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君想いショコラ verモデル真澄&楓太  作者: トムトム
商品開発・CM制作編
2/6

見た目より女子力が低くてどこが悪い?

「真澄さん、忙しくないんですか?」

「あらっ?そうでもないわよ。アイドルじゃないし」

コンビニ企画の打ち合わせ初日。私は楓太に連れられてコンビニ会社にやってきた。

本当ならば現地集合のはずだったのだが、現地に行く前に事務所に行くと楓太がいた。

で、どうせ同じ行き先だから一緒に行きましょう?と楓太の運転の車に乗せられた。

「本当に免許取ったんだ。しかもミニバン。庶民的というか、実用的というか」

「真澄さんは、何を期待しているんですか?久しぶりにお稽古しますか?」

「いいえ、結構です。時期家元に教えていただくなんて滅相もない」

私が抹茶が苦くて好きではないという事を分かった上で聞いてくるんだから、本当に根性が悪いったらない。

通常は、アイドルなんてキラキラしている職業をしている楓太は茶道の時期家元。

アイドルの時はその事を隠しているので、せいぜい茶道教室の息子に留めている。

事務所でのマナー講座には、こいつが教える茶道教室の男性の着付け教室があるのだが、相当厳しいのが有名だ。

自分自身もキラキラする仕事をしているのに、「かわいいだけで中身がないといずれは辛くなりますよ。事務所の無料講座は受けるべきです」とデビュー直後に平然と言ってのけたのはびっくりしたものだ。



「今日は真澄さんの言うとおりにしますよ。僕のCMのチームがそのまま引き受けるという事ですので指示された通りにして貰えればいいですよ」

「楓太、あんたのCMってあんたも一緒に企画に参加したんでしょ?」

「結果としてです。今回もある程度企画書の内容を考えさせて貰いましたよ」

企画書見ていますよね?と言葉を継ぎ足して楓太は涼しい顔をしている。

楓太がCMしている『君想いマカロン』は去年のクリスマスイブに発売された新作コンビニスイーツ。通常は丸いマカロンがベースなのだが、ランダムにハートの形のマカロンが入っている。そのマカロンは当たりマカロンって呼ばれ、箱の中には直筆の応援メッセージが入っているということで、今回も大人買いに走る女の子が後を絶たないとか。

CMも普通なら3カ月位はそのままな時が多いのに、今回は1カ月サイクルで変わって行く。それも徐々に距離を縮めていくように。毎回、楓太のカバー曲も話題の一つだ。

初恋、探偵物語、何度でも……CMに沿ったフレーズがまた相乗効果で続きが気になるのだ。



「今回は同じ会社の先輩と後輩という設定です。会社には内緒の恋なので会社ではクールに装うんですよ?分かりますか?」

「企画書に書いてある事を言わなくても結構。でも、隣同士で部屋を借りて同棲同然って設定はどうなの?」

「大人ですからその位いいだろうという事にしました。何せロングCMを撮影してから15秒に編集するそうなので、そこは気にしないで」

なに?この子?そんな企画段階から参加していたの?今回のコンビニスイーツでかなり成長したみたいだわ。私はそんな事をぼんやりと考えた。

「さあ、着きましたよ。何か被っておきますか?」

私にニットの帽子を手渡す。

「それ未使用ですから。気にいれば差し上げますよ」

「はあ……それはどうも」

私の頭は小さいから帽子が似合わない。撮影で使用して気に入った帽子は買い取りしている位だ。ニットの帽子はスキーに行って被っていないかも。

その帽子は、模様編みが入っているけれども、量販店で売っているシンプルなものだ。

言われたまま私は帽子を被る。きつくも無く緩くも無く私にはちょうどいい。

「凄く被りやすいわ。あんたこれどこで買ったの?」

「これですか?僕が編みました。ひょんなところから教えて貰ったもので」

自分で編んだって言ったか?こいつ?元から女子力が高いのは知っていたがどこまで隠しスキル持っているんだか。

「楓太がそれ位しても驚かないけど、編みもの教室……事務所にないわよ」

「ある番組の打ち合わせで、担当の先生が趣味で編んでいるのを見て中学の時マフラーは編んだ事があったから教えて貰ったんですよ。空き時間に」

そっ、そうですか。ってことは、これはその作品って事?

「いいの?貰っちゃって」

「構いませんよ。気に入ったのなら。この編み物は、番組のブログで披露しているので隠すことはないですよ。気にいらなかったから巻き上げた位言うのはいいです」

その前に、こいつの担当している番組でブログがあるのは分かるけど、いわゆるオフショットを上げているブログは今までなかったはずだ。

これは、来年度からの新番組の先行ブログってことなのだろうか?

「新番組?」

「はい、昨日国営放送のバラエティーコーナーでお披露目させて貰いました」

楓太に言われて、何となく思い出した。こいつ、4月から国営放送の大人の趣味の番組でトランペット吹くんだったけ?下手だけど吹けますってレベルかと思ったら、小学校からずっと吹いていて、全国大会に出た事があるっていうじゃないか。中学からはアルトサックスも吹いていたってさらっと言ってくるあたりが本当にムカついてくる。

どうやら、その番組で休憩時間が編み物教室と化していると言う事だ。

無駄に女子力が高いから、オネエかと思いきやそこはちゃんとしているようだ。

一度、そこのところをからかったら、本人が本気で怒ったことがある。

アレは私が悪かったと思うから反省している。

無事にコンビニ会社の駐車場に車を止める。今回は私が同伴ということで、先方にお願いしてスペースを借りてくれたようだ。

車を止めるのもスムース。こいつ……やっぱり男の子だったんだと思った時に、ミラー越しに見えた私に向かって言い放った。


「真澄さん?考えていることダダ漏れですよ。それはオフの時だけにして下さいね?」

「言われなくても分かっているわよ」

「本当ですか?見た目の女子力は高いくせに、女子として持っていた方が言いスキルはからっきしダメっていうのは、詐欺以外の何物でもないですよ。せめて料理位は出来るようにして下さいね」

詐欺って何?見た目だけ女子力高いのは、モデルなんだから当然でしょうが?

それにしても、失礼な物言いなのだけども、悔しいほどに言い返す事ができない。

見た目より女子力がなくてどこが悪い?愛すべきおバカさんって言葉もあるじゃないか。

私は何でも完璧にできる女でなくていいのよって思いながら楓太の車を降りた。


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