パンケーキ
朝の光、寝息、そして小さな幸せ。
母親のいない家で、三人の娘と過ごす日々は、忙しくも愛にあふれている。
朝6時。
ベッドに横たわり、スゥスゥと寝息を立てている三人の娘たちを見ることから、俺の一日が始まる。
しっかり者の長女・アンナは、普段は「私はもう8歳なんだから!」とすました顔をしているが、寝顔はまだ年相応の子供だ。
次女・リタは時折眉をしかめている。嫌な夢でも見ているのだろうか。
三女・ルゥは口元が緩みきって、「そんなに食べられないよぉ」と嬉しそうな声をもらしていた。
可愛い娘たちを見ていると、自然と頑張ろうと思える。
そっと寝室を出て、キッチンへ向かう。
どんなに疲れていても、どんなに寝るのが遅くなっても、俺は毎朝この時間に起きる。こんなにも愛しい寝顔を見たあとで、二度寝なんてできない。
美味しい朝食を作ってやりたいからな。
母親がいない辛さを少しでも減らせるなら、俺は何だってするつもりだ。
さて、今朝は何を作ろうか。昨日はトーストだったしな…。
よし、今日はパンケーキにしよう。以前ベノン夫人に教わった桃のジャムがまだあるし、昨日買ってきたフルーツも載せよう。リタの好きなオレンジも入れれば、きっと悪夢も忘れられるだろう。
リボンで飾られた戸棚からミルクと卵を取り出し、ボールに入れて小麦粉と混ぜる。小麦粉が舞わないようにゆっくりと混ぜ、鉄板に垂らす。
表面にプツプツと泡が出てきたところでひっくり返すと、綺麗な焼き目がついていた。
思わず「ほぉ」と声が出てしまう。
部屋中に甘い匂いが広がる。
「パンケーキ……?」
まだ眠そうな声が廊下の方から聞こえ、小さな足音がトタトタと近づいてきた。リビングの扉がそっと開く。
「ルゥ、おはよう。まだ起きるには少し早いぞ」
「……いい匂いがしたから……」
三女のルゥが、ボサボサの髪を揺らしながらやってきた。
「ああ、立ちながら寝ちゃだめだ。転んだら危ない」
俺の心配をよそに、ルゥは曖昧に返事をして椅子によじ登る。
「ルゥ、もうすぐパンケーキが焼き上がる。お姉ちゃんたちを起こしてきてくれないか?」
「!わかった!すぐ行くね!」
そう言って、ルゥは姉たちの寝室へ走っていった。
さっきまで寝ぼけていたのが嘘みたいだ。
この子たちには母親がいない。それでも、ここまで元気に育ってくれた。
男手一つで、いや、お隣のばあちゃんも、工房のみんなも手伝ってくれたから、俺は娘たちと一緒にいられる。
ルゥに叩き起こされたアンナとリタが、ノソノソとリビングにやってくる音がした。
これからも、娘たちの成長をずっと見守っていきたい。
ああ、俺は本当に幸せだ。
「さあ、パパ特製のパンケーキだ!冷めないうちに食べよう」
この後、フルーツの争奪戦が始まったのは言うまでもない。
全然更新できなくてすみません┏○┓
新生活にやっと慣れてきたので、またこうして少しずつ書いていきます!
今回は、小さな家族のちょっと幸せな朝のひとときを描きました。
読んでくれて、本当にありがとうございます!
読んでくれたあなたの心にも、ほっこりが届いていたら嬉しいです(˶' ᵕ ' ˶)




