9話 決裂
お祖母さんがいる部屋の襖の前に正座する。この座り方何だか久しぶりだ。
「空です。ただ今、帰りました。入ります」
一声かける。礼儀として。
襖を両手で開ける。閉めるのは唯花がやってくれた。
さらに奥の方にお祖母さんは座っていた。
高価な物など一つも置いていない。けれども、とても気高い雰囲気に包まれる。ボクはあんまり好きじゃない空気だ。相手に圧力をかけて言うこと聞かそうとしているみたいだ。
お祖母さんに貼り付けの笑顔は無意味だ。無表情の方がまだましだ。その場に手をついて深々と頭を下げる。
空気がピリピリしてる。やっぱり苦手。
「顔を上げなさい」
凛とした声がボクの鼓膜につきささる。お祖母さんはなに一つ変わっていないようだ。良いところも悪いところも。
「九年前、あなたがこの村を出て行き、どれだけ大変だったことか」
それはお祖母さんの感想でしょうに。ボクはあの時、確かに何かに怯えていたんだよ。だから、この村を出たんだよ。そのことを知って欲しい。
「だいだい、便りも寄こさずにすむと思っているのですか? あなたはこの村に無くてはならないのですから、こんなこと許されないんですよ? 」
はい? 今なんて言ったんですか、キミ。この村に無くてはならないとかほざきましたよね? 所詮ボクはこの村の都合のいい道具ということですね。
「分かりました」
「はい? 何を分かったと言うのですか? 」
これ以上お祖母さんの話を聞きたくない。遮ってしまった。
まあいいか。丁度いいや。ごめんねお祖母さん、ボクは九年前とは違うんだよ。
「お祖母さんがボクのことを道具だとしか思ってないことが」
さあ、どんな反応を見せてくれるのかな、キミは。怒るでもいいし、泣くでもいいよ。ボクを楽しませてよ。もっともっと。
「当たり前です! 」
へえ。当たり前とか言っちゃうんだ。やばいわー。お祖母さん尊敬する気になれないわー。人のこと道具としてしか見れない人は周りから見捨てられるんですよ? ボクには関係ないけどね。
「それより、ぼ、ボクとはなんですか!? 私と言いなさい」
あ、そっちですか。つまらないな。キミも結局は逃げたんだよ、ボクからね。
「そ、それに…」
話の途中っぽいけどボクは立ち上がった。最早、聞く価値すら見いだせない。聞いても、無駄。ボクの得になることはないよ。むしろ大損害だ。
お祖母さんはまだ、話を続けようとしている。戻れ、とか言っているよ。あははは。戻る訳ないじゃん。
一つ、覚えておきな、お祖母さん。ボクは誰の命令も指図も受けないよ。
襖を出たところで振り返って、笑った。お祖母さんが固まる。
「そうそう、お祖母さん。ボクの守りはいりませんから」
それだけ言うと踵をかえした。




