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彼の、やきもち。

「溺愛系ヒーロー」に欠かせないものといえば──

そう、嫉妬。


「君を誰にも渡したくない」

「他の男と話すなんて、考えただけで苦しい」


小説の中ではそんな台詞にときめき、胸をときめかせるけれど……

実際に起こると、それはそれで、大変なのです。


はい。

彼も、まさにそんな「独占欲の強い恋人」でした。


そしてその感情が向けられた相手が──

ピエールという、ひとりのフランス人の男性でした。


……え? 誰? と思われた方のために、きちんとご紹介しますね。


ピエールは、彼の友人。


彼よりも一足早く日本に来ており、ふたりは旧知の仲でした。


「すごく良いやつだよ」と彼が紹介してくれたので、私は軽い気持ちでSNSを通じて「こんにちは」と挨拶。


まさかその一言から会うことになるとは思わず、

内心では「知らない人だし、短時間だけ会って、たぶんそれっきりかな……」と思っていたのですが。


実際に会ってみたピエールは、とても親しみやすく、礼儀正しい人でした。


そして驚くほど日本語が上手で、自然と会話が弾んで──

気づけば、定期的に会うように。


カフェでお茶をしたり、公園を散歩したり。

そんな友人関係が、しばらく続きました。


でも、彼はというと……

日に日に、そわそわした様子に。


「最近、ピエールに会いましたか?」

「どこで、何をしましたか?」

「何回くらい会ってるんですか?」


尋ねられるたびに、私は胸の奥が少しずつざわつきました。


その不安の正体に気づいたのは──

3人で会った日。


彼がふと、私の目を見て、言ったのです。


「しろさんは、ピエールといるとき、すごく楽しそう。……うれしい。でも、悲しいんです」


その瞳には、うっすらと涙が浮かんでいて。


私は思わず、こらえていた気持ちがあふれてしまいました。


「私が好きなのは、あなたなんだよ」


大人げないと思いつつ、泣いてしまいました。


嫉妬という気持ちは、愛情の裏返しである一方で、

すれ違いや誤解を生むこともある。


そう感じた出来事でした。


……ちなみにその後、ピエールにも素敵な日本人の彼女ができて、

彼はようやく少しだけ、安心したようです。


けれど、心配の種はまだ尽きません。


「美容師さんは女性にしてくださいね。男性がしろさんの髪を触るのは、なんだか嫌です」


……彼のやきもちは、今日も健在です。


でもそのたびに、私は思うのです。


こんなふうに、まっすぐに私を想ってくれる人と出会えたことを、大切にしたいと。


少しずつ、お互いを知りながら。

まだまだ続く、ふたりの恋のかたちです。

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