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君想いショコラ verモデル真澄&楓太  作者: トムトム
商品開発・CM制作編
5/6

本音言うと、逃げ出したいの。Bダッシュで。

初回の打ち合わせの後、私と楓太は別のスケジュールでCMの撮影に臨む為の準備をしていた。

そんな私は、ここ数日……コンビニ会社で職場体験というか、行儀見習い。

ここに来る前にモデルの先輩だった里美さんに事務のイロハを教えて貰ったけど、そんなもの全くとは言わないけど役に立っていないと思うの。

唯一役に立っているかもって思えるのは、コピー取り位なものだ。

後は……もう全く訳が分からなくってどうしていいのか分からない。

私を置いてくれている部署は、今回の企画を担当している部署なので私が失敗をしても

「大丈夫だよ」「こうしたらいいんだよ」って親切に教えてくれる。

ドラマのゲスト出演でOLを演じた事はあるけれども、それよりも現実ははるかにスピード勝負なものだった。

通常の私の仕事とは大違いだ。比較的のんびりと進行していくのが基本だ。

例外はファッションショーの時だ。アレは本当に戦場で私の性格には合わないので極力ショーモデルの仕事を受けないようにして貰っている。



ようやくランチタイムになった。社員食堂という便利な施設が最上階にあるので、私も使わせて貰っている。

皆さんは、社員証のバーコードをかざすと給与天引きになるという。

私は……仮の社員証なので、現金で清算する。

今日の私が選んだのは日替わりランチ500円とドリンクバー100円。合計600円。

これ……ファミレスだと千円は越しちゃうよねって感じだ。

ランチのメインはオムライス。それにサラダとコンソメスープと小さなコロッケ。

ここの食堂は、ちゃんと頼んでから作ってくれるから出来上がりを食べる事ができる。

他には、和食の定食もあるし、中華の定食もある。子供の頃のデパートの食堂に近いかも。

有難い事に、カロリーも塩分も食物繊維もアレルギー表示もされている。

「まさみさん、こっちですよ」

同じ部署の方が私を呼んでくれる。今の私は一応変装はしているし、名前もまさみと替えてある。今の私の姿は、絶滅危惧種な女子高生の様にきっちりとおさげ髪に分厚い眼鏡だ。

服装の方は、里美さんが使っていたというリクルートスーツを借りている。

膝上のタイトスカートなんて久しぶり過ぎて動きにくいなあと思う。



「仕事分からないから大変でしょう?」

「でも、皆さんの足を引っ張らないようにするのが精一杯です」

私はそう言って、オムライスを一口頬張る。

私なんか大した仕事をしている訳じゃないのに、お昼になるとちゃっかりとお腹が空く。

それで、たいして仕事をしていないのに17時が過ぎると帰っていいよって帰される。

皆は仕事をしているというのに。そんな自分が本当に嫌になる。

「でも……本当に何にもしていないから」

私が頼まれているのは、コピーを取るのと、郵便を出しに行くのと、古い書類を資料室に運んだ……それ位。

「何も知らない新人よりはやっているのにね」

「そうよ。頼んだサイズでちゃんとコピーしているもの。知っている?B4でコピーって指示をしたら地下4階なんてありませんって反ベソをかく新人がいるとか言ないとか」

「おじさんたちなんて、コピーじゃなくて、焼いて何ていうものだから本当に火を付けちゃうとか……まさみさんはそれがないんだから……もしかして、事務所で練習した?」

「ここにくる前日に少しだけ。くれぐれも粗相のないようにって、これでもかって言われた意味が今は分かるわ」

ドリンクバーのカフェラテを一口飲んだ。ラテの甘さが体に嬉しい。

「私たちだって新人時代にいろいろやらかしたわよ」

「そうそう、真っ白なファックス送ったりね。もうやらないわよ」

そうやって彼女達も自分の失敗を教えてくれる。

「本職で失敗ってありましたか?」

「一杯よ。転んで服を破いて結局買い取りになったり、ショーで転んでパンツ見られたりとかね」

皆が一瞬にして凍りついた。まあ、パンツ見られたは結構辛いと言えば辛いけど。ショーのバックでは下着姿で衣装探したりする事もあったりなかったりだから……。

「そういえば、彼氏っていないのですか?」

「あら?私いないわよ。こんなガサツな性格だからね。この業界から干されたら本当にどうしたらいいんだろうって考えたくなるわよ」

「でもまさみさんは未経験の私達の仕事を必死になって覚えようとしている位だから新しい仕事を始めても頑張れると思いますよ」

ガールズトークには程遠い会話をしているけれども、本音はどうなんだろう?

お腹の中には黒い本音が潜んでいる事があるんですよ、本当に厄介だよね。

皆に気が疲れないように私は溜め息をついた。



私にはOLは向かないよ。逃げてもいいのなら……Bダッシュで逃げてもいいですか?



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