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私の彼は、詩人です

彼は、詩人です。

……ロマンチストとかポエマー気質とかじゃなく、ほんとうに職業として。


出版社の賞を受賞し、本も出版済み。

日本のネット書店でも、ちゃんと買えます。ちょっと、びっくりですよね。


ただ、詩の世界はなかなか厳しくて。

彼は今、その道からは一歩引いています。


でも、私にとっては今でも彼は「プロ」。

言葉を選ぶ繊細さも、感情を描く美しさも、圧倒的に詩人なのです。


そんな彼が、ある日──

フランス語で綴られた詩を、私に贈ってくれました。


それは、それはもう……

ため息が出るほど優しくて、あたたかくて、少し切ないラブレターのようでした。


「こんな人と出会ってしまったんだな」と、

静かに心が震えたのを、今でも覚えています。


……で、それ、読めたのかって?


うん。読めたよ。(たぶん)


なぜなら私は、大学時代に少しだけフランス語をかじっていたから。

かじって……いたんですけど……ね?


結果としては、まったく歯が立ちませんでした。


彼の語彙レベル、もはや文学全集。

日本人向けの辞書に載ってないような単語が、わんさか登場してきます。


でも大丈夫。

彼が日本語訳をそっと添えてくれていたし、

分厚いフランス語辞典も、私の机の上でスタンバイしてくれていました。


彼の詩は、本当に美しいのです。

単なる「好き」とか「会いたい」じゃなくて、

言葉の奥に、物語がある。


読めたらきっと、もっと好きになる。

だから私、夢を持つことにしたんです。


いつか、彼の詩をフランス語のままで読めるようになりたい。


……そう彼に話したところ。


「しろさん!笑って逃げないでください!ちゃんとテキスト読んで!」


詩人、モードチェンジ。

まさかのスパルタ先生に変身。


そこから始まったのは、3時間ぶっ通しのフランス語レッスン。

休憩なし、逃げ場なし、甘やかしゼロ。


気がつけば私はノート片手に、

「愛とは、活用形である」みたいな境地に辿り着いていました。


……でも、そんな彼だから、好きなんです。

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