表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
  作者: 颪金
14/15

宿題

「夜子ー! 朝日ー!」

 山を降りた辺り、開けたところで、真昼の声が聞こえた。

「真昼!」

 声に気付いた夜子は走り出した。朝日もそれに続く。

「夜子、まさか……元に戻ったの!?」

「うん!」

 ぎゅっと、親友を抱き締めた。

「よかった、夜子……」

 嬉し涙を流しながら、呟いていた。


 それから三日間、夜子は死に物狂いで持ってきた宿題に手をつけた。一週間程宿題を放置したことになり、夏休み的にはまだ余裕があったが、宿題は早めに終わらせるのが、彼女のやり方だったからだ。

「終わっ、た……」

 国語、数学、社会、英語、読書感想文、日記を全て終わらせた。借りていた部屋で、大の字になって畳に寝転がった。

「夜子、やりすぎ」

 ふと、目を開くと、呆れた顔で朝日が見下ろしていた。

「だって、夏休み、楽しみたいじゃん。遊びに行ったりしたいし」

「だからって、これ……夏休みって後二週間くらいあるだろ? 日記まで終わらしてるし……半分は創作か?」

「半分じゃなくて全部」

 監禁されてました、なんて、絶対に書けない。

「前半は創作で、後半は予定。見ていいよ」

「どれどれ……」

 ぱらぱらとめくると、色々書いてあった。真昼と海に行った、小夜の宿題を手伝った、一日中宿題をした、等々……その中に、『朝日とデートした』というページを見つけた。

「ちょっ……」

 頬を赤くした朝日を見て、夜子は小さく舌を出した。

「張り切りすぎ?」

「いや、その、えっと……」

 両手をついて素早く起き上がると、彼の服の袖を掴んで座らせた。

「私、本気だから」

 次いで、にっこりと微笑んだ。


「夜子ちゃん、この度は本当にごめんね」

 帰路につく日。真昼と朝日が乗ったキャンピングカーの前で、真昼の祖母が頭を下げた。

「もういいですよ。お祭り自体は楽しかったですし、だから……次は、別の種類の祭りを行うのはどうです? 鵺も、それを望んでますよ」

「そう? ……考えてみようかしら」

 楽しそうに答えた。


「おばあちゃん、また来ます! ありがとうございました!」

 遠ざかるキャンピングカーの窓から手を振ると、嬉しそうに、手を振り返してくれた。


 町へ向け、車が走る。ふと、外を眺めると、遠く離れた民家の窓から、闇夜が顔を覗かせていた。

 夜子が軽く手を振ると、深々と頭を下げた。

 それは、謝罪の礼でも、鵺に対する敬いの礼でもなく、感謝の意味の礼だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ