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悪徳の罪人  作者: 森 神奈
悪徳の罪人

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3/6

第3話「境界線」


最初は、明確だった。


裏金。


改ざん。


隠蔽。


誰が見ても「黒」だった。


だが三件目から、変わり始める。




新たな標的は、地方の実業家。


違法ではない。


だが倫理的に問題がある投資構造。


合法ギリギリの租税回避。


労働環境の黙認。


証拠はある。


だが、罪か?


モニターの前で、神埼湊は動かない。


「……黒だ」


自分に言い聞かせるように呟く。


公開。


拡散。


炎上。


株価急落。


企業は謝罪。


法的処分は、なし。




SNSは割れ始める。


《やりすぎじゃないか?》


《合法なら問題ないだろ》


《ジャッジメントも暴走してる》


だが同時に、


《甘い顔するな》


《グレーを許すな》


《腐敗は小さいうちに潰せ》


支持も消えない。


むしろ、過激な声が増えていく。


「次は誰だ?」


「全部暴け」


喝采は、要求へと変わっていた。




夜。


友人が部屋に立つ。


「最近の標的、明確な違法じゃない」


湊は視線を外す。


「違法じゃなくても、腐ってる」


「腐ってるって、誰が決める?」


沈黙。


友人は、まっすぐに言う。


「お前は、誰に許されたんだ?」


その言葉は、刃のように静かだった。


湊は答えない。


ただ、モニターを見つめる。


「……誰にも」


小さく、心の中でだけ返す。


だが口には出さない。




警察庁内。


特別対策室。


複数のモニターに並ぶ通信ログ。


「IPの分散は高度だが、癖がある」


「同一ルーティンの暗号化パターン……三件目から変わっている」


捜査は、静かに進んでいた。


顔はまだ不明。


だが、範囲は絞られつつある。




次の標的。


過去に軽度の情報操作を行った地方議員。


違法性は薄い。


だが、世論誘導の履歴は残っている。


湊の指が、送信ボタンの上で止まる。


一瞬だけ、迷い。


だがその背後に浮かぶのは、母の横顔。


病室の匂い。


「小さな嘘が、誰かを殺す」


送信。


世界に流れる。




翌日。


抗議デモ。


「私刑反対」


「言論の自由を守れ」


同時に、


「徹底的にやれ」


「ジャッジメントを支持する」


社会は、二つに裂ける。


境界線は曖昧になり、


誰も自分がどちら側か分からなくなる。




夜。


湊は一人、部屋に立つ。


モニターを消す。


暗闇。


静寂。


ふと、鏡に映る自分を見る。


仮面をつけていない顔。


「俺は……」


その先は出てこない。


代わりに、いつもの言葉が浮かぶ。


「必要な犠牲だ」


小さく、呟く。


その声は、前よりも少しだけ固い。


境界線は、もう見えない。


だが彼は、前に進む


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