宣誓式
魔王城の裏手にある大きな広場、そこには様々な種の魔族が集まっていた。
「魔王様、急に魔族を招集してどうされたのだろう」
「宣誓式とは聞いたがわからん。見せしめでも行うのだろうか…」
ざわざわと不安の声があちこちで広がっている。
「正直、絶大な力を持っているとはいえ急に現れた魔族なんて信用できないんだよな」
「おいバカ!そういうことをでかい声で言うな!」
批判のような声もちらほらとされているようだ。
指定の時間となり、魔王城のバルコニーから魔王と四天王が現れる。
「魔王様だ!」
「あれが…」
「四天王たちもいるぞ!」
ざわざわと魔族たちが指をさしたり話したりしているようだが魔王は目を閉じしゃべらない。
その姿は何かを待っているようだった。
やがて静寂となっていき、ゆっくりと目を開ける。
そしてしゃべりだす。
「皆、私のために集まってくれてありがとう」
「私は第何代かもわからない、復活した魔王です」
魔法は使っていないのになぜか目を離せないような魔力を感じた。
「これからの話をする前に、私の話をしましょう」
「私は最初、魔族に対して恐怖を抱いていました。復活してから訳も分からず理不尽だと感じ、とにかく感情を当たり散らしていました。魔族の皆さんの方は急に力で押さえつけられ、理不尽だと感じていたことでしょう」
「そして先日、ゴブリンとハーピィの争いが起こった時に対してとにかく納めなければと思い、自分の意志で苦しめさせ、無理やり押さえつけて決着をつけさせました」
「そう、私は今つけているアイテム、覇王の腕輪を自己防衛や言うことを聞かせる支配のために使っていたのです」
一呼吸、息を吐く。
「でも、間違いだった。この数日、みんなと触れて四天王の思慮深さを知った。ゴブリンさんやハーピィさん達の自由さを知った。そしてお互いを知ることの大切さを知った」
「こんな私に優しくしてくれる人や慕ってくれる人がたくさんいた。だから私は、まず感謝の言葉を皆に伝えたい」
「ありがとう」
四天王たちに一人ずつ頭を下げ、最後に広場へゆっくりと頭を下げる。
「ここからは、未来の話」
「言葉ではなくちゃんと行動で示したいと思う」
「まず皆、小競り合いが多く、体を動かして発散をさせたい魔族が多いように思う」
「だからコロシアムの設立を行う。そして優勝者は一つなんでも願いを叶えてあげる」
「ルールはこれから考えるけど腕に自信のあるものはぜひ参加してみてほしい」
広場の魔族がざわざわとしだす。
「コロシアム?」「願いを叶えるって言ったぞ」
「それと意見箱の設置をする。これは私に直接意見を送り、やってほしい政策を書くところ」
「考えている政策としては手始めに食料供給の問題を解決するため、畑の整備や迷いの森の保護を行う予定」
「それと道路の設置。主には物資の支給ができるような歩きやすい道路を作る」
「できないことも多いけれど、多くの魔族が納得できるような道を探っていくつもり」
さらに広場がざわめき出す。
「ほぅ、意見箱か」「食料が増えるのはありがたいな」
「今考えているのはこの2つ、これ以上は意見箱に投書して」
一息つき、前を見て静かになるのをじっと待つ。
「私は争いはあまり好きじゃない。でも、あなたたちのためにできることは精一杯尽くしたい」
「なぜなら私は魔王だから!魔王として魔族のみんなが平和で楽しい未来を作っていきたいから!」
「これからは種族の壁を越えてとても忙しくなると思う。皆も協力してほしい、私一人ではできないから!」
「そして不満や言いたいことがあれば言ってほしい!必ず分かり合えるから!」
「だから、私は宣言する!」
「皆が楽しく争い、楽しく過ごせる未来を創るために!」
「初代、平和の魔王、『エルクル』という名で!ここにいることを!」
…
静寂。
誰もが息を忘れ、魔王を見ていた。
そして、次の瞬間、
「「「わあああぁぁぁぁぁぁ!!!」」」
広場中の魔族が沸き、叫び、羽ばたいた。
そして魔王は最後に、にっこりと笑い、魔王城へと帰っていった。
この宣誓式は魔境中の魔族に知れ渡る。
信頼でき、魔族たちのことを一番に考える王として。




