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ぼく  作者: クルトン
5/12

とにかくぼくを人質にとっているらしい

ぼくは人質らしい


自称「誘拐犯」はぼくを人質にして何をさせたいのかはわからないが、とにかくぼくを人質にとっているらしい


ぼくはと言えば、気づいたらこの状態だったというか、「人質」状態の記憶しかないので人質の自覚はない


「誘拐犯」はぼくに正体がばれないようにするためか、いつも分厚いマントと仮面を被っていて、口数も少ない


だから、ぼくはいつも一緒にいる「誘拐犯」の顔も知らなければ性別も知らず、素性も一切知らない


ある時「誘拐犯」が仕事をしてきた


良く言えば旅人、悪く言えば只の無職な「誘拐犯」は、当然マントと仮面をかぶったままなので、まっとうとかいうというものとは縁遠い類の仕事しかできないらしい


確かに、マントを着て仮面をかぶってほぼ無言の人間が売り子とか肉体労働とか、あんまり考えられない


それを宿の主人に言ったら、それはあんまり、じゃなくてありえないというんだと教えてもらった


ぼくはまた一つ常識を学んだ、と思ったのだが、それを「誘拐犯」に言ったら初期の段階で気づくべきことだったらしく呆れた気配がした


挙句にため息をついてしっしっと手で払ってくるので、ぼくは首をかしげながらそのまま寝た


今日一日の出来事を尋ねられたから言ったのに。


とにかくもその時の「誘拐犯」の仕事というのが暗殺とか強盗とかそっち系のものだったらしく、いつも明け方に帰ってきては例の生臭いにおいをさせていた


例の、というのは時々ぼくがバケツ一杯の赤い液体をぶっかけられる時のにおいだ


正確にいうと、赤い液体のにおいだが


ぼくはそのにおいがあまり好きではなくて、「誘拐犯」はそれに気づいてわざとにおいの強い、マントの濡れた部分を近づけてきていたようなので、セクハラをした


例のだ


例の、とは仮面に口付けるという、ある宿の女将に教えてもらったセクハラだ


「誘拐犯」はきっかり6秒停止した後、蛙が潰れたような断末魔の声を上げて逃亡した


「誘拐犯」はそれ以来、仕事帰りには絶対にぼくに近寄らないようになった


ぼくは結構頻繁に「誘拐犯」に馬鹿といわれるが、「誘拐犯」も結構それなんじゃないかと思う。



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