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決意の証明

「うおおぉぉぉん!!」

宣誓式の演説が終わった直後、私は頭から布団をかぶりながら情けなくわめいていた。


「魔王様、しっかりしてください。あなたはやり遂げたのですから」

リッチーが困ったような安心するような声で優しく諭す。

「うぅ、でも~」

「良いではないか!ここまでの支持を得るのはなかなかできることではないぞ!」

ズメイが窓を少しだけ開ける。

外からは演説を聞いていた魔族がまだ騒いでいる声がした。

「魔王様ー!」

「もう一度お顔をー!」


「たしかにすごいですね、まだ止まりませんよ…」

ミドリが外をチラッと見る。

「これも君の書いた台本のおかげということかな?アーサー」

この場にいる全員の視線がアーサーへと向かった。

「ミドリ様…。いえ!魔王様が完璧以上に成し遂げてくれたおかげです!」

そう言うアーサーは自慢げだ。


そう、この宣誓式はアーサーの提案によるもの。

さらにコロシアムの設立や意見箱の設置、話し方や立ち振る舞い、話すタイミングから表情まで全てアーサーが考え、1週間私に叩き込んだ。


「しかし、アーサー殿はなぜこのようなことに詳しいので?」

「はい!私、リッチー様…いえ、四天王の皆様のリーダーとしての立ち振る舞いをよく見ていましたので」

「ほう…」

「それに上に立って指導するような物語が好きでよく読んでいたのです。うまくいってよかったです!」

え!?物語で学んだこと実践されてたの!?私!


少しだけ顔を出してみんなを見た。

「みんな仲良くしてほしいって思っただけでこんなことになるとは思ってなかったんだよ」


「安心してください。魔王様、とても素敵な演説でしたよ」

優しくなでるようにハルが背中をなでる。

「ハルさん…」

そして膝をつき、手の甲へ額を付けた。

「私も魔王様に少し疑念を覚えていた身。スピーチは素晴らしいものでした。一生ついていこうと思います」

「う、うわああぁぁぁぁ!!」

また布団を頭からかぶりガタガタと震えだした。

「とどめ刺したね、ハル」

「そ、そんなつもりでは!」


「…はぁ」

のそのそと布団から出てくる。

「ごめんねみんな、こんな情けない魔王で」

「情けなくなどないぞ!そんなことを言ったらハルはどうなる!」

しゅんとしているとズメイが慰めてくれる。

「どういう意味ですか!私はしっかりやってますよ!」

「聞いたぞ!ハーピィ部隊を抑えられなくなっているとな!」

「な!?抑えてますよ!ただちょっと攻撃的になってきているだけで…。ケンカなら買いますよ!」

「まぁまぁそれくらいに、ハーピィ部隊も真面目なハルにストレスを抱えているだけだろう」

「なんだって!?」

「落ち着け、魔王様の前だぞ。またこの部屋を私の庭のようにするわけにはいかぬ」

「やめてください~」

ケンカをしそうな4人に対しあわあわとしているアーサー。


「ぷっ…あははははは!!」

「魔王様?」

みんな怪訝そうにこちらを見ている。

「いやごめん、楽しいなぁと思って」


大きく息を吸い込み深呼吸をする。

「リッチーさん」

「ミドリさん」

「ハルさん」

「ズメイさん」

「そしてアーサーちゃん」

一人ずつ顔を見て前を向く。

「ありがとう、これからもよろしくね」


リッチーは胸に手を当てた「ええ」

ミドリは微笑んでいる「こちらこそ」

ハルは胸を張っている「もちろんです!」

ズメイは腕を組む「うむ!」

アーサーは元気に答えた「はい!」


「じゃあ、そろそろ行こうか」


「しかし、アーサーは参謀とかに向いてるんじゃないか?」

「えぇ!?私が!?」

「私も思っていました」

「いいではないか!ミドリが言うなら間違いないからな!」

そんなことを言いながらみんな部屋から出ていく。


最後に私とリッチーが出る直前、

「あ、そうだリッチーさん。いきなりなんだけど、一つ簡単な魔法を教えてくれない?」

「魔法…今ですか?」

リッチーは怪訝そうにしている。

「うん、ちょっとしたものが壊れる程度のものがうれしいんだけど」

少し考えた後、

「そうですね、ではファイアボールなどはいかがでしょう?火の玉を思い浮かべて魔力を籠めればすぐにでも使えると思います」

「なるほど、やってみる。『ファイアボール』」

小さい火の玉が手のひらから出た。

「お見事です」

「ありがと!ごめんねいきなり」

「いえいえ、お役に立てたのであればなによりです」

丁寧に頭を下げる。

「それとちょっと用事思い出したから先に行っててくれない?」

「…かしこまりました」

細かいことは何も聞かず部屋から出て行った。



無言でバルコニーへと進み再度姿を現す。

「魔王様だ!」

「どうされたんだろう?」

外にいる魔族達が困惑しているようだ。


腕につけていた覇王の腕輪をゆっくりと外した。

「これはもういらないよね」

そして思いっきり上へと投げた。

ほんの少し笑い、

「ファイアボール!」

火の玉が一直線に腕輪へと向かっていく。


ドッパアァァン!!


そんな音がして、花火のように腕輪が散っていった。


「「「わああぁぁぁぁ!!」」」


そうして部屋へと入っていき、みんなを追いかける。


「さ、忙しくなるそー!」


そう、これは私がこの世界を本気で生きようと決意するまでの話。

その決意を胸に、私は魔王として頑張っていこうと思った。


おしまい

ここまで読んでいただきありがとうございました。


よければ感想、リアクションなどしていただければ嬉しいです。


また、本物語はエピソード0となりますので本当のスタートはここからです。

本編では魔王エルクルとその仲間たちが脳筋勇者、暴走したケンタウロスなどが襲い掛かり、全力で足止めするといった内容となります。

そして番外編1話冒頭でもあった謎のシステムは一体何なのか。


ここまで読んでいただいた方はさらに楽しんでもらえると思います。

ぜひ続きを読んでいただけると嬉しいです。

よろしくお願いします。


本編「魔王様は足止めたい」

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― 新着の感想 ―
Xの方から伺わせていただきました! 小気味良くサクサクギャグを畳み掛けて進むノリがネット小説に合った読みやすさを作っていると思います。周りのキャラクターが主人公に対し優しく、都合良く物語が進んでゆく…
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