作戦会議
「じゃ、作戦会議といきますか。」
テーブルを囲むように置いてあるソファーに座りながら、夕夜が言う。
夕夜の言葉を聞きながら、皆も近くのソファーに座る。
「まず、確認。依頼人は因幡八代。内容は妹・因幡伊吹とその婚約者・神崎秋水の婚約を周囲に認めさせ、婚約式を成功させる事。」
柚葉が言う。
「くだらねェ事に俺様を使うなよなぁ。」
頭をガリガリと掻きながら草芽が言う。
「仕方ないじゃない。八代パパの大和さんは、パパとママのガード。それに対して秋水パパは所詮デザイナー。身分違いもいいとこじゃない。第一、草芽兄ちゃんは依頼にやる気出した事ないじゃない。」
蓮華が言う。
「あーハイハイ。とっとと情報確認といけよ。」
肩をすくめながら草芽が言う。
「まず伊吹。父親の因幡大和は、龍神・シエルと邪神・ユールのガード。母の日向は、華道の家元。兄・八代は白鳳学院の生徒会長、弟・時雨は同じく生徒会の雑用。伊吹本人は、生徒会の書記。と言う名門中の名門。」
小牧が手元の資料を読み上げる。
「次、秋水ね。父親の神崎充はファッションデザイナー。母親の夏樹はメイクアップアーティスト。姉・桜花はトップモデル。秋水もファッションデザイナー見習い兼モデルだね。」
柚葉が手元の資料を読み上げる。
「2人の結婚を認めてないのは?」
朝希が聞く。
「不特定多数。伊吹モテるし。・・・1番厄介なのは月島和音なんじゃねぇの?」
夕夜が答える。
「じゃあ、今回は朝希と小牧でいいんじゃない?」
柚葉が言う。
「そうだね。私達3人がやる訳にはいかないし、夕ちゃんは伊吹ちゃんと秋水ちゃんを知らないし。」
蓮華が言う。
「それでいいじゃん。俺様ラクだし。当日は行ってやるけどさ。」
草芽が言う。
「じゃあ決定ね。草芽、当日はしっかりしてよね。」
小牧は言いながら立ち上がる。
「ところで、2人ともなんで面識があるの?」
柚葉が聞く。「あ、俺、父さんの代理で大和さんに会った事があるんだけど、その時に伊吹と話した事があるんだよ。」
朝希も立ち上がりながら答える。
「私も似たようなもんかな?母さんが充さんの作る服好きで、注文に行った時にね。」
小牧は隣にあるキッチンに行き、冷蔵庫を開けながら言う。
「あ、小牧ちゃんゴメン!お茶切らしてるの!」
蓮華が言う。
「えー・・・じゃあ、買ってくるよ。」
と言うと、小牧はサイフを持って出て行った。
「・・・なんか悪寒が・・・」
公園のベンチに座っていた秋水は悪寒を感じて背後を見る。
が、誰もいなかったので安心して飲んでいたお茶を飲む。
「がはっ!」
秋水は背後から急に首を絞められ、もがく。
「なんでここが!?」
もがきながら、犯人の顔を見ようとするが、見る事ができない。
「おっひさー!」
数秒後に、首から手を離して犯人が言う。
「・・・誰?」
犯人(少女)の顔に見覚えがなく、秋水は尋ねる。
「首絞めよっかなぁ・・・」
少女は秋水の首を絞めながら言う。
「もう絞めてるから・・・」
もがきつかれて、ぐったりしながら秋水が言う。
「あら失礼♪手が勝手に。って生きてる?」
手をパッと離して少女は言う。
「だから・・・!・・・どちら・・・様・・・?」
「ひどーい!ホントにわかんない?」
悲しそうな顔をして少女は聞く。
「桜花と同類・・・なんか嫌ぁ〜な過去が思い出されてきた様な・・・小牧?」
「ぴんぽ〜ん♪少年1人、こんなとこで何してんの?」
「う゛・・・」
「その反応は何かを隠している反応・・・。デート中?」
先程の悲しい顔から、嬉しそうな顔へと変化させて少女・小牧は言う。
「何の事かなお嬢ちゃん。」
「図星?ねぇねぇ図星?」
「いやいやいや、悪の組織から逃げてきただけさ。」
棒読み口調で秋水は言う。
「そなの?じゃあ協力者を呼んであげよう♪」
言いながら小牧はごそごそと携帯を取り出す。
「協力者?」
「悪には悪で対抗すべく、助っ人を呼んであげようとか言う大仏心がわからんのかね?」
携帯を操作しながら小牧は言う。
「お前が大仏なら俺の人生終わりだろ。しかも何となく誰呼ぼうとしてるかわかるし・・・」
呆れた様に秋水は言いながら、小牧が操る携帯を止めさせる。
「細かい事気にすんな♪だって、桜花強いじゃん、悪っぷりが。」
「細かくないし!!俺を放っておいてくれた方がありがたいし!!ってかお前は何でここにいるんだよ!!」
「えー。放っといたら楽しくないじゃん、私が。散歩してたら秋水らしき頭が見えておもしろそうだったから来てみた。」
「頭かよ!!」
「頭デス。頭しか見えなかったもん。」
「俺じゃなかったらどーすんだよ・・・」
呆れて溜息を吐きながら秋水は言う。
「大丈夫。そーゆー勘は外れないから。安心して。」
「安心できねーよ!・・・もうイヤ・・・疲れた・・・」
「疲れたの?帰って寝れば?」
「う゛・・・」
「もしかして最初に戻るってやつ?同じ行動しとく?」
「ほら、夕焼け放送が鳴ってるよお嬢ちゃん。」
「私良い子じゃないからいいんだも〜ん♪」
「うん。確かに。」
「わかってんじゃん。で?少年1人、何してんのさ。」
「お茶がおいしーなー。」
秋水は今までの声のトーンより高くなって言う。
「どこぞのじじぃかよ。」
「う゛っ!腰が・・・。お前早く帰れよ。
「やだ。彼女見たいもん。見たら帰る。」
「何の事かなお嬢さん。」
声のトーンをあげて秋水は言う。
「いや、さっきからもう1人分の飲み物あるから。」
秋水の隣にある飲み物を指差しながら、小牧は言う。
「このお茶あんま見ないから、飲みだめ飲みだめ。」
「じゃあ、バケツ3杯ぐらい一気飲みしてくる?」
「わー嬉しーなー。」
棒読み口調で秋水は言う。
「バケツ3杯はムリだが、2リットル恵んでやろう。ハイ♪」
言いながら小牧は、2リットルのペットボトルを差し出す。
「なんで持ってんだよ!!」
「買ったからに決まってんじゃん。こんなん持ち歩かないから。」
「そーじゃなくて何で今持ってんだよ!しかも同じメーカーの!!」
「偶然同じ物を、散歩ついでに買いに来たから。他に質問は?」
小牧は淡々と答える。
「わざわざ買ってきた物じゃ、遠慮しとくよ。」
「遠慮しなくていーよー。また買えばいいから。」
「・・・ホントにここ通ったの偶然?」
疑いの視線を送りながら秋水は聞く。
「偶然だよ。偶然と偶然が重なり合うとき、人は奇跡と言う。まぁ、あんた探してたけど。」
ケラケラと笑い出しそうな感じで小牧は言う。
「・・・なんの用?」
疑いの視線を濃くしながら秋水は聞く。
「あんたを見つければお茶代がタダって桜花と一緒にいた人が。」
「俺の価値は2リットルかよ!!しかもそんなの偶然でも奇跡でもなんでもねー!!全てわかってやってたんじゃんかよ!!」
「ここ通ったのはマジで偶然なんだけどねー。まぁ、冗談は置いといて。」
「冗談かよ!!どっから冗談なんだよ!!・・・もうイヤ・・・」
秋水は落ち込み出す。
「人の話を聞け。あんたにとって、聞いとかないと後悔する内容だよ。」
「・・・なんだよ・・・」
「あんた、伊吹と結婚するんでしょ?」
「!!なんでそれ、お前が知ってんだよ?」
「・・・・・・・・・あんた、バカ?」
小牧は呆れた顔で言う。
「どういう意味だよ?」 「あれ?小牧さん?」
頭に?を浮かべながら聞く秋水の声と、丁度電話を終えてその場に戻ってきた伊吹の声が重なる。
「伊吹さん、小牧を知ってるの?」
伊吹の言葉に驚いた秋水が伊吹に聞く。
「会ったのは今日が始めてだけど、小牧さんは有名だから知ってるよ。」
伊吹が言う。
「有名!?コイツが!?」
秋水が小牧を指差しながら叫ぶ。
「お前むかつく。死んでこい。」
小牧はそう言うと、秋水を蹴り飛ばす。
「小牧さん、依頼を受けてくれたそうで、ありがとうございます!」
伊吹はペコッとお辞儀をしながら言う。
「『白鳳焔』としては、シエル様とユール様のガードの娘を応援しなきゃでしょ?」
笑いながら小牧は言う。
「『白鳳焔』!?コイツが!?ウソでしょ!?」
秋水はまた叫ぶ。
「知らなかったの?」 「気付いてなかったのかよ。」
伊吹と小牧の声が重なる。
「・・・取り敢えず、家に来てよ。」
秋水を睨んでから、伊吹に向かって小牧は言う。
3人は『白鳳焔』の自宅へと向かう。