呼ばれた
その後、祭りの実行委員の人たちに、別で用意していた小屋に案内された。
中は四畳半の和室のみ。
そこに案内され、中に入ると、真っ白な無地の着物を渡され、「着替えてくれ」と言われ、一人にされた。
外はさっきよりも慌ただしく、バタバタしていた。
夜子は、訳も分からぬまま、着物に着替えた。
上下が別れているタイプの着物だったので、楽に着替えることができた。
そして、着替えてからあることに気づいた。
サイズがピッタリなのだ。
……蔵の前で、誰が呼ばれるか、なんて、わからないはずなのに。いや、予め私の服のサイズを知っていたとか? でも、呼ばれるとは断言できないはずなのに、どうして……?
考えていると、小屋の扉が開いた。
実行委員の人だった。
その人は、着物姿の夜子を見た瞬間、少し驚いていたが、「こっちです」と言って、案内し始めた――。
真昼の祖母から、古い鍵と懐中電灯を渡され、「あなたは鵺様に呼ばれた。蔵の鍵を開けて、鵺様に会ってきなさい」と言われた。
お供えものとか、儀式とか、そういうものは、今はいらないらしい。
蔵へは1人で行け、と言われた。
説明が終わり、蔵へ向かおうとしたが、先程から、真昼の顔が暗い。
「真昼、大丈夫、すぐ帰ってくるよ。多分、何もないだろうから」
「……うん。」
かなり不安な表情だったが、納得してくれたようだ。
蔵に到着する。辺りは夜子だけ。残された松明が、不気味に蔵を照らしていた。
恐る恐る蔵の錠前を外す。
全部外したはいいが、どうやって重い扉を開けようか悩んでいると、ひとりでに扉が開いた。
まるで、夜子を招いているようだった。
だが、蔵の中は真っ暗で何も見えない。
そこで、懐中電灯。小さな明かりでは心許なかったが、蔵を見渡す上では問題はなかった。
蔵に入ると、蔵の半分を仕切るように、大きな襖があった。
懐中電灯で引き手を探そうとした、その時。
パッと懐中電灯が消えた。
「あっ……」
思わず声を出す夜子。
仕方ないので、手探りで引き手を探すことに。
「見つけた」
引く手を掴み、勢いよく開いた。
その中には、暗くて全く見えなかったが、中に鵺がいることだけは理解できた。何となくだが、気配のようなものを感じるのだ。
後は帰るだけか? と思ったが数メートル上の所で、何かが赤く光った。
「……えっ?」
そして、中から突風が吹いた。
「きゃあっ!!」
全く身構えていなかったため、吹き飛ばされて蔵の床に身体を打ちつけて気を失ってしまった―――。