依頼者出現
ここには5つの世界があり、その世界には様々な種族が住んでいる。
天界・パラディには、背に白き翼を持つ天使族。魔界・アンフェールには、背に黒き翼を持つ悪魔族。精霊界・エトワルには、自然に宿る精霊。月世界・リュンヌには、背にそれぞれの『自然の力』と同じ色の翼があり、本来なら生まれてくるはずのない天使族と悪魔族の混血、天魔族が住んでいるのである。
彼らは、人とは違う悠久の時を生きているのである。
そして、人間界・テールには『白鳳焔』が守護する王都・ブランシュ、『青虎狛』が守護する東国・ティグル、『赤飛龍』が守護する西国・ルージュの3国からなる世界で、人間と動物の混血である獣人族と人間が住んでいる。
物語の舞台は王都・ブランシュ。そこには、名門・私立白鳳学院がある。
そこは資産家の子供達が集う学校で、その中でも家柄や能力など全てにおいてトップクラスの子が生徒会として学校を動かしていた。全てにおいて敵うはずのない一般生徒にとって、生徒会は「絶対」の存在なのである。
それでも、生徒会より上の地位に位置する執行部が存在した。
なぜなら、執行部は王都・ブランシュを守護する『白鳳焔』だからだ。
彼らは白鳳学院に在籍しながら、依頼を受ければ『白鳳焔』として王都・ブランシュを守護しているのだ。
これは、そんな執行部、『白鳳焔』の物語。
「話がある。『白鳳焔』の6人は生徒会室に来い。」
午後の授業の終了時刻を告げるチャイムが鳴り始めたと同時に、校内放送が流れる。
声の主は生徒会長の因幡八代である。
「朝希、小牧、会長様に呼ばれてるから行っていいぞ。」
教卓にいた教師が言う。
「じゃあ、先に失礼します。」
教師の言葉を受け、金髪の少年はカバンを持って立ち上がりながら言う。
「なんだろ・・・?」
などと言いながら、薄紫色の髪の少女がカバンを持ちながら立ち上がる。
少年が朝希で、少女が小牧なのだろう。
他の生徒が紺の学ランとセーラー服に対し、2人は白を基調とした制服を着ている。
と言うより、2人だけが違う制服を着ている。
2人は「頑張れ!」と言う言葉を受けながら、教室を後にして生徒会室に向かう。
コンコン
「『白鳳焔』の朝希と小牧、到着しました。」
ドアをノックし、朝希が告げる。
「入れ。」
中から偉そうな、八代の声が響く。
八代の言葉を受け、ムダに豪華な造りの生徒会室に入る。
中にはソファーに座った黒髪にメガネ、頭に狼の耳がある獣人族・狼の青年がいて、向かい合うように朝希達と同じ白を基調とした制服を着ている4人の男女がいた。
「2人とも遅い。俺様より後に来るとはどういう事なんだよ。」
白い制服を着た黒髪に毛先をハネさせ、たくさんのシルバーアクセサリーを身に付けた男が言う。
「仕方ないでしょ。草芽のクラスの方が生徒会室に近いんだから。」
小牧が言う。毛先がハネた黒髪の男は草芽と言うらしい。
「それより、なんでチャイムと同時に放送流せたの?」
水色のウェーブ髪の少女が聞く。
「そんなん、授業サボったからに決まってるだろ。」
八代は、キッパリと言い切る。
「それで『白鳳焔』を呼んだ理由は?」
結ぼうと思えば結べる黒髪の男が聞く。
「俺から、『白鳳焔』に依頼だ。妹・伊吹の婚約を祝福してほしい。」
八代が答える。
「なんで?」
黒髪にショートカットの少女が聞く。
「相手が神崎秋水だからだ。」
八代は困った様に言う。
「相手、秋水なの?伊吹より年も家柄も能力も下じゃん。」
朝希は驚いて言う。
「相手が秋水じゃあ、伊吹のファンクラブは黙ってないよね。」
小牧は溜息をこぼしながら言う。
「だから『白鳳焔』に依頼するんだよ。」
八代が呆れた様に言う。
「めんどくさ。・・・どうするんだ?」
草芽が朝希を見て言う。
「・・・受けよう。対馬朝希、了解した。」
「伊吹ちゃんと秋水の為だしね。和泉小牧、了解した。」
「伊吹ちゃんと秋水ちゃんじゃあ、邪魔する人はいっぱいだろうしねぇ。駿河蓮華も了解!」
水色のウェーブ髪の少女、フルネーム・駿河蓮華が言う。
「大変そうだ・・・。周防夕夜、了解だ。」
結ぼうと思えば結べる黒髪の男、フルネーム・周防夕夜が言う。
「草芽、観念しなさい。駿河柚葉、了解する。」
黒髪にショートカットの少女、フルネーム・駿河柚葉が言う。
「柚姉ェまでかよ。ったく・・・。駿河草芽も了解してやる。」
フルネーム・駿河草芽がめんどくさそうに言う。
「じゃあ、早速仕事に取り掛かってくれ。」
全員の了解を受けた八代が言う。
八代の言葉を受け、6人は生徒会室から出て行った。