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君想いショコラ verモデル真澄&楓太  作者: トムトム
商品開発・CM制作編
4/6

やればいいんでしょう?やれば

「でもさ、社長の前でやりますって言ったでしょう?」

私はまだやらないって言っていないっての。本当、今日の楓太は本当にいらつかせる。

「だから、やらないって言ってないじゃない」

「そうだよ。楓太、まずは来週のCM撮りまでシナリオのプロット詰めないと」

はあ?今……来週CM撮りするって言いましたか?

今日は、木曜日なんですけど?どんだけのんびりなんですか?

「シナリオ……完成するんですか?」

「多分ね。大まかな設定を僕らが今これから決めていくだけだから」

「はあ?楓太、あんた……そこまでやるの?」

「折角だからやってみようって。男子チームには先輩方なので、手を貸してませんよ」

頭痛が痛い。日本語的にそんな表現がない事位、私だって分かる。

でも、頭痛が痛いって言いたい位に頭を抱えたくなる。

今日無事に家に帰れるのだろうか?ふとそんな事を考えたくなった。

「まずは、真澄さんはこれを食べていて?試作品ね」

楓太は私の前に試作品の君想いショコラを1個置いた。

今回のパッケージは真っ白い箱の中に入っている。

箱を開けると、黒いプラスチックケースがまた出てきた。

それを開けると、箱の下からメッセージカードが入っている。

それを捲ると、あなたの大切な人と蕩ける時間をお楽しみくださいと書かれていた。

なっ、何?このメッセージ。こんな事を書かれていたらちょっとイケナイ妄想をしたくなってしまうじゃない。

最初からカップルが購買対象とターゲットを絞っている訳か。

だから、最初から見えないように隠されているという演出にしたのだろう。



プラスチックケースを開くと、そこには見慣れた初恋ショコラなケーキとその上にちょこんと乗っているハートの形の小さなマカロン。白いマカロンは……確かバニラ味だったはずだ。これだけ思わせぶりなのも今シリーズにしては初めてなのではないだろうか?

ちなみに、男性アイドルの方は、最初の箱が白ではなくて、赤なのだとか。

なので、最初からどっちのCMを見て買おうと思ったのかが分かるらしい。

それだと、白の私は不利になるのでは?

「その為の僕です。先輩方は女性を起用すると大変な事になります。ですが、女性の場合、ビビッドの誰かであれば、ずっとCMに起用されているので問題はありません。結果的にマカロンもあるので、僕になりましたけど」

なんか、何気に売り上げの数字を気にしていそうな言い方するな。

軽い気持ちで受けた自分がだんだんいい加減な人間に見えてしまうのは気のせいじゃないと思う。

楓太の先輩達……私には後輩なのだけど、あいつ等のCMが気にならなくもない。

「楓太はあいつらのCM内容知っているの?」

「クリスマスの設定のシチュの続編もありの新作設定もありですよね?」

「そうだね。そんな俺は全部知っているけど、楓太には教えない約束になっている。別に売り上げ数で競う訳じゃないから。中に書いてあるメッセージも違うんだよ」

やっぱりね。あっちはもっとドストライクな書き方なのだろうと思う。

「あっ、そう言う所に遊び心があってもいいかなって。製品はバーコード管理するから売り上げ数は分かるけど、それはこっち側の話で、タレントさんのプレッシャーにさせる気はないんだ。そんなに深刻に考えないで」

シナリオの設定とかは、彼らに任せたとして……私は何をした方がいいだろう?

私はモデルだ。だったらその経験を生かして、衣装を考えるのもいいだろう。

私は、紙を貰って、思いつくパターンをどんどん書いていく。

同僚役に自社タレント総出演(数秒程度だからギャラがあるんだかどうなんだか)

事務所のHPをスマホで開いて、各キャラクターに合いそうな衣装案を出していく。

会社の設定……まずは商社と想定してみる。

男性はスタイリッシュだけど、清潔感のあるスーツに本人に似合いそうなネクタイ。

女性は、総合職はかっちりとしたスーツにスカーフとかでアクセントを付ける。

人によってはスカートだったり、パンツだったりと替える。

事務職の役になりそうな子は、フェミニンな印象を与えるカジュアルなラインを。

仕事をしているので、手元に目が行く事があるので、ネイルはあえて控えめにする。

実際には違うだろうけど、CMなのだから普通のシンプルなネイルでいいと思う。

ヘアースタイルは、ダウンにしたり、ハーフアップにしたり、編み込みで纏めさせたり。

私の場合は……女性らしいパンツスーツを着る設定にしてある。髪の毛は普段はロングのストレートなので、思い切ってアイロンで巻いてみてもいいかと思う。

メイクは、全体的に抑えているけれども、口元だけは自己主張をさせる。

同時期に、契約している化粧品メーカーでも新色が出るので、そこの製品が使用できないかお願いしてみようと思う。

女性はモデルなので、契約しているメーカーがあるので、そこをメインに使えるように配慮をして貰うって隅に書き込んでおく。



「真澄さん、何をしているんですか?」

「シナリオは分からないから、私でも出来る事をしてみた」

と、資料に書いてあった分のタレント全員の衣装のデザイン案を彼らに見せた。

「えっ、これって全員分」

「はい、CMしているメーカーさんのはそのまま使ってもらえるようにしてイメージしました」

それと、デスクのイメージもデッサンで簡単に書いたので見せてみる。

「オンは出来る女……ですか。でも、携帯ホルダーがファンシーグッズって言うのがいいですね。ここのグッズってうちのコンビニのキャラクターで作ってもいいですか?」

「構いませんよ。CMなのでそういう遊び心があってもいいですから」

「ってことは、誰かが持っているクリアファイルもお菓子のフェアで貰えるものの残りを出して貰えますか?」

「残りじゃなくて、サンプルで残してあるのでそれをランダムにちりばめましょう」

「それと、女の子のデスクのうち一つをコンビニで発売しているお菓子がふんだんに入っている籠を一つ作って下さい。オフィスならそういう子が一人いてもいいでしょう」

「それと、飲んでいるドリンクも紙パックがデスクに置きっぱなしでもいいでしょう」

「それは自社ブランドがあるのでそれを有効に使えますね。」

「ええ。自社ブランドの製品を各テーブルに1アイテム置けたらいいですよね」

商社でも、コンビニのCMなので自社製品をフルにアピールする場所にして貰えたら……と私は考えていた。

「なので、タレントの一人に肉まんを食べさせたり、休憩コーナーでパスタ食べてもいいと思うんですよ」

「真澄さん、何気ないアイデアですが、何気ない販売促進になります。良く気が付きましたね」

「期間限定のお祭りならば、それを最大限開き直って商品お披露目的なCM でもいいと思うんです。メインはもちろん君想いマカロンですけど、何気なくアイテムが映り込んでいてもいいと思うんです」

「ってことは、このショートタイプCMで自社製品は何アイテムあったでしょうってクイズを出してもいいでしょう。優勝者には抽選でオリジナルアイテムってのはどうでしょう?」

「お祭り企画としてはいいですね。では、そのアイデアは上司に打診してみますが、あの人はこういう事は好きなのでありと考えていいでしょう」

「オリジナルアイテムは何にしましょう?」

「オフショット写真集ってどうですか?たとえば打ち合わせのシーンとかいろいろとって行くんです」

「それおもしろいね。男子チームでも同じように作れるのであっちにも打診してみましょう」

私が何気なく思いついたことでさえも、どんどんアイデアとして採用されていく。

楓太がこのシリーズにのめり込んでいく理由が分かったけれども、それだけに怖くなる。

だって……私は期間限定のスポット要員。

それだけに責任は重大だ。制作期間も制作予算も限られている。

やっぱり……ミスキャストだと思う。



「真澄さん、今更下りるなんて言わないですよね」

楓太が私の事を見透かしている様な言い方をする。

言い当てられたのでドキリとする。

「どうして?そう思うのよ」

「自分にも責任が負わされると分かって逃げ出したいでしょう?ダメです。逃がしません」

「はあ?」

「だって、あなた社長にやるって言ったんでしょう?」

そうだ、社長にやりますって……私言ったんだ。ダメだ、逃げられない。



「分かったわよ。やればいいんでしょう。思い切り楽しんでやる」

「楓太君、いいキャラクターですね。真澄さん」

「でしょう?この人じゃないとダメなものを作りましょう」

あぁ、どんどん泥沼に嵌っていく様な気がしなくもないけど……私もいい加減腹を括るかと内心諦め始めるのだった。


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