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第23話『パーフェクト・トレジャー』

(・Д・)ひさびさ

【大和、状況】

ケラスス()・リーダーより各騎、現隊列を維持。防衛ライン到達までに会敵の場合は随時支持を出す』

【『最も深く闌けき坩堝』と呼称される次元歪曲空間において、氾濫(オーバーフロウ)が発生。作戦行動中であったM.F.A.が装備換装を行うため撤退を開始。その支援要請を受けての遅滞戦闘が今作戦の概要となっています。どうみても◯◯分間生き残れ系です。本当にありがとうございました('A`)ヴァー】

【 (´・ω・)うん、知ってた】


 郷志は前方を往く騎体を視界に収めながら、大和に状況の確認を行っていた。

 その間にも隊長騎に搭乗する櫻子からの指示が飛ぶが、いつも通り(ゲーム同様)会話内容を一応頭に入れつつ、同時進行で大和との作戦会議を行っていた。

 無論、音声ではなく履歴が残らないように配慮して、大和の入っているタブレットに文字入力&文字表示で、である。


【と言うことは、「アレ」か】

【「アレ」ですね】


 大和との会話で確信した郷志は、周囲に表示されている外部映像とそれらに伴う各種データを確認しながら、騎体の調整を行い始めたのである。


『ケラスス・リーダーより各騎。方位2時15分、敵性体4(フォーボギー)レーダーに捕捉(コンタクト)

『ケラスス・2、コピー』


 郷志たちM.F.L.五騎の編隊が仮想空間の『坩堝』内を低空で往く中、リーダーである櫻子から敵性体を探査範囲に捉えた、との通信が入った。それに二番騎の竹内文子が応え、他の騎体も順次応えてゆく。


「ケラスス・5、コピー」


 同じく応えた郷志が意識をそちらに向けると、周辺を走査したデータが強調表示され、彼の乗る騎体を中心に、すぐ側に味方機が4つ、そして走査範囲ギリギリの領域に、敵性体であろうと思われるエネミー表示が4つ浮かび上がったのである。


「ケラスス・5よりケラスス・リーダー。先行します」


 敵性体の反応を見て取った郷志は、隊長騎である櫻子にそう告げると、返事を待たずにスロットルを全開にしたのだ。


『なに――了解した、ケラスス・5』


 そしてまさかの承認である。何を勝手な事をと言われるものだとばかり思っていた郷志であったが、拍子抜けである。


「って良いんですか?」

『何か策があるのだろう? その様子(・・)を見ればそれくらいは、な。何をするのかまではわからんが』

「はあ、経験則と言いますかなんと言いますか。まあ見てのお楽しみ、というわけにはいきませんでしょうから――大和」

【了解、データ転送します】

『……ふむ、なるほど――ケラスス・リーダーより各騎、ケラスス・5突入後、三角錐陣形で追随する。以降、全武装発砲自由オールウェポンズフリー

『ケラスス2了解(ウィルコ)


 郷志との通話を切り上げた櫻子は、送られてきたデータを一瞥するや即座に方針を改め、追随する各騎に指示を与えた。そしてその応答を聞きつつ、加速していく郷志の騎体が吹き出す魔力炎に目を細ませていた。


目標視認(タリホー)攻撃開始(アターーック)!」


 敵性体へと接敵した郷志は、いつも通り(・・・・・)射撃を開始した。

 操るM.F.L.、スメール級の腕部には、本来の主兵装であるMk.45速射魔導砲――郷志の改変により五〇口径二〇糎連装魔導砲と上書きされていたが ――ではなく、対空兵装として使われる四〇口径八九式十二糎七高角砲が顕現していた。

 対空兵装は本来ならば近接防御火器システムMk.15と呼ばれる多砲身魔導砲が装備されているはずなのであるが、これも郷志によって上書きされていた。

 通常であればコンピューターアシストによる射撃管制によって逐次接近する敵性体及び敵性体が放つ生体誘導弾頭等を狙い、撃ち落とすのだが。

 郷志は己が乗るスメール級のその腕に顕現した連装高角砲を軽く振り回しながら、照準を合わせること無く、充填された魔力弾を解き放ったのだ。

 出鱈目に振り回して放たれたかのように見えるそれは、まるで吸い寄せられるかのように敵性体へと突き進み、その全てが着弾、敵性体の注意を引くことに成功したのである。


「必殺! 自力マルチロックシュート!」

【相変わらず出鱈目な……】


 テキトーに振り回したかに見えてその実、郷志は迫る全ての敵性体をなぞるように砲身を振り回し、神がかり的なタイミングでトリガーを引き全弾を敵性体へと着弾せしめたのである。


「っしゃ! 逃げるぞ!」

【ラジャ。追随してくる敵性体、脱落はありません】

「ふふん、計画通り」


 坩堝における敵性体の行動パターンの一つに、攻撃を受けた際の報復行動というのがある。

 一度攻撃を受けた敵性体は、他から更なる攻撃を受けるか、攻撃を加えたものが視界から消え去るか、どちらかが討滅されるまで、追い続けるのだ。


「追いつかれない程度に逃げつつチマチマ削っては避ける!」

【チーム戦時の定番、囮大作戦ですか。有効な手段ではありますが】

「おう、そのための騎体調整ですしおすし」


 元のゲームにおいても、これは定番中の定番であった。

 溢れ出てくる敵性体を囮役が一撃を加えることで気を惹き、そして逃げる。

 これにより、他の味方騎はフリーな状態で敵性体に打撃を容易に加える事が出来るという寸法なのだ。


「まあ囮役が何処まで避けきれるかによりますけどね、っと!」


 言いながらも騎体を捻り、敵からの攻撃を避けつつ反撃を行う。

 言うが易し行うは難しとはよく言ったもので、この作戦は本来、囮役が損耗し脱落することが大前提である。

 囮役は敵性体を惹きつけ、その身を削って攻撃の機会を味方に与え、役目を果たして落とされる。

 そして順次その役を引き継いだ騎体が同様の行動をとってゆくのだ。

 生命の危機のない、ゲーム故の発想なのだが、ゲーム初心者から中堅どころ程度のプレイヤースキルの者達にとっては、得点を稼ぐ意味では実に有用な作戦であったのだ。


【上位ランカーの方々はこんなプレイをしなくとも更に高得点を得てましたが】

【しょうがないんや、ぼっち奏者(プレイヤー)の宿命なんや……】


 器用に回避行動を取り続けながらも大和との文字会話を続けるあたり、まだまだ序の口というところなのであろう。

 郷志にもトップランカーの知人はいたが、尽くがソロプレイ重視の者たちばかりで、チームプレイにおいてはその場限りの臨時チームでしか経験がなかった。

 ゲームにおいてこのタイムアタックは、オリジナル機体での参加も出来たが、その記録はあくまでも参考記録としてのみ残され、正規のランキングには上らない仕様であった。

 正規のランキングとして反映されるのは、デフォルトで用意されている騎体を好みに応じで調整したモノのみだったのである。


【弄り倒した自騎での無双はみんなやってたけどな……】

【記録としては残りませんから、あくまで自己満足でしたものね】


 超高性能騎での無双もたしかに楽しかったが、それは長く楽しめるものでもない。

 ある程度の域に達すると、どこぞのリアルロボットアニメの渋い名脇役大尉の台詞が皆の脳裏に蘇ってくるからだ。


【見事だな! しかし小僧、自分の力で勝ったのではないぞ。その騎体(モビ○スーツ)の性能のおかげだという事を忘れるな!、か】

【みんなして言い合ってましたものね。オリ騎で記録超えられるたびに】

【この鴫野郷志!たとえスメール級(デフォルト騎体)でも任務はやり遂げてみせる!!】

【死亡フラグ満載ですからやめてください】


 郷志が回避行動に専念しつつも文字会話を続けながら逃げに徹している最中、後方から火線が迸った。


「――味方騎、攻撃開始。マスター、敵性体3(スリーボギー)11時方向上方イレブンオクロックハイレーダーに捕捉(コンタクト)

「了~解っ!」


 敵生体の反応を確認するや、即座にそちらに回頭する。無論、追随してくる敵性体を脱落させること無く、である。


「追尾する敵性体、3――1、0です、マスター」

「よっし、さすがいい腕してるわ。次行ってみよう」


 郷志が引っ張る敵性体を、的確に落としてゆく味方騎に感嘆しつつ、彼は更なる敵性体の注意を惹くべく騎体に加速をかけた。


「レディ。インフォメーションメッセージ・敵性体5(ファイブボギー)3時方向(スリーオクロック)敵性体2(ツーボギー)12時方向(トゥエルブオクロック)レーダーに捕捉(インサイト)

「どんどん出てきたなぁ……って言うか、設定したのオレだけど、いきなり片言でしゃべりだすとちょっと不安」

「搭乗者の意向を無視するルーチンは組み込まれていません、安心してください」

「安心できねぇー」


 などと大和と漫談しつつ、敵性体のワンパントレイン状態を続け、半ば標的曳航機状態と化しながらもすべての攻撃を避けまくる郷志であった。

(;´Д`)用語等はふいんき(なぜかry的なふわっとしたアレで

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