のことを観察してる。言葉や態度で敵を増やしていくんだ。面白いからいいけどね。そう、とても面白い。ふふふ。
ホームルームの時間。最初はセオリーの自己紹介。セオリーすぎてつまらない。
うわぁ。龍牙と一緒のクラスかよ。やってらんないな。これもきっとお祖母さんの計らいなんだろうね。にしても、キミも大変だね。だって、お祖母さんの言うことになんでも従っているんだから。自分で考えることを止めてしまったんだよ、龍牙は。
だから、結局、退屈なのに変わりはない。
皆ウキウキしているのにボクだけ沈んでいる。下手に関わるのが怖いらしく、誰も話かけてこない。楽でいい。この温度差ももうなれた。
一人ボウっとしてたら前の席の女の子が急に後ろを振り向いた。確か、自己紹介で雲井 月って言ってた気がする。
「神崎 空さんだよね? 空って呼ぶね。これからよろしく! 」
明るい子だ。にしてもボクに簡単に話かけてくるなんて六華村の人じゃないな。他から止めろとか言われているのに本人はまったく分かっていない。こういう子なら信じてもいい気がするけど気を付けないとね。
「はい。よろしくお願いします。雲井さん」
笑顔で対応する。無視なんてしないですよ? さすがにそういう奴だと思われたくないし。
「溜口でいいですよ! 」
ふふっ。いい子だな。純粋でかわいらしい。ボクには似あわない純粋という言葉がぴったり当てはまっている子だ。少しだけ、ほんの少しだけうらやましく思う。
敬語なのは変わらなかったけど、月とは楽しく話せた。うん。中々いい感じだと思う。こんな感じで学校に友達ができるといいなんて都合が良すぎるかな。




