絵本の中のあなた
この物語は、まだ幼い少女が海の伝説に魅せられ、やがて現実の「人魚」と出会うまでの儚くも壮大な恋の物語です。
死にゆく運命に抗いながら、彼女が抱く切なくも美しい想いを、どうかそっと見守ってください。
初めての投稿で至らぬ点もあるかと思いますが、どうぞ最後までお付き合いいただけたら幸いです。
感想や応援の言葉をいただければ、とても励みになります。
「ねぇねぇ!見てお父さん! この絵本ね、人魚が出てくるんだよ! 綺麗だねぇ! 足がお魚なんだよ! すごいよね! ほら、キラキラしてるよ!」
幼いソルティセアの声が、静かな工房に響く。
柔らかな朝の光が差し込む古びた窓辺に、埃がゆらりと舞っていた。
「へぇ、人魚か。……ソルは海が好きなんだな」
絵本を覗き込んだ父の声は、どこか懐かしむように優しく微笑んでいる。
「うん! 大好き! ねぇ、人魚は海に行けば会えるの? もし会えたら、お友達になれるかな?」
瞳をキラキラ輝かせながら尋ねる少女に、父は幼い頃の自分を思い出すように目を細めた。
「この辺りの海にいるかは分からないが……そうだな、ソルが願えばきっと、どこかで会えるよ。
もしお友達になったら父さんにも紹介してくれ」
そう冗談めかして言うと、父は手元の仕事に戻っていった。
「はーい!」
元気な返事と一緒に、さっき食べたいちごジャムの甘い匂いを残しながら、ソルはバタバタと駆けていく。
その後ろ姿に、春の風がそっと触れた。
――この時、少女はまだ知らなかった。
数年後、本当に人魚と出会い、そして、永遠に忘れられない記憶になることを。
そう。
これは、一人の少女が迎える恋の話。
命を削るような、儚くも壮大な物語。
ここまで読んでくださってありがとうございます!
初めての投稿で緊張していますが、楽しんでいただけたら嬉しいです。
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これから少しずつお話を続けていきたいと思っているので、よろしくお願いします!