認め合う
「ごめんなさいからかな…いや、まず怖がってるだろうし話から…」
そうぶつぶつとつぶやきながらリッチーがアーサーを連れてくるのを待っていた。
「あの、魔王様?」
「ひゃい!」
リッチーが声をかけてきた。
「も、もう連れてきたんデスカ?」
「いえ、部下のスケルトンにお願いをしてきました。すぐに来るでしょう」
「そ、そですか…」
さっきの自身にあふれた姿はどこへやら、全身が緊張にあふれていた。
「魔王様、落ち着いてください。あなたは正しいことをして、たまたまアーサー殿が鉢合わせただけです」
「うー…」
「先ほどのゴブリン殿とハーピィ殿はむしろ称えるような態度だったのを思い出してください」
「そうだけど~、でも怖がらせちゃったことには変わりないし~」
うじうじとしているとスケルトンがこちらに走ってきた。
「リッチー様!アーサー様を会議室へお連れしました」
来た!心臓が飛び跳ねる。
「ご苦労、持ち場へ戻るようお願いします」
「はっ!」
「さ、魔王様」
リッチーが部屋の前まで案内する。
覚悟を決めなければ。
コンコン、とドアをノックする。
「は、はい、どうぞ」
ドアを開けると緊張で固まったアーサーが座っていた。
「失礼します…」
ドアを閉め、対面の椅子に座る。
「…」
「…」
静寂
数秒が永遠のように感じた。
このままじゃダメだ、ちゃんと喋って謝らなきゃ!
そうして覚悟を決めたとき、
「あの!」
沈黙を破ったのはアーサーだった。
「昨日は…すみません…でした」
「えっ?」
なんで謝るのだろう。
「私、何も知らなくて、ゴブリン様達とハーピィ様達を止めようとしていたんですよね」
「そんな…」
「スケルトン様に聞きました。共に手が付けられないような状況だったと」
リッチーさんが伝えるよう言ったのだろう、そんなことまで…。
「それに、ゴブリン様達とハーピィ様達が魔王様に謝ろうと相談しているのも噂で」
「あ…」
「だから、私…ごめんなさ…」
「待って!先に言わせて!」
言わせてはいけない。
先手は取られたが私が言わなきゃ。
「私が悪かったの、無理やり押さえつけるようなアイテムを便利だなんて思ってしまって、安易に使ってしまった」
「ゴブリンさんやハーピィさんも謝りに来た。それで私も謝った。まぁ正しく伝わったかはわからないけど…」
「だから、もうこの腕輪は使わないようにするつもり」
「それで私、みんなに偏見があって、でもそれが違って、四天王のみんなもいい人で、えーっと」
やばい、こんがらがってきた。
「とにかく私が言いたいのは!」
息を吸い込み、アーサーの目を見る。
「ごめんなさい」
頭を下げ、反応を待つ。
「ふふっ」
あれ?笑い声?私間違ったかな?
「顔をあげてください、魔王様」
「は、はい」
笑顔だとこんな顔するんだ…じゃなくて!
「私、魔王様ってもっと怖い方かと思っていました。でも、こんなかわいらしい性格だったんですね」
「えっ」
顔が赤くなる。
「私も一緒です、魔王様に偏見がありました。だから謝らなくちゃいけません」
「えっ?えっ?」
「だから、ごめんなさい」
アーサーが頭を下げる。
「ほら、魔王様も」
「は、はい。ごめんなさい」
こうしてお互いが謝り、認め合うことで私とアーサーちゃんのすれ違いは終幕した。
「うーん、でもまた同じことがあったらどうしよう。私、穏便に止められるかな」
そう悩んでいると唐突にアーサーが手をあげた。
「はい!私、いい考えがあります!」
「えっ?」
それがその子の本質と言わんばかりのとてもいい笑顔をしていた。




