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悪徳の罪人  作者: 森 神奈
悪徳の罪人Light

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13/26

第1話「残響」

テレビは、まだ終わらない。


《ジャッジメント死亡》


そのテロップが、何度も繰り返される。


特集。


討論。


再現映像。


街頭インタビュー。


「英雄だったと思います」


「行き過ぎてた。あれは犯罪者だ」


「でも、あの人が暴いた不正は本物だった」


世論は、まだ割れている。


結論は出ない。


彼が何者だったのか。


正義か、暴力か。


誰も統一できないまま。




事情聴取室。


白い壁。


机を挟んで座る刑事。


「発砲は正当防衛として処理される」


淡々と告げられる。


証拠は揃っている。


威嚇。


接近。


緊急性。


法的には、問題ない。


「……はい」


友人は短く答える。


感情は、外に出さない。


署名をする。


ペン先が、わずかに震える。




夜。


自室。


明かりはつけない。


机の上に、古びたファイル。


“社会改革計画書”


大学時代、二人で書いたもの。


制度の透明化。


監視機関の独立。


内部告発者の保護。


ページの端に、走り書き。


《変えられる》


若い字。


真っ直ぐで、迷いのない文字。


友人はページをめくる。


笑い声が、脳裏に響く。


「俺たちならやれる」


あの夜。


あの熱。


そして、あの選択。




窓の外で、救急車の音が遠く鳴る。


無意識に体が強張る。


銃声が蘇る。


引き金の感触。


倒れていく姿。


最後の言葉。


「生きてるのの何が悪いのさ」


目を閉じる。


深く息を吸う。


吐く。


静寂。




ニュースアプリの通知が光る。


《ジャッジメントの影響で法改正の議論》


皮肉のようだ。


壊した先で、制度が動く。


それは、望んでいた未来か。


それとも、犠牲の上の副産物か。


友人は、ファイルを閉じる。


指でなぞる、タイトル。


「俺は……正しかったのか?」


誰に問うでもなく。


答えは返らない。


正当防衛。


法はそう言う。


だが、正しさはそれだけでは測れない。




部屋の隅。


計画書の隣に、新しいノートが置かれている。


まだ白紙。


開くかどうか、迷う。


続けるのか。


別の道を選ぶのか。


沈黙の中で、時計の秒針だけが進む。


失ったものは戻らない。


だが、残響は消えない。


彼の問いも。


自分の迷いも。


夜は静かに更けていく。

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